見出し画像

ライラック


30代 実家暮らし 独身 無職

誰がどう聞いても、「取扱注意」の人でしかない

そんな「取扱注意」の私の日常は、遅めの起床から始まる

午前10時。私が起きる時間である

毎朝、朝食が律儀に用意されている

なんと贅沢な暮らしだろう

テレビから流れているコメンテーター言葉を心の中で小馬鹿にする

そして、世間の流れが映ると理不尽に傷つく

どこで間違えたのか?

生まれた時、幼少期、 学生時代、 会社員時代。

...…もう何処だっていいか

あー 今日も暑いな~


ピンポーン


大きめなインターフォンが現実に引き戻す

古くからの友人の来訪だった

久しぶりに見た顔に懐かしさを感じながら部屋に通す

「よ!元気?」
「実は、、私、、、結婚することになりましたー!!」
「招待状を送るけど、いいよね?」


あー また置いて行かれた

そう思うこと自体甚だしいのに

少し惨めな気分になってしまうのは許して欲しい

だって、小さい頃に書いた夢が未だに叶ってないの私くらいだし

というか、家族以外の人と共存できるのが羨ましい

.…..いつか親になる可能性だってまだあるだろうし。

とはいえ、彼女の結婚は大変喜ばしいことである

彼女の恋愛遍歴を間近で見守っていたからこそ

やっといい人に巡り合えたのだと思った


『結婚ねー おめでたいね』

「元カレにも招待状送りつけてやろうと思ってるんだけど、どう思う?」

『それはやめときなよ』

「和装もいいけど、やっぱウエディングドレスは着たいよね」
「まぁ、ダイエットしないと話になんないんだけどさ」

『どっちも似合うと思うよ』

「.…....」

『どうしたの?』

「.....…ねぇ、どこに居るの?」

『..…なに?』

「あたしが結婚するっていうのに、あんたどこに居んの?」

『どこって…そんなの....』

「一番におめでとうって言って欲しいのに…」

『.....』

「いつまで笑ってんのよ」
「あんただけ歳取んないで、シミもシワも増えないなんて」
「.…不公平じゃん。そんなの…」

『...…ごめんね』
『わたしは..…』
『      に..居るよ…』


私の写真の前で泣く彼女の涙は羨ましいくらい綺麗だった



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?