記号の一般性と反復可能性

記述は世界の絵である、と言われることがある。これは記号と事象との対応について語ろうとする暗喩であるが、私達はこの比喩に、ある種の正確さと共に、幾分かの居心地の悪さも感じる。ここでは、この表現の正確さは対象一般が存在する時の安定性と記号が存在する時の安定性との符合にその根源を持つと考え、その事情について分析を与える。

この比喩の不都合さの根源としては、様々な点を挙げることができると思われるが、恐らくその大きなものとして、一般性および反復可能性という記号の側の性格があるだろう。記号のこの二つの性質は、個別性・唯一性という対象のリアリティーと激しく対立するのだが、しかし一方でそれは、記述や思考、更にはコミュニケーションの可能性の前提となるものでもある。こうした事情について考えることによって、私達の記述や思考が如何にして世界を捉え得て、また如何にしてそれを変容させるのか、大まかな分析を与えたい。

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