葡萄の木のかたち
9才の夏に、父が車で海岸へ連れていってくれた
工場の煙突が空に向かって立っていた
どこに行くの? と尋ねると、父は、「俺達の飯の種」と答えた
カーラジオからバンドの音が流れ、僕は歌った
全てのものの輪郭は、太陽であらわだった
僕の体は、太陽で熱くなった
僕は水を飲みたくなった
沿道の家で、水を貰った
僕達の車の輪郭が、はっきりとしていた
ひいきの球団が負けて、父は顔をしかめた
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