誂える

まずは知識から

着物の基本は「自分サイズに仕立てる」。きっちりと着たいのだったら仕立ててもらったほうが良いに決まっているのだった。
とはいえ、スーツで言うところのフルオーダーなわけで「でもお高いんでしょう?」と思われるかたも多いと思う。

正直に言うと、決して安くはない。
反物が一反、ピンキリだけど、木綿は比較的安価のものもある。絹はどうしても高額になりがち。乱暴に言うと木綿<麻<正絹という感じ。ポリエステルもあるけど、東レのシルックを選んじゃうとそこそこするんじゃなかったかな。それ以外のはよくわからん。

これに裏地の値段と、水通し代金、「お仕立て代」縫製料金がかかる。
裏地は袷ならば全体に、単衣なら腰の辺りに居敷当てとして、羽織なら羽裏がつくことがある。これも素材でピンキリっぽいんだけど、よくわからなくて勧められるがままっていうことがあると思う。水通しは反物をあらかじめ水に通してそれ以上縮むことをふせぐためにやる。……という認識であってるよな。間違ってないよね?

で、お仕立て代。1万円くらいから、3万弱くらいまでは見たことがある。手縫いのほうが高い。ハイテクって書いてあるのはミシン縫いのことらしい。
買う側としては安いほうがいいと思うのかもしれないけど、でも縫うほうはそんな安いとやってらんない、みたいなことがあるだろう。3枚ほど作ってもらったけれど、3万まではしないけれど、でもそれでも本当は安いんだろうなと思ったりする。

最初に襦袢を作ってもらった

もともとは古着を買うところから始まったのは今まで書いた通り。古着は誰かのサイズに合わせてあるので、身丈に合わせると裄丈や身幅が合わないということがほとんどで、だいたいどこかを妥協して着ることになる。女性はおはしょりがあるので多少の補正はできるそうだが、男物はそういうわけにもいかないので、うまい着地点を探しつつ古着を探すことになる。
170cmくらいの人だったらわりと弾数が多いんじゃないか。ハードオフみたいなところでも、古着専門店でも170cmの人むけのサイズはよく見かける。自分はそれよりもちょっとだけ背が高いので、なかなか見つからない。見かけたらとりあえず買うくらいの勢いでないといけないのかもしれない。

もっと厄介なのが襦袢。着物よりも少し短めのものを選ぶのだそうだが、持っている古着がどれもサイズがバラバラなのと、古着であるのは本当にサイズが小さい。となると、ちょうどいいのが欲しくなる。

何度かお邪魔しているお店でそんな話をすると、まずは襦袢を仕立てるのがよいのではないかというお話に。よく着る着物に合わせて作ると、あとで着物を仕立てたときにちょうどよいサイズで仕立てられて、なおかつそれからはみ出ることがないという提案だった。
なるほど。一利ある。
ということで、夏前に、ちょっと早い自分宛の誕生日プレゼントということで襦袢を作ってもらうことにした。素材は麻。真冬以外はだいたいこれで通せるというのと、居住地で着るぶんにはじつは正絹の襦袢は暑いのではないかという話でそうなった。

色はセールで生成りのがあったので、それにした。若干失敗したかなと思わなくもないが、上になにを合わせてもちゃんとして見えるので(透けても失敗しないし)、選択としては間違っていないと思う。

久留米絣から、麻の着物へ

その次は久留米絣。また誕生日プレゼントとして。ずっとお店に反物を飾ってあって、文人絣だしなんかみんな「添嶋さんには文人絣」みたいなことをいうし(笑)、まあ、ずっと目が合っていたような気分ではあったのだ。これはできあがってからしばらくはもったいなくて着られなかったのだけど、一度袖を通したら生地の柔らかさで好きになった。

三枚目は麻。リネンとヘンプの混紡。通気性が良すぎるので真夏の着物になった。自分としては初めての大柄。これに決めるときに、本当はオーソドックスなものか、遠州木綿の細かいストライプかと思っていたのだけれど、実物見たらこれがいいってなっちゃったんだよなあ。若干透けるので、下に麻の襦袢を合わせる。

麻とか木綿は古着にはなかなか出ない。普段着として作ることが多いので、古着に出回る前にくたくたになるまで着ちゃうからだという。でも意味がわかる気がする。これは着倒すな。
麻の着物ができあがって初めて、前年に作った久留米絣をよく着られるようになった。作ったのに着ないのはもったいないし、なんてったって自分サイズなんだから。

片貝木綿に手を出す

別の着物店の通販で、片貝木綿の反物を見つけた。グレンチェックのかっこいいやつ。アクセントにターコイズブルーの線が入っていて、これは絶対に好きなやつ。とはいっても、実物を見られないから決断できず、そうこうしていたら売れてしまっていた。がっかり。

しばらくの後、東京の百貨店の呉服売り場で同じものを見つけた。お、と思って実物を手に取ってみる。でもなんか違うなー。思っていたのよりもターコイズブルーの線が邪魔している感じがする。同じ作りで、ベージュの線が入っているものがあってそちらも見てみた。こっちのほうがしっくり来るな。
最初に見た通販サイトにはベージュの線のものはまだあった。お仕立て代その他を足しても予算ギリギリでいけそう。ということで、注文してしまった。やりとりはメールで。作ったもののサイズを測ってそれを元にして作ってもらうことに。とは言え、別件で近くまで行くことがあったので、立ちよって、いちおう、身体のサイズ測りつつ相談はしてきた。

待ち時間は2カ月

反物を選んで、サイズを測って、お仕立てを依頼してからできあがるまでにはだいたい二カ月くらい。単衣の季節に間に合わせるなら、今(2月)くらいに決めたい。夏向けにというのであれば、4月5月のうちに決めないと間に合わないと思う。自分は誕生日プレゼントとして自分に用意するので、6月終わりから7月くらいまでのあいだに決めちゃえば秋以降に着られるのでよかったりする。
柄の出方をある程度指定する以外はお任せなので、待っている間はわくわくしてしまう。今作ってもらっているものに似合う帯があるかなとか、半衿どうしようとか、こういうのを待つって言うのも悪くなんだと思う。

で、木綿とか麻をよく着るようになって、自分はこっちのほうが肌に合っているなーと思うようになった。正絹もいいんだけど、なんとなく肩に力が入るというか、周りも気を使うのがわかるというか、いちばん皆が気を使わないのは既製品のデニムのとか、めずらしく古着で買った木綿のとかなんだけど、仕立ててもらったのでも気を使わないでいてくれるのはいいことだと思った。
たぶん次も木綿のを仕立ててもらうんだろうなとは思う。いいのがあればだけど。



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