卒業

卒業式のあとのぐだぐだした感じが嫌いで
別に無理してここにいることもないから早く帰ろうと思った
写真を撮るからもうちょっといてと言われ
暇を持てあまして玄関の隅に座る

連絡先を教えあうのに忙しい
ボタンとかネクタイとかもらってどうするんだろうって思うけど
一生の思い出なんて 三年もすればどうでもよくなる

幸か不幸かボタンもネクタイもまして連絡先を聞かれることも
なにもないので気楽なものだと思う
二週間もすればこの町からいなくなる
半年もすればここにいたことも忘れてしまうだろう
何年後かの再会の約束は自分以外の誰かとなら有効だ

なにかが書かれるはずだった なにも書いていない卒業アルバムの
真っ白なページを見て 先生の困り果てた顔と自分には関係ないという誰か
なにもないほうが自分らしくていいだろうと思っていたので
感慨深くなることもなく すぐに捨てた

校歌を歌う誰か
先生を呼んで写真を撮る誰か
触られるのも嫌だと言ったのに 撮るよと言えばあっさりとカメラを渡す
集合写真
クラス全員の写った 最後の写真
誰が欠けているかもわからないまま

#詩 #words


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?