ぬいぐるみ語り(2)

自己主張が激しいイヌ。それはそれでかわいい。

この犬は長久手のIKEAで買ったものだ。
子どもの付き添いで行ったオープンキャンパスの後、おやつを食べがてら一回りするために寄った時に買ったのだった。

本当は有名なサメのぬいぐるみを買おうと思っていた。食卓にサメがいるってなんか楽しそうではないか。
しかし、サメは買わなかった。どれとも合意形成が取れなかったからである。

他の人はどうか知らないが、ぬいぐるみを買おうとして選んでいると、どれか一つから呼ばれることがある。ぬいぐるみから? そう、ぬいぐるみから。桃太郎ではないが、お供しますというか、連れて帰って! というか、ともかく呼ばれる。で、そのぬいぐるみと面と向かって話をして(脳内で)、合意形成がはかれれば「おむかえする」。ダメなら無理して買わない。無理しても結局愛着もなにもないからどうしようもなくなるのだ。今回で言えば、サメはどれもピンとくるものはなく、当然呼ばれもしなかったので縁がないのだなと諦めることにした。子どもとも「なんかピンとこないな」と言い、なんか食べて休憩にするか、という話になった。

そうしたところに出てきたのが犬。
ワゴンの中にこいつはいて、一匹だけやたら自己主張が激しかったのだった。
「買って買って買って買って。僕だよ僕だよ僕僕僕僕僕!!!!!」
まあうるさいのなんの(ぬいぐるみだから喋らないけど)。あ、こいつ、と思ったが、その時点ではまだサメを買う気満々だったのでちょっと保留にして、通り過ぎた。上述のようにサメとは縁がなかったのだが、そうするとさっきの犬が頭から離れなくなった。子どもには「戻ってさっきの犬がまだいたら買おうと思う」と宣言をし、店を半周くらい戻った。

さっき通り過ぎたワゴンに戻ると、やつはいた。どれも同じ見た目だが、わりとあっさりワゴンの山に埋もれている犬を見つけた。見ると「戻ってきた!」という顔をしていた。
「なんかこいつ、連れて帰れとうるさいので買います」と宣言をし、買った。普段「合意形成がはかれたら買う」が理解できないと言っていた子どもも今回は「自己主張……」と言っていたので、たぶんなにかしら伝わったのかもしれない。
もちろん、当初の目的のおやつもちゃんと食べた。

家に帰ると、犬は最初からうちにいたみたいな顔をしてソファに置かれた。まあそういう運命だったんだろう。

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