ぬいぐるみ語り(10)

厳密に言うとこれは自分のではないのだが、わりと重要な位置にいる(気がしている)ので紹介しておこうと思う。

カエル郵便氏である。
彼はクリスマスになると仕事量が増える、不思議なカエルだ。
我が家はつい最近までクリスマスにはサンタさんにプレゼントのリクエストをしていた。どういうシステムかがわかっても、茶番と知っていても(笑)、年に一度の楽しみとしてあったのだった。
たいていは現物が枕元にあるという、由緒正しい置かれかたをしていたのだが、たまに枕元に置けないような大物の場合、彼に委託してメッセージを運んでもらうのだった。

「大きすぎてここには置けなかったので、○○は××に置きました」
要するに配達証明書というか、ちゃんとモノはあるよという宣言というか、言わないと自分にはないのかとがっかりしてしまうので、自分のぶんが忘れられていないという証明のために彼の仕事はあった。
彼は常に赤いカバンを携行している。それにメッセージを携え、配達相手の枕元に佇むのだ。健気というか律義というか、サンタさんからの重要な任務であるからして、気づいてもらうまではそこを離れるわけにはいかなかったのだろう。

仕事は一年に一度だけだから、それ以外の時期は棚でみなと一緒に過ごす。他のぬいぐるみたちに今までいった場所のことを話す旅人あるいは商人のような佇まいですらある。
そういえば一度か二度、イベントの看板係をお願いしたことはあるが、その時はどうも居心地が悪かったようだった。もうしわけない。
今は大役も終わってしまったので、シーズンオフの居場所と同じところで仲間たちと穏やかに過ごしている。彼の明朗な笑顔は今までの任務を思い出してのものなのだろう。

明朗な笑顔とも穏やかな微笑みとも取れる表情のカエル氏

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