hopelessness

目を開けると明かりもなく真っ暗な部屋の中
正しい間隔で上下する君の胸元をかろうじて見つける
近づくには暑い(そして鬱陶しいのは君が嫌いだ)
5センチ寄って君のほうを向く
汗の匂いは下ろしたばかりの柑橘系の石鹸が混じる
無精髭を気にしてさわる
ざらりとした感触が指先に伝わる
嫌がるのを承知でさわる
柔らかくて硬い感触が指先に伝わる

眠れなくて寝返りをうつ真っ暗な部屋の中
君の手は左胸あたりだらりダリの絵のように
そうすれば安心するかと思って手を取り
体の中心にそっと置く

あたたかい
感触は
永遠には続かない

君に望むことを叶えていたらきっといくつあっても足りない
命とか鼓動とか
これ以上体を固くさせて身動きが取れなくなったら
もっと眠れなくなる
天井と君と視線を往復させて
目が慣れたころには君が寝返りをうって
触れるものはなにもなくなる
馬鹿だなあと
わざと声に出して言ってみる
目を閉じて深呼吸をする
好きな人のことを考えてみる(それはきみのこと)
少しずつ遠のく意識で
好きな人のことを考えてみる(それはきみのこと)

寝返りをうつみたいにして
10センチ君から離れる
あたたかい感触は永遠には続かない

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