マガジンのカバー画像

短詩の風投稿作

11
年に一度ある、Twitterの短詩企画。 これも年に一度だけ更新されます(たぶん)
運営しているクリエイター

記事一覧

終焉

役割なんて本当はひとつだけで
それが終わってしまえばもう用はない
真に受ける必要はないのだが
妙に納得してしまったのでこれで終わりにする
沈殿する身体と蒸発する意識
きっといいタイミングだったのだ
悔いたりする必要はなく むしろ喜ぶべきなのだと
目の前で万歳三唱するほどの

(2024/2/22)

いち、に、さん

ひとつひとつ
暇を見つけては
独り言を書き取り
人が秘密にしていたことを
陽の下に晒す

ふたりそれぞれ
不慣れな共同体で
不満はあるものの
不幸ではないと
普通に暮らす

蜜月も終わり
身の丈のささやかな生
見つけた傷はそっと
見てみぬふりをして
皆嵐が去るのを待つだけ

(2023/2/22)

たたかえ

剣よりも銃よりも強いもの
ペンであったり
筆であったり
粘土、木や鉄、石膏、絵の具
言葉を駆使し、
思考をめぐらせ、
世界と戦え、世界で戦え
不条理をねじ伏せろ
理不尽を解体せよ
自らの力を信じ
得た勢いを一点に集め
前に進め、先に進め
逆らう流れもいつか
自らに味方するだろう

(2022/2/19)

くろきもの

とてもとてもきれいな言葉で塗り固められた壁の前で「でも本当は嫌いなくせに」とつぶやくと内部からどろりと黒いものが染み出してくるのです。空を地を覆う、暗黒。そしてそれがおそらくは心からのものであるということに彼らは気づいていません。

(2021/2/20)

かえろう

本当は君についていきたい
でもそれはできない
なんてもう使わない言葉しか思いつかない
今は君に甘えたい
泣きたいのは我慢したい
夜中の冷たい風にさらされた
いつもみたいに笑ってさよならしたい
けどそれももう無理みたい
帰ろう会わなくてもいい場所へ
すれ違っても気づかない二人に

(2020/2/22)

、しかしらない

一人で待つにはまだ少し寒い
薄手のコートでは心許ない
一緒にいることろを見られるのは
なんとなく恥ずかしい
中学生でもないのに
取る微妙な距離の伝わる熱
僕は甘えかたを知らない
君の困った顔しか知らない
春はまだすこし遠い

(2019/2/23)

いと

君がどう思おうとも
君がしたことは許されるべきことではないのだから
僕が君の言葉を信じなくても
僕を責めたりしないでくれないか

僕が君にかけられた言葉を
僕は決して忘れないだろう
君が意図したのか意図しなかったのか
そんなことは関係なく
君の人となりはもうわかったから

(2018/2/24)

しりたい

リピートする曲のコード進行と
君の顔色ばかりうかがう理由と
誰かを見ると痛みの走る場所と
いつまでもひとりのままなのか
僕は知りたい

(2017/2/26)

しかたなかった

制服を着ているときだけは純情なフリ
君の手のひらの熱は自分だけが知ってる
帰り道に互いを探す回数は
人通りの少なさに反比例する
本当はなんとも思ってなくても
同情だけでなにかした気になるのだろう
そんな君のことが嫌いだったし
君を好きになるしかなかった

(2016/2/20)

すぎたこと

久しぶりの再会
もう彼氏彼女じゃないけど
相手もいて子どももいて
家族ぐるみっていうの? って言ったら
男は男でなんだか盛り上がってるし
女は女で そりゃね、もう!
どんな仲だったのって質問には
昔一番仲が良かったのよって返事を
それくらいの軽さでいいと思う 私たち

(2015/2/21)

ずるい

忘れるってわかってて
忘れないでっていうなんて
なんかずるい
去年そう思ってて
昨日顔を見たらやっぱり忘れてた
最初からわかってたから
なにも言わなかったよ
となりにいた彼女
素敵な人でよかったね
作り笑顔も上手くなったと思う
そんな自分に慰めの言葉もない

(2014/2/22)