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たまたま読んだ本24:「人生を変える健康学」がんを学んで元気に100歳日本人の2人に1人ががんになる。実は若い女性も多い


人生を変える健康学

現在、日本では1年間に男性の57万人強、女性の44万5千人ほどが、がんと診断されているという。日本人の2人に1人ががんになるらしい。がんになる人が増えたのは高齢化のためであるが、40歳未満では、その8割が女性だという。

がんとは、細胞増殖に関わる遺伝子に20~30年かけて変異が蓄積することで、がん細胞となる。
がんを知ることは、高齢者でけでなく、若い世代にも必要で、長生きの処方箋はヘルスリテラシーを高めることだと、著者は言う。

がん予防の3段階は次の通り。
1次予防は、禁煙、節酒、適度な運動、体形の維持、バランスの良い食事などの発がんのリスクを低下させるライフスタイルが重要。

2次予防は、がんの早期発見。発がんには「偶発的遺伝子損傷」が大きく関与する。早期がんで症状が出ることはまれなので、定期的にがん検診を受けることが必要。早期発見できれば、完治できる。

3次予防は、がんの転移、再発を防ぐための予防。1次予防に準ずる。

がんを予防するにあたり、
がんや健康のことで、思い込みや誤解をリセットすることが大事だとして、次の8つの思い込みをただしてくれる。

思い込み①「野菜でがんを予防、肉は体に悪い」では、野菜や果物のがん予防は限定的で、野菜も肉もバランスよく食べること。肉は消費が少ない日本人はあまり影響はなく、高齢者は肉や乳成分でタンパク質を十分に摂るほうががん予防につながるという。

思い込み② 「遺伝だから、努力してもムダ」では、遺伝的要因は5%程度で、要因トップは感染で17%。2位が喫煙15%、3位は飲酒の6%、続いて胃がんを増やす塩分過多2%、植物繊維不足や過体重1%、受動喫煙0.5%で、男女合わせても36%が生活習慣や感染など予防可能だという。家族歴のある人のリスクが高いのは、家族が同し環境を共有することも強く影響しているので、家族歴のある人は、がんを予防する生活習慣を心掛け、がん検診をきちんと受けておくことをお勧めるという。

思い込み③「いまさら禁煙しても遅い」では、禁煙は若い時にした方が効果的だが、何歳であっても遅すぎることはなく、30歳までに禁煙すれば、喫煙しなかった人と同様の余命寿命が期待でき、50歳で禁煙しても、余命が6年長くなることがわかっているという。たばこに含まれる発がん物質は70種類程度あり、細胞内にある遺伝子に結合し、突然変異を引き起すという。またたばこは脳卒中や心臟病の原因となり、過熱式のたばこも発がん物質を含み、受動喫煙は避けられないと警告する。

思い込み④「酒は百薬の長です」では、酒は「一滴も飲まないことが健康に一番」と酒飲みにはつらい指摘。酒は、ロや喉のがん、食道がん、肝臟がん、乳がん、大腸がんなど、多くの臓器のがんを増やし、飲酒しながら喫煙するのは最悪の自殺行為だと警告する。酒を飲んで顔が赤くなるのは、体内に発がん物質がたまっているサインだという。

思い込み⑤「日本人のがんと言えば、胃がん」では、実は、若い世代では、胃がんの原因とされるへリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)の感染者が劇的に減り、胃がんの発症者が滅つているという。でも、50~60歳代のビロリ菌感染率はいまだ4~ 5割。この世代は胃がん検診を受けておく必要があるという。

思い込み⑥「大腸がん? 検査陽性は痔のせい」では、いま日本で患者数が最も多いのが大腸がんで、便潜血検査で陽性になれば、早期発見のチャンスと考えて、また痔が原因で検査が陽性になることはないので、必ず大腸内視鏡検査を受けるべきだという。大腸がんは早期発見でぼとんど治るという。

思い込み⑦「仕事を辞めて治療に専念」では、がんと診断されると約2割の人が仕事を辞めている。そのうち、4割以上が、実際に治療を受ける前に辞めてしまっている。がんが治れば、一部の例外を除いて、元通りの生活に戻り、仕事も以前と同様にできることが多いので、すぐにやめるべきでないと忠告する。

思い込み⑧「コロナがこわい、検診も自粛」では、新型コロナによる死亡は80歳以上が69%。70歳未満は11%にすぎない。一方、がん患者全体の42%が70歳未満。働く人の死因の約半数はがん。病死に限れば、9割はがんが原因ということになる。現役世代にとっては、がんはコロナとは比較できないくらい大きなリスクなので、検診を自粛しないでと呼びかける。

この他、
2019年の日本人の平均寿命と健康寿命との差は男性8.8年、女性12.2年。この乖離の大きな原因が運動不足であり、運動習慣の大切さを訴える。

花粉症の人は、がんの発症リスクが減る可能性が指摘され、特に最凶のがんといえる膵臟がんのリスクが低下するという研究結果が増えており、過剰な免疫反応が起きている花粉症の人では、がん細胞を未然に退治してくれる「免疫監視機構」の働きも強まっている可能性があるという。

がんは運に左右される病気だが、禁煙、節酒、運動などを心がけることで、発がんリスクは大きく低下し、運悪くがんができても、早期発見で9割以上完治させることができると日頃の運動と検診の重要性を語る。

また、女性には①自分の乳房の状態を知る。②乳房の変化に気をつける。③変化に気づいたらすぐ医師に相談する。④40歳になったら2年に1回乳がん検診を受ける。というブレスト・アウェアネス「乳房を意識する生活習慣」を推奨する。

生活習慣、とくに、「禁煙」「節酒」「食生活」「身体活動」「適正体重の維持」の5つの最適化を図ることが大切だと念を押す。

禁煙は非常に意志力のいる辛い作業になるので、はじめから吸わないのが一番。もし禁煙に失敗してもあきらめず何回も挑戦すると、そのうちタバコが嫌いになるというアドバイスを聞いたことがあるので、頑張ってみてください。昔と違ってタバコを吸っていると低レベルの人と見られて、格好悪いと思う人もいるようです。歩きながらとか自転車に乗って吸っている人もいますが、あれは後ろの人がずっと煙や臭いを浴び続けることになるので大変な迷惑行為かもわかりませんね。外で吸う時でも周りの人に煙や臭いが流れないか配慮する時代になっているのですね。
ヘルスリテラシーを高めましょう。


人生を変える健康学
がんを学んで元気に100歳

出版社:日経サイエンス (2023/6/24)
発売日:2023/6/24
ページ:208ページ
定 価:1,760円(10%税込)

中川恵一(なかがわ けいいち)
東京大学大学院医学系研究科特任教授。医学博士。
厚生労働省がん対策推進企業アクション議長、文部科学省がん教育の在り方に関する検討会委員を務める。日本経済新聞で「がん社会を診る」を連載中。

トップ写真:シュウメイギク

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