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たまたま読んだ本21:「付加価値のつくりかた」 一番大切なのに誰も教えてくれなかった仕事の本質 現場を観察し、自分の頭で考え行動せよ。作業から仕事への質的転換

付加価値のつくりか

「成功している会社・人」「普通の会社・人」「うまくいかない会社・人」の差は「付加価値をつくる仕組みの違い」が原因だという。
同書では、価値は客が決める。商品やサービスに対して客が価値を感じるもので、付加価値は、客のニーズを叶えるものだと定義する。
物を売る場合、売り手は「どうすれば売れるのか?」を考え、スペックを訴えてしまう傾向がある。でも客のニーズは、困りごとから生まれるので、「なぜ客が買うのか?」から考えることが必要だと説く。

ここで、前に働いていたキーエンスが出てくる。読むとわかるが、しつこいくらいキーエンスが出てくる。ちょっと食傷気味になるが我慢して読む。

ともかく、キーエンスでは、新商品企画や開発で、客のニースにフォーカスする。
・なぜ客が買うのか?
・本当のその商品・気のは使われるのか?
・使われたら本当に役に立つのか?
・どんな役に立つのか?
を徹底的に突きつけるという。

付加価値は、ニーズに対してきちんとサービスを提供したときに生まれるといい、原価の上に乗った部分から客のニーズの部分までが付加価値で、客のニーズを超えた部分は無駄という。
これは、要するに、客の期待値を超える必要はないと言っているようで、他の部分と矛盾しているのではと思ってしまう。ビジネスを効率的に進めるためのものなのか。

続けて、ニーズは「顕在ニーズ」と、「潜在ニーズ」に分けられ、より深い付加価値を提供するためには、潜在ニーズを探る必要があると指摘する。
潜在ニーズは、現場を調査、観察して初めて見えてくる。潜在ニーズを捉えることにより、付加価値の提供と差別化が同時に達成できる。そして人は、感動、感情の動きが得られると価値を感じお金を支払うと説明する。

商品がどのように客に使われるのか、その「使われ方」までを追求した商品であることが重視されるわけで、客が困っていることを解決し、なおかつ、他企業でも使える「標準品」をつくらねばならないという。特注品は、客のニーズを叶えるが、汎用性がなく、製造コストや管理コストがかさみ、価格が高くなる。

ここはなかなか重要な部分だが、汎用性のある機能か、他の機能で集約または分散できないかを考え、基幹となるニーズを重視し、できるたけ標準化を狙うことで商品のコストダウンを図る。その結果、価格面、納期面、修理品の入手性などのメリットが生まれる。
同時に、他社商品との差別化も図ることができ、世界初・業界初の商品であれば、他社との比較のしようがないので、相見積もりをとられることは基本的にないと、その旨みを説明する。

とは言っても、特注品でなく、汎用品を考えるとは甚だ難題だ。キーエンスは、成果は構造、つまり仕組みにより生み出しているという。各部署の職員の守備範囲が広く、重複しており、すべてのことをすべての人がやり、全体として対応できる構造を徹底化し、再現性を目指していると解説する。

また、法人顧客が感じる付加価値は、エンドユーザーの個人が感じる付加価値から生まれる。つまり顧客の顧客の付加価値を考える重要性を説く。確かにその企業の顧客が喜ぶ商品を提供できれば、顧客企業の売り上げが伸び、企業の満足度も大いに上がるわけだ。

営業の重要な役割は、「人は営業を受けるのが嫌い」ということを認識し、「顧客の成功につながる情報」を提供することだと説く。
その情報は、市場の中、あなたがいる業界の中の、いたるところにたくさん落ちている。業界の中にいる客自身は、詳しいようで実際は業界に詳しくないので、なかなかそれに気づくことができない。現場で客と同じ光景を見て、観察し、体験することでニーズを認識のずれなく理解できるという。発想に業界の固定観念がない部外者が気が付くことはよくあることだろう。
そして、その業界を分かったつもりにならないでニーズを探求し続けることの重要性を説く。

また、営業においては、顧客の生活や、顧客企業に起こる変化を語ることが重要だと付け加える。
客が商品を買う瞬間、使う瞬間、実際に使って役に立って感動する瞬間に立ち会うこと。これらの経験を積み重ねていくことが本当に求められることだと力説する。

企業独自の技術力、企画力やノウハウ、材料や素材などの「種」は、世界のどこかに落ちている。自社に現在、技術などなくてもあきらめないで、社外に目を向けて、持ってくれば、商品の企画、開発の幅が一気に広がる。
常に考え、情報に接しておれば、ヒントが見つかるということだ。

ただ会社や上司から言われたことを淡々とこなすことは、それは「仕事」ではなく「作業」。付加価値をつくるためには、作業を減らして、仕事を増やすこと。コストは、付加価値をつくる「作業」にかかる「時間とお金」である。
コストダウンは、作業(量)を減らすのが一番効果的。
誰にでもできる状態になったものが「作業」て、アウトソースして、コストダウンを図ること。
なるほど、納得だが、なかなか難しい。実際、多くの職場は「作業」に終始しているのでは。自分の頭で考え、行動せよ。と言われているわけだ。

付加価値のつくりかた
一番大切なのに誰も教えてくれなかった仕事の本質

出版社:かんき出版
発売日:2022/11/9
単行本:256ページ
定 価:1,760円 税込

著者プロフィール
田尻 望(たじり のぞむ)
株式会社カクシン 代表取締役 CEO

京都府京都市生まれ。大阪大学基礎工学部情報科学科にて、情報工学、プログラミング言語、統計学を学ぶ。2008年卒業後、株式会社キーエンスにてコンサルティングエンジニアとして、技術支援、重要顧客を担当。大手システム会社の業務システム構築支援をはじめ、年30社に及ぶシステム制作サポートを手掛けた経験が、「最小の人の命の時間と資本で、最大の付加価値を生み出す」という経営哲学、世界初のイノベーションを生む商品企画、ニーズの裏のニーズ®までを突き詰めるコンサルティングセールス、構造に特化した高収益化コンサルティングの基礎となっている。その後、企業向け研修会社の立ち上げに参画し、独立。年商10億円~2000億円規模の経営戦略コンサルティングなどを行い、月1億円、年10億円超の利益改善企業を次々と輩出。社会変化に適応した企業の中長期発展のための仕組みを提供している。また、自身の人生経験を通じて、人が幸せに働き、生きる社会を追求し続けており、エネルギッシュでありながら親しみのある明るい人柄で、大手企業経営者からも慕われている。私生活では3人の子を持つ父親でもある。著書に『構造が成果を創る』(中央経済社) 『付加価値のつくりかた』(かんき出版)がある。


トップ写真:キンモクセイ


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