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WAISとGATBを受けよう〜大学時代の自分に向けて②

全4回の2回目。第1回目はこちらから。
今回紹介するツールを提供する機関から、金銭の授受は全くございません。

発達障害者は本当に何もできないのか

「障害者も自分の能力を活かして社会に出よう」という主張をすると、「無能な障害者にできることがある訳ないだろ。所詮俺達は淘汰されるべき弱者なんだよ。」という反論をする人がいる。

発達障害者に関わらず、人の能力を各項目に分けてどれくらい社会に適応できるかを数値化した代表的な検査に「WAIS」「WISC」が挙げられる。どの項目も平均が100で、それより高い低いで自分の能力の傾向を分析する。

僕自身発達障害が発覚した大学4年の頃にこれを受けたが、発達障害者がWAISを受けると、各項目に明確な凹凸が見受けられるのだ。

確かに境界知能で、WAISなどの知能検査において全ての能力が平均以下の人が一定数存在するのも事実だし、僕も処理速度に関しては79しか無い。
だがそんな人でも能力の高低差があって、他と比べて何かしらの能力に関してはマシである場合も多い。

僕の結果。高低差38で手帳が貰えました。

反対にギフテットと呼ばれる高IQの子供たちに象徴されるように、ワーキングメモリーが境界水準以下なのに対して言語IQが150を超えるなど、定型発達以上の才能を持っている発達障害者の方を見かけることも多い。

仕事においてマルチタスクをこなしたり耳からの情報を処理するためのワーキングメモリーだけは一定水準まで伸ばす必要があるが、それに関しても鍛える有効な方法が数多く存在する。

IQが数値化できる相対的なものであるため、特にどの項目も平均以下だと自分の得意な分野を見失いがちになるが、そんな場合であっても自分の能力の凸の部分に才能が隠れている場合が少なくない。

他人と比べるから才能に気付けないのであって、磨けば光る才能を見つけることは比較的簡単なのである。発達障害者が就職活動をする時に、自分のWAISの正確な数値を知ることは第一歩だ。僕自身もっと早くこれを受けていればと後悔している。

たまに当事者会などでWAISの話題になった時に、「検査結果捨てちゃいました」と笑いながら語る方がいるが、こと就職活動においては本当にシャレにならないので注意してほしい。もし捨てていたならクリニックに頼んで再発行してもらおう。

自分を見極める~能力編

WAISに関してはあくまでも数値化された自分の能力や、何ができて何ができないかを測るためのものだ。そこから自分の活用できそうな能力を割り出し、自分に合った職業を探すこともできなくはない。

だがより職探しに向けられた有効なツールに、厚生労働省の一般職業適性検査「GATB」が挙げられる。

①知的能力
②言語能力
③数理能力
④書記的知覚
⑤空間判断力
⑥形態知覚
⑦運動共応
⑧指先の器用さ
⑨手腕の器用さ

以上の9つの能力がどれほどかを、紙筆検査(45~50分、)器具検査(12~15分)の両方で測るものだ。各地のハローワークで無料で受けられる。

僕のGATBの結果

参考までに休学期間中に受けた僕の結果がこちら。よく覚えておいて欲しいのだが、WAISと同じで平均が100。赤線が実際の得点で、青線がその日のコンディションを踏まえ、MAXここまで取れるだろうという点数。

知的・言語・数理以外は全て平均以下。共応・指先・手腕においてはグラフにすら表示されないほどポンコツなのである。(手腕、なんと16!)

それを踏まえたうえで、僕に際立って才能が無い職業は以下の通り。

  • 工場でのワークや機械を使う製造業

  • 熟練技能の職業

  • 機械・装置の技術保守の職業

  • 運転や操縦の職業

  • 介護・看護関係の仕事

  • 理容・美容関係の仕事

  • 警察・保安の仕事

  • 簡易事務の仕事

  • 事務機器操作の仕事

逆に才能があると判断された職業は以下の通り。

  • 人文科学系の研究の仕事

  • 法務、財務系の仕事

  • 教育関係の仕事

  • 著述、編集、報道の仕事

  • 相談助言の仕事

  • 販売の仕事

  • 一般事務の仕事

  • 専門企画の仕事

要するに器用さの勝負だったり、命に関わる場面での瞬時な判断が求められる仕事が全く向いていないのだ。逆にじっくり考えたうえで、それを言葉やアイデアにしてアウトプットする仕事は向いていた。

事実、僕が現在就いているIT系のカスタマーサポートの仕事は、お客様からの質問にじっくり考えたうえでメールで返すものだ。たまたま見つけた仕事ではあるが、科学的にも自分に向いていたと言える。

どこで受けるの?

GATBは各地域のハローワーク等で無料で受けられる。東京都にもしあなたがお住まいの場合、飯田橋にある「東京しごとセンター」で受けることをおすすめする。

他のハローワークだと、「指先」と「手腕」の能力を測る器具検査を行っていない場合も多い。また東京しごとセンターではGATBだけでなく、DPI(職場適応性テスト)VPI(職業興味検査)といった2つの検査を同時に受けられる。

よりあなたに合った職業を、専門のアドバイザーの方が提案してくれるのだ。

事前面談と本検査、結果を踏まえた面談の3回通う必要があり、本検査に至っては水曜日の午前中にしか行われていない。また予約を取ってから検査を受けて結果が返ってくるまでにおよそ2か月弱かかると思って差し支え無いだろう。

だが「自分が能力を発揮できる仕事」と、「絶対に避けた方がいい仕事」を客観的に知るために、それだけの期間をかけて受験する価値があると言える。東京以外の地域にお住まいの方も、より細かいところまで検査してくれるかと言う観点で実施している機関を探していただきたい。

自分の障害に向き合おう

GATBとWAISで、自分に何ができて何ができないかがある程度分かった。
だがこれだけで就職先を見つけようとするのは時期尚早だ。

自分の障害がASD・ADHD・LDのどのタイプに分類されて、どういった配慮や工夫があれば問題なく働けるのか、どういった環境でなら適応できるのかを今一度分析する必要がある。

そこで後編の記事では2回に渡って、

  • 自分の障害と適応できる環境の見極め方

  • 自分が働ける職場との出会い方

これについて自分なりの考えを解説していく。

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