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【となりまち観光】 須磨(神戸)2010.08某日 追想

記念すべき”となり町観光”の第一弾は「須磨」。

ぼくの住まいは、神戸の六甲。
須磨へは、六甲道からJRで約20分で辿り着くことができる。

その須磨に、宿をとってみた。
通勤時間よりも近い町、どれだけ飲んでも終電で帰れる町(実際、3件飲み屋をはしごした後、時計を見ると、まだ終電があった)、子供の頃から日帰りで遊びに着ていた町に、1泊してみる。
なんて馬鹿げた旅行だろうか。
日常を忘れて、未知の世界やなかなか行けない町へ羽をのばすことが旅行なら、
これはまったく逆行している。
何度も来たことがあるし、いつでも来れるし、いつでも帰れる場所にわざわざ1泊するなんて。

と言いつつ、宿にたどり着いたとき、ぼくは衝撃を受けた。
カバンを下ろしたその瞬間、ぼくの心は完全に”旅行者”に変身したからだ。

浮ついた足取り、手ぶらの身軽さ、空気の匂い、好奇心まる出しの視線。

こんな近い場所で、ぼくは旅行している。

須磨海岸では、海の家と男と女が大音量でビールとダンスをしているので、ひとり旅のわたくしは須磨駅前の繁華街へ消える。

ワインを飲む。タコのなんとかというタパスをいただく。
店長は、1杯目のハウスワインが冷えてないと言って、別のイタリアワインを出してくれた。
美味しい赤である。

2軒目は、2号線沿いの立ち飲み屋。
するめと日本酒をあおった程度で、
隣の中年夫婦の玉子焼きの会話がやかましいので退場。
さて、時計を見ると8時。

他に目ぼしい飲み屋はもうない。
しゃーない、海でも行こうかと思いかけたとき、
昼間見つけた1軒のカフェバーを思い出す。
細い階段をのぼって木の扉を開くと、笑顔の素敵なお姉さんとおっちゃん。

レモンハート デメララをいただく。
何故か頭が冴え冴えになって、常連のリチャとお嬢さんと朝まで飲んだ。

途中、宿に戻り、風呂に入ってから、ベランダから抜けだした。
門限11時なんて守ってられない。
宿主のエキセントリックばあちゃん、ごめんよ。

かくして、ぼくはカフェバーで飲み続け、朝の5時半、宿に帰った。
浜辺でくすんだオレンジの太陽を見て、お嬢さんの冷たい手とお別れした。

次の日は頭が朦朧として、月見山を徘徊して、
詩人竹中郁の姿を探した。

いま
「春」が
垣根に沿って喋言つて往つた
「午前十時の風」竹中郁

しかし、いまはギンギンギラギラの夏なんです。

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