【翻訳後記・裏話】ロックマンXのゲームデザインはなぜ最高なのか【9000RT御礼】
YouTubeで1300万回再生された『ロックマンXのゲームデザインはなぜ最高なのか』に日本語字幕を付けました。最近では多くの大学でゲームデザイン入門の教材としても使われているそうです。とても面白くて分かりやすいので是非。(1/9) @egoraptor @KazzDa pic.twitter.com/UOaBU7oAMF
— LiT|翻訳キュレーター (@LiT_Japan) September 18, 2019
どうも。LiT_Japanの中の人です。
『ロックマンXのゲームデザインはなぜ最高なのか』(原題:Sequelitis - Mega Man Classic vs. Mega Man X)は以前から、ぼんやりと翻訳したいなあと思っていた動画でした。
動画製作者のEgoraptor (Arin Hanson)さんは、米インディー・アニメ界の伝説的な存在です。海外版フラッシュ倉庫とも言えるNewgrounds.com(エロフラでお世話になった諸兄も多いのでは)で頭角を表した後に、初期YouTubeシーンで爆発的な人気を誇りました。現在では主にゲーム実況・声優・YouTubeイベントの裏方として活躍しています。
実はこの動画は”Sequelitis(※駄作の続編)”という、世間的には高く評価されている続編作品を辛口に批評していくシリーズの中の1つです。過去には『悪魔城ドラキュラシリーズ』や『ゼルダの伝説:時のオカリナ』をボコボコに叩いてきたこともあり、一部アンチからの熱視線を浴びてきました。
公開後の反応
土屋和弘さんが真っ先に反応してくれたのが本当に嬉しかった。BAMBOO氏(竹中善則)が初代Xのレベルデザインに深く関わっていたという情報は、今回が初出なのではないでしょうか。これだけでもロックマンXファンとしては翻訳した甲斐があったというものです。
ロックマンXのOPステージの構成などは、初代Xを作ったBAMBOO氏の思想を見事に言い当ててますね。ビーブレイダー撃破で崩落する穴から壁蹴りに気付かせる流れなど『そんなのいちいち説明したくないし、遊ぶ側も聞きたく無いじゃん』と仰ってました。 https://t.co/Lr8o2ne4NN
— 土屋和弘 KazuhiroTsuchiya (@KazzDa) September 18, 2019
動画製作者のEgoraptor氏にもこの情報が伝わったらしく、7年越しにこういった形でゲーム開発者とファンを繋げられたことに感動しました。翻訳の力って素晴らしい。
Wow!! I am honored
— Arin Hanson, you say? (@egoraptor) September 18, 2019
動画を最後まで見てくれた人も多かったようで、改めてこの動画の出来の良さを痛感しました。日本でもレビュー文化が盛り上がってくれたらいいのですが…
翻訳ノート
今回の字幕作成はかなり大変でした。
とにかく凄いスピードとテンポで喋るので、視聴者が読み取れる文字数で各種ニュアンスを保つのが難しかったです。どんな種類の動画でも「6文字/秒」を基本的に守る様にしているので、今回は意訳の比重が大きくなりました。
ただ、今回改めて見返して思ったのは、この動画には無駄な箇所がほぼ無いということです。Egoraptorさん自身も、かなりの推敲を重ねていると何かのインタビューで語っていた記憶があります。ここまでの熱量を確かなロジックで上手く形に出来ている人は中々いないのではないでしょうか。
以下、翻訳に関する具体的なメモ
・ ゲームに関する細かい情報(ステージ名など)は省いた。
・とにかく情報量が多いので、””(引用符)を多用した。
・"teach a player"を文字数の関係上、「学ぶ」と言い換えた。
・"smart(頭が良い・よく出来ている)"をそのまま翻訳するとしっくり来ないので、「画期的」と翻訳した。
・"blow one's mind(仰天させる)"を「目ン玉が飛び出る」「ビビる」と翻訳した。
・"conveyance"を「伝達力」と直訳した。日本のゲームデザイン学には、この言葉に当たる用語が見当たらなかった。
・"theming"を「テーマの演出」と翻訳した。やはりこれも、日本語ではずばりと言い換える言葉が存在しないらしい。「演出」という言葉の汎用性が高いせいかも。"theming"からの一連のロジックの流れは翻訳が難しかった。
・"gush(夢中で喋る)"を「オタクモードに入る」と翻訳した。これは個人的に快訳だと思う。
フル版もアップしたので是非。
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