見出し画像

俺はヒットマン #ショートショート4

BOSSから指令がくだった。
今日のターゲットは敵組織の中心人物の30代男性。特徴は体力に自信があることと左利きらしい。

俺は大きなものは狙わない。
あくまでコンパクトにうち抜くことを信条としている。
失敗してチャンスを逃したことも少なくはないが、あくまでヒットマンとしての高い意識を持って仕事に取り組むことは忘れていない。

BOSSは事前にターゲットの情報を伝えてくるが、ターゲットが誰であれ、俺の仕事は変わらない。
ただし、俺もプロだ。失敗は許されないので、BOSSからのターゲットの情報はしっかり聞いてから仕事に向かう。

今回は仲間が俺の仕事のために、敵組織の頑丈な防御体制を崩し絶好の機会を作ってくれた。
おかげで平然を装っているがターゲットも慌てている様子が隠しきれていない。

そんなお膳立ての中、俺は仕事道具を片手にターゲットをうてる場所に移動する。
改めて舞台を見渡す。
ターゲットをうつことで、今回の争いにおいて我が組織の勝利が確実になる。
そんなことを考えて一度深く呼吸をする。

よし、と心を決めて武器を構える。
ターゲットと目が合う。

勝負は一瞬だった。
次の瞬間、バァーン、という軽い音とともにタマがうたれた快音が響く。
その音を聞いた仲間が必死な顔でこちらに突っ込んでくる。
俺もうち終わるとすぐに、一直線に走り出す。

これで勝負はついた。
後ろを振り返るとターゲットが地面に崩れ落ちている。
一方で仲間やBOSSの方を見ると、ペットボトルの水を持ってこちらに向かって走ってくる。

やれやれ、今日も服が濡れてしまうのか。
まあ、この瞬間が一番の醍醐味ではあるのだが。

俺はヒットマン。
ホームランは狙わず、チャンスの場面でコンパクトにヒットを打つことを仕事にしている。
人からは代打の神様とも呼ばれることもある。

#ショートショート
#短編小説
#ヒットマン

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?