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患者にもあるよ、多様性。

 「多様性(ダイバーシティ)」という言葉をよく目にするようになりました。年齢、性別、国籍、学歴、人種、性的指向、性自認など、「様々な立場の人がいる」ということをまず知って、お互いを尊重しあうことができれば、今よりももっと生きやすい世界になるんじゃないかな~と感じます。今を生きる上で、とても大事な視点ですよね!

 最近、「患者の多様性」について、よく考えています。きっかけは、今年4月の「競泳の池江璃花子選手が白血病から回復し、オリンピックの代表に内定した」というニュースでした。

 トップアスリートが血液のがんと呼ばれる白血病を宣告され、治療を経て、また元のフィールドで結果を出すということは、本当に大変なこと。ご本人も、サポートされる方も、大変な努力をされたのではないかと思います。池江さんすごいな~!!と感動しました。

 ただ、このニュースが広がっていく中で、「『池江さんも復活できたんだから、あなたもがんばれ』と同じ病気の人に言うのは違うと思う。人によってできることとできないことがある」という意見も多数聞かれました。

 池江さんみたいにあなたもきっと元気になれるよ!と励ましたくなる気持ちもわかるし、みんなが池江さんと同じことができるわけでない、という意見もよ~くわかります。どっちも間違ってはいないけれど…とちょっとモヤモヤ。そこで、私なりに考えてみました。

 私なりの結論は「もっと『患者の多様性』が知られるべきなんだな!」ということでした!

 私の経験した甲状腺乳頭がんは、「予後(治療後の経過)のいいがん」と言われています。確かに、私も手術・放射線治療を経て、今は術前の生活に戻っています。では、「『甲状腺乳頭がん』は全く心配ないがんなのか」というと、そうとも言い切れません。がんのできる場所、発見された時のステージによっては、手術の時に声を出す神経である反回神経が傷つき、術後声が出なくなる可能性もあります。同じがんを経験しても、今まで通り声が出る人もいれば、声がでなくなる人もいる。これは、その後の人生において、かなり大きな差ですよね。全く同じ病名でも、個人差は確かにあって、治療方法はもちろんですが、精神的負担・身体的負担が全く同じとは限らないのです。加えて、甲状腺がんの中でも種類があり、「未分化がん」は進行が速く、悪性度が高いと言われています。同じ「甲状腺がん」でもこれほど差があるのですから、様々ながんの経験者の身体面・精神面の状況は千差万別、全く同じ状況の人など、そもそも1人も存在しないのかもしれませんね!

 でも、これは、私が当事者になったからこそ気づけたことでもあるな~と思います。がんを経験する前は、やっぱり「がん=死」と思っていたし、ステレオタイプなイメージでがんの患者さんを見ていたように思います。がん未経験の方にお伝えするには、どう表現したらいいのかなあ??

 お産が1人1人違うように(初産か経産婦か・陣痛の時間・立ち合いの有無・出産方法・産後の体調など)、失恋の痛手が1人1人違うように(あっという間に復活する人もいれば、数年引きずる人もいますよね…)、「虫歯」と言ってもその状態が違うように(経過観察か、ちょっと削るのか、神経まで抜くのか、抜歯が必要か)、がんの患者の精神的・身体的状態は1人1人全く異なるのです!これでなんとなく感じていただけるでしょうか?!

 病気に限らず、ありとあらゆることに「多様性」があり、1人1人違うのが当たり前。だからこそ、目の前の相手に寄り添って、相手の事を知る努力が必要なんだろうな~と改めて感じました。 

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