わたしの記憶のたからもの(東松山comeya)

2024年6月8日(土)から7月27日(土)まで東松山のcomeyaさんで開催中の展示。

『Love letter to …/わたしの記憶のたからもの』展

こちらはちょっと特殊な展示になっています。
東松山のまちを、comeyaを行き交う人たちから『思い出』の写真を借りてそれにまつわる『記憶』を取材し作品として再構築したものを作品にして展示するという試み。

面白い!
そう思ったので俺も写真をcomeyaさんへ持ち込み、その思い出を語ってきました。
その写真がこちら。

今から20年以上前、メキシコへプロレスを観に行ったときに撮った一枚です。
そして、取材を受けて展示を心待ちにしていた俺の元に届いたのがこちらのチラシでした。

あっ!

俺がっ!

こうなっちゃうと居ても立っても居られない。
もちろん、初日に顔を出しましたよ。
あの頃の自分に会うために。
そしたら…
たくさんの人たちの『記憶』に混ざって…

俺の写真が!

なんだよ!
おっしゃれー!
ポスターみたいじゃんか!

他の人のものもそうなんだけど、写真にまつわる『思い出』をきちんとデザインに反映してくれているんだ。
子どもの頃、若い頃、母親の、奥さまが若い頃の写真…。
なんか、どの写真からもその人の『記憶』が溢れてくるよう。

そう、そうなんだ。
記憶が溢れてくるんだ一枚の写真を見ると。
あの頃の。

あのね、写真を持ち込んだときとその後に電話で取材を受けたんだ。
それぞれ15分くらいかな?
そして、その後にその記事が送られてきた。
『この内容で大丈夫ですか?』
って。
でもね、もう止まらないんだ。
あの日の記憶が。
その前後の記憶まで。
なので、comeyaさんに無理を言ってあれもこれもと追加をお願いしていたら…

『いや、長すぎてバランスが…』

ということに(汗)。
でも、思い出したんだ。
あの日のメキシコシティの空気を。
なので、comeyaさんに許可をいただいて完全版をこちらに載せさせていただきます。
長いです(笑)。


アリーバ!メヒコ! ビバ!ルチャ・リブレ!
(1997年/メキシコシティにて)

プロレスが好きで、かなりハマっていた時期があります。
なかでも覆面レスラー。メキシコのルチャ・リブレっていうスタイルが大好きだったんですけど、これはもうすり込みですよ。ミル・マスカラスにドス・カラス。昭和に生まれた男の子だったら共感してくれると思うんです。毎週のようにテレビのプロレス番組で彼らの活躍を観ていましたから。

そんなプロレス熱がピークに達したのが今から30年近く前、90年代の後半。
東北のみちのくプロレスや覆面レスラーが活躍している小さな団体に足しげく通っていた俺は、知り合いのプロレス雑誌の記者が取材を兼ねてメキシコに行くと聞いて一緒に連れて行ってもらったんです。それが初めてのメキシコ。ルチャ・リブレ観戦ツアーみたいな感じ。もう至れり尽くせりのツアーで、試合の観戦はもちろん、たくさんのエストレージャ(スター選手)との交流会も組み込まれていました。楽しかったですよ。強盗に襲われたり危険な目にも合いましたけど(汗)。

そんなメキシコ滞在中のある日、自由行動の時間。
俺が好きなメキシコの覆面レスラー(ルチャ・ドール)の一人ににスペル・アストロ(流星仮面)っていう伝説の選手がいるんです。初めて彼の試合を生で観たのはみちのくプロレス、秋田の田舎町での試合。たしか、十文字の体育館だったかな?いや、すごかったです。小さなカラダがゴムマリのようにリングの中を縦横無尽に飛び跳ねて、古い体育館に集まったお客さんを沸きに沸かせる大活躍。そして最後は場外に倒れた相手にリング上から飛び出して頭から突き刺さるトペ・アトミコ。彼の必殺技です。それがちょうど目の前に飛んできてね、俺、気がついたら立ち上がって大声で叫んでいました(笑)。

その彼がメキシコシティでレストランをやってるっていうのは知ってたので、ツアーの空き時間に行ってみたいと思ったんです。
でも、店がどこにあるかわからない。当時はネットもスマホもなかったので。でも、まぁ、だいたいの場所はわかるからダメ元で探してみようと一人で街を歩いていたら、偶然知ってるプロレスラーに会ったんですよ。もう亡くなっちゃったんですけどブラック・ウォリアーね。素顔だったけど(ブラソ・デ・オロとレディ・アパッチェも一緒だった)。で、ワリオ(彼の愛称)に『アストロの店だったらこの近くだよ』って教えてもらってようやくたどり着いたんです。

そこはサンドイッチが有名なお店。メキシコではトルタって呼ばれるサンドイッチですが、彼の店の名物は巨大なバゲットに店にあるありとあらゆる食材を挟んだっていう感じのラグビーボールくらいの大きさのサンドイッチ。その名もトルタス・グラディアドール!『剣闘士のサンド』!それを注文して食べたんですよ。これが美味しくてねぇー。固いけど噛みしめると口いっぱいに香ばしい小麦の味が広がるパンに色んなハムとベーコンとタマゴと野菜と…。嗚呼、涎が出ちゃう(笑)。

その時、ちょうどスペル・アストロ本人もお店にいたんです。もちろん素顔ですけど、もう体型が完全にスペル・アストロ(笑)。背は低いんだけど胸板が厚くてね。第一印象は、優しそうなおじさんだなって感じでした。
で、勇気を出して、カタコトのスペイン語と英語で『日本から来たんです。写真を一緒に撮ってもらえませんか』って話しかけたんです。そしたら、彼がノリノリになってくれてですね、わざわざマスクをかぶって、『いいから厨房に入れよ』って言って茶めっけたっぷりに包丁を構えてポーズとってくれて一緒に撮ったのがこの一枚。いやぁー、嬉しかったですねぇー。
初めてのメキシコで、自分ひとりで行きたい場所にたどり着けたのも嬉しかったし、本人に会えたのも嬉しかった。その後に二度メキシコにルチャを観に行ってるんですが、今でも一番に思い出すのはこの日のことです。

あと、この写真にはスペル・アストロのサインが入ってるでしょ。当然だけど写真を撮ったときにはサインは入れてもらえないので(現像しなきゃならないからね)、後に彼が来日して後楽園ホールで試合をしたときに、この写真を持って行って改めてサインをしてもらったんです。『おー!おまえか!』って喜んでくれたのがまた嬉しかったなぁー。

じつは、俺、自分があまり好きじゃないので自分が写ってる写真ってほとんど無いんです。これは珍しく笑顔の自分が写っている、思い出の1枚です。
俺はこの時、20代の後半でした。


以上!


カメラで撮って現像した写真とスマホで撮って保存した写真。
記憶に違いはあるのかな?
そんなことを思いながらnoteを書いてみました。
紙ではなく画面に。

Love letter to …/わたしの記憶のたからもの
〜東松山のまちを行き交う人びとの愛に満ちた写真とストーリー〜
東松山comeyaさん

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