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私に、世の中における「差別」の存在について、具体的に考えるきっかけをくれたのは、

中学2年の時に出会った、J先生だったと思う。

英語のALTの先生だった。

アメリカのテネシー州の出身で、当時まだ23歳。大学を出たばかりで日本に来ていたようだった。

肌の色の黒い人だった。

とても優しい先生だった。

私は、彼のおかげで、英語が大好きになった。

山間の小さな田舎町。

なだらかにふくらんだ稜線で白く浮かびあがる故郷の山。

春先には、残雪が田んぼに種を蒔く農夫の姿をえがく。

人見知りが強くて、中学生くらいの頃は、自分をどう表現していいかわからないながら過ごしていたと思う。

早生まれで長女。

年の近い弟はひょうきんで、昔からみんなの中心に立つようなタイプ。

ある日の放課後、私は泣いていた。

理由ははっきりとは覚えていないけれど、たぶん違和感を強く感じていたのだろうと思う。

たまたまそれを目にしたJ先生。

少しして、私に英語で手紙をくれた。簡単な英語で、日本語訳も書き添えてくれていた。

「学校生活では、色んなことがあるものさ。僕も大学を卒業してからそんなに経っていないから、よくわかるよ」

涙が出た。

大学生になって一人暮らしをするようになっても、その手紙は私の手元にあった。

日本人の先生にも、素敵な先生はいたかもしれない。

でも私には、中学では彼ほど記憶に残った先生はいなかった。

to be continued…


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