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"絶望"がひらいてくれる新しい世界

自分の個性を否定される人ほど、可能性に満ち満ちているのではないかと思う。

最近まで、ある都内のホテルの最上階のラウンジで給仕の仕事をしていた。

と、過去形なのは、この仕事で得られるメリットよりも、デメリットの方が上回った、と私自身感じたから。

この理由については、置いておく。

この仕事の面白かったのは、やはり、人間観察。

これに尽きる。

飲食の仕事をしていて、一番面白いのが、これ。

ものを食べている時、人は無防備になる。

そして、給仕係(ウェイトレス、ウェイター)というのは、甘く見られることが多い。

だから、人の本音を見ることができるのだ。

そのラウンジは、外国人のお客様がとても多いところだった。

朝食のサービスの時には、7、8割が外国人。

これはそのホテルの宿泊客の割合を、ほぼ反映しているのかもしれない。

外国人の行動を観察するのが、とても面白かった。

色んな肌の色の人、女性もいるし男性もいる、色んな組み合わせのペアやグループがいる。

彼らの行動や会話、見かける頻度から、彼らの関係性がなんとなく見えてくる。

ビジネスの関係はもちろん、ホテルには色々な人がやってくる。

この職場で、一定期間働かせていただいて感じたこと。

・人は、言葉が通じなくとも、感情や相手の考えていることは十分伝わる。

・人にもよるけれど、外国人の方々の方が、にこやかに挨拶し、お互いに気持ちの良い時間を過ごせる方が多かった(そうでないグループもあった)

・階級意識で人を見る人。こういう仕事をしていると、露骨に階級意識を人に見せる人にも出会う。

(日本人の方がむしろ、そのような意識を隠さない人が多いと感じた。あるいはこれは単に、従業員を"記号"として認識している、そのような意識の反映ということだけかもしれない)

それはそれで人の行動の観察ができるので、とても面白いのだけれど、椅子に食べ物のカスが落ちていた、ウェイトレスの対応が悪い、との不満を従業員に直接伝えるおじさんに、2人出会った。

このことについて、少し書かせていただきたいと思う。



1人のお客様は、ご夫婦で宿泊されていた。

奥様は、聞き役に徹しているような感じの方で、おそらく経営者か経営者を引退された感じの男性が、「椅子に食べ物のカスが落ちていた」と言って、従業員(その時私の上司にあたる人)に苦情を言っていた。

彼の言わんとしていることは、このようなことだった。

「ここには、ビジネスマンもたくさん泊まりに来ているのだから、こんな食べ物のカスが椅子に落ちていたら、せっかくの洋服が台無しだ。今日僕は、普段履きのパンツだからいいけれど、いつもは50万もするようなスーツを着ている。これからビジネスに出掛けるといった時に、そのスーツが汚れたら、かないませんで」

彼は関西の方らしく、そのような物言いだった。

白髪の初老の紳士といった雰囲気の方だったが、眼光は鋭く、スリムで背筋はしゃんと伸び、はっきりとものを言う方だった。

淡いグレーのジャケットに、薄い黄色の素敵なパンツ(スラックスという言い方の方が近いか)という出立ちだった。

彼の席は、私も回っていたので、その苦情を耳にした私も気になって、夕食の時にいらした時に、サービスしながら少しお話ししてみた。

「私、なにか失礼をしてしまいましたでしょうか?」と。

一度サービスで対応させていただいただけだったけれど、さすがは経営者の方(たぶん)、彼は私の名前を胸の名札で覚えていてくれた。

私の名字は、ある県名と同じなのだけれど、彼はこう話した。

「娘が〇〇に住んでおったから、覚えてたんよ。」

話を聞いたら、彼が責めたのは、私の非ではなかった。

でも、彼が言うことは、もっともだと思ったので、私もずっと気にしていた。

これから商談に出掛ける、といった時に、ズボンにシミをつけてしまったのでは、そのタイミングでクリーニングに出すことも不可能だし、本当に困ると思う。

(ホテルの側に翻って考えてみれば、人の配置の仕方や従業員の意識、使い方の問題になってくると思う)

私は私の苗字の由来に関する2つの説の話をして、「つまらない話を」と言って、彼らの席を去った。



このような仕事も、一期一会で、本当に勉強になることが多い。

会話のウィット、感情のやり取り。

外国人の方の、それぞれのお客様の体型や顔つきを見るだけでも、あぁ世界はこんなに広いのか、と思う。

日本人の私からみたら、背丈やサイズ感がとても大きな方も、外国人の方には多い。

肌の色も様々、アジア系の顔だから日本語で話しかけてみたけれど、日本人ではなかったということを繰り返すと、日本人とそうでないアジア系の人との見分けも段々とつくようになってくる。

だから、そのような雰囲気の人には初めから英語で話しかけるようにもなった。

しかし今回、とりわけ面白かったのは、インドとか南アジア系の人々、またはそちらにルーツを持つ方達とのやり取りだった。

お客様はホテルのサービス利用しながら、それを評価している。

彼らの感性は、キリスト教系の文化圏、またはキリスト教の影響を強く受けた文化圏の人々の感性とは、まったく違うように感じる。

これは前に、ネパールの人達の多い職場で働かせていただいた時にも感じたことだったけれど、

今回出会い、やり取りさせていただいたのは、社会的な階級の高い方達ということで(ビジネスのためにホテルに滞在されることが日常である方々)、

また違う勉強をすることができたと思う。

私がサービスに入らせていただいた何日間か、いつも顔を合わせるご夫婦がいた。

初めてお会いした時からお二人とも、とてもにこやかで、外部に対する気遣いだけではなく、そもそもの関係性として、お二人の間には確固とした信頼関係と愛情があることが、傍目にもはっきりとわかる方達だった。

ディナータイムでサーブさせていただき、次の日は午後に(その日のビジネスを終えられたタイミングで)少しリラックスされた様子で来店される。

"You work well"
"You must be tired"

彼らとは、サービスさせていただく時だけではなく、アイコンタクトで会話させていただいたりもした(お二人とも、とても表情豊かで、チャーミングな方達だった)。

とても楽しかった。

私もカタコトの英語で自分のことを少しお話しさせていただいたりしながら、

彼らとのやり取りを楽しんだ。

なぜか彼らは私にとても良くしてくださって、"My dear"と旦那さんの方から話しかけていただいた際には、思わず驚いて奥様の顔を見てしまった(どのような感覚でそのように話しかけていただいたのか、また私がそんなに英語を知らないため)。

この現場は今日で最後、というある日、私は彼らに聞いてみた。

"May I ask you where are you from?"

お会いできてよかったです、親切にしてくださってどうもありがとう、と。

彼らのお住まいはヨーロッパのある都市だったけれど、(最後お話しすることができたのは、奥様だった)ルーツはインドであるとのことだった。

私は、ヨガを勉強していることを話し、私はインドやネパールにはまだ行ったことはないのだけれど、この地域の方達の感性は、キリスト教の文化圏の方達とはまったく違うように感じています、と言った。

彼女は、そうだ、と言った。自分はヒンドゥー教を信仰している、とも教えてくれた。

今述べた通り、私はまだインドやネパールに行ったことがない。

この地域への関心は、大学院生だった23歳くらいの頃にはじめて持ち始めたのだけれど、

その興味が、私にとって"本当の"興味になったのは、院生の時にある困難を経験し、人生に、世界に心から絶望し、心も身体もボロボロになる、という経験をしてからのことだった。

人は、心から絶望して初めて、この世の中の"真実"やら、"神の存在"といったことに、興味を持ち始めるのだと思う。

自分の目の前に見える光景には、あたかも絶望しか広がっていない、そのように見えるからこそ、

それまでは本気では思ったことのない、"見えないなにか"について、本気で考えるようになると思う。

少なくとも、私はそうだった。

私の本当の"精神の旅"が始まったのは、それからだったと思う。

ヨガに関心を持ったのも、直接のきっかけは、当時住んでいた私のアパートのドアポストに投げ込まれた一枚のヨガスタジオのチラシだったけれど、

おそらく私は、導かれるべくして、ヨガが与えられたのだと思う。

ヨガが私に与えてくれたものは、計り知れない。

これについてこと細かに述べようと思ったなら、それこそ1冊の本を書くことができるほどの分量になると思う(内容も精度も、自分の心と違わぬように、嘘偽りなくそして、客観的な事実との照合もちゃんと行いながらの記述をしたならば)

余計なものは削ぎ落とされている方がよいけれど、自分の心と違うことは絶対に書きたくない、しかしその時のタイミングで本に書くことができるギリギリのラインを狙いたい。

文章を書くということに限ったことではないけれど、私は私以外の誰の立場にも立つつもりはない(不可能である)


今日の話は、最近の私の日常から私の心の中、考えていることについて、紹介させていただく内容になった。

最近また、新しい気づきがあって、不安定な中にいるのだけれど、毎日楽しいなと思いながら過ごすことができるようになっています。

さしあたり、今時分の自分の目標を達成することができるように、今は自分なりに試行錯誤する日々です。

少し久しぶりの投稿となりましたが、長文お読みいただきまして、ありがとうございました!


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