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よくわからないけど大事そうなこと

実家に虫が出たとき、父と母は決して殺そうとしなかった。蚊やハエは手で追い払い、風呂場に出たムカデはビニール袋に追い込んで外に逃した。ゴキブリが姿を現し、僕ら子どもが固まっていたときも、父はゴキブリに手を添えることでゴキブリを逃してやった(ゴキブリの敏感な触覚を利用していたようだ)。

殺さないといけない状況のときは「ごめんなー」と言いながら、苦しまないように即死させていた。ゴキブリホイホイにハマってしまい飢えで弱っていたゴキブリを、父が神妙な面持ちを浮かべながら潰して即死させていたのを覚えている。

古屋ならではの隙間が多いためか、新居では既に多くの虫に遭遇している。両親に習い、生け捕りして外に逃してやるが、情けないことにゴキブリに手を添える勇気はないので、「ごめん」と手を添えてから専用のスプレーを噴射した。

謝罪の念を持つだけで「殺める」ことが正当化されることはないけど、何だか大事な気がするんだ。

400字エッセイ書いています。

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