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息が白くなる寒さの朝

家の中でも息が白くなる寒さの朝、恐る恐る水道栓を上げると水が出ない。水道管凍結防止作戦はまたも失敗したようだ。昨晩用意しておいた水をT-falで沸騰させて熱々のコーヒーを淹れ、水に潜らせて電子レンジで柔らかくした餅に、味噌と熱湯を加えた簡易味噌汁で腹ごしらえする。残りのコーヒーを入れたボトルを携え、外に出た。

町を眺望できる丘を目指し、寒さで固まった足を一歩一歩踏み出す。真冬の冷たさは手袋と靴を簡単にすり抜け、手足を刺すように痛めつける。余りの痛さに耐えられず、手袋を外して息を吹きかけるが、数秒の内に痛みが戻ってしまう。

林道に入った。木々から差し込む朝陽の光が次の一歩を踏み出す勇気を与えてくれ、さびれた空き家が無常の念を想起させ、時折出くわす鹿が孤独感を和らげてくれる。気付かぬうちに、寒さで固まっていた手足はとろけだしていた。

丘の上に着いてコーヒーをすする。生きて活動できる幸せを噛みしめた。

400字エッセイ書いています。

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