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カフェで文学の力を噛み締めた

香ばしい匂いが生暖かい風に乗ってカフェ内に入り込んでいた。観光客を迎える駅前の露店で何かを焼いてるようだった。カフェでは扉一面が開け放されていて、風の穏やかな温もりと大人しくなった蝉の鳴き声が、今年も夏が終わることを教えてくれていた。

すっかり冷めきったコーヒーを口に含み、「緑の天幕」の続きを読んだ。

「一番いいのは、何かいい本を読んでいることです。」
緑の天幕
「文学っていうのは、人間が生き延び、時代と和解するのを助けてくれる唯一のものなんです。」
緑の天幕

シェンゲリ先生の言葉に、これからも文学に触れ続けようと志す勇気をもらった。


地元に住む方々と観光客が入り混じる店内を見渡しながら、ここには多くの人生が存在していることを実感した。一人一人がさまざまな経験をしたうえで、今このカフェで同じ空間を共有していることを考えると自然と笑みがこぼれた。そしてその奇跡に涙がこぼれた。

文学には力があると、今なら心の底から言える気がした。

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