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オープンダイアローグのロールプレイを続けてみての感想

2022年1月から毎週1回、オープンダイアローグのロールプレイ体験を開催しております。

私も、ロールプレイの参加者として、対話を促進する2名のセラピスト(専門家チーム)役や、ネットワークメンバー(当事者とその家族、支援者等)役を体験しております。

最近、専門家チームをやっていて気が付くことは、

問題を解決しなければならない、状況をポジティブな方向にもっていかなければならない、対話的な枠組みから外れてはならないなどの価値観を、専門家チームになるといつのまにか無意識的に背負ってしまうなぁといいうことです。

これからの価値観を背負って、対話を進めて行くと、

解決に向けた提案や助言を言いたくなったり、こちらが焦点を当てたいことに話題を限定して話をふってしまったり、途中で口を挟もうとした人をたしなめようとしたり、早口になってしまったり、相手が話すまで待てないというようなことが起こると感じます。

とにかく、これらの行動は、相手のためというよりは、自分を安心させたいがため、場をコントロールしたいという行動原理によると思います。
これは、自分が焦っていたり、不安になった時に特に起こると私は思います。

こうった状況になると、ネットワークメンバーの皆さんは、圧迫感を感じて、自分が言いたいことが言いづらくなったり、イライラしてきたり、不安になったり、口をつぐんでしまったり、もうこの場にいたくない、次回はもう参加したくないという状況が生まれやすくなると思います。

逆に、問題を解決したい気持ちをいったん脇において、ゆったりと穏やかな語り口で、相手が使った言葉を再現しながら、もう少し話を聴かせて欲しいと言ったり、感じた苦しい気持ちを自分も言葉にしてみたりすると、ネットワークメンバー間の話が促進され、ネットワークメンバー間の関係性が少し変わっていくのを感じます。

とはいえ、特に初回のオープンダイアローグの専門家チームの緊張感は拭いきれないものがあるので、そんな時大事なのは、私としては作法としての対話的な姿勢かと思います。

• 相手に緊張や不安を与えないよう、落ち着いてゆっくり話してみることを意識する。
• 何か解決しないといけない、アドバイスをしないといけないという気持ちはいったん置いて、まずは、相手の気持ちを受け止めながら、話している
ことに関心を持ち、もっと聞いてみたい気持ちや、感じたことを伝え返す。
• ネットワークメンバーの中に、応答されなかった人がいないように意識し、一人一人の声に注意を払い、応答していく。

など、常日頃より練習できる場があるといいなと思います。そしてその練習の場として一番いいのは、初回設定のロールプレイ体験とその振り返りだと思いました。

最近のロールプレイで、ネットワークメンバーの方からのフィードバックで印象に残っていることは、

・専門家チームも悩んでしまい、リフレクティングで「どうしていいかわからない」という言葉を聞いて、返って安心したという感想をもらったこと。
・専門家チームでもどうにもならないなら、自分達家族でなんとかするしかないという気持ちになったという感想をもらったこと。
・専門家チームとしては、だいぶ行き詰ったと感じた場面で、ネットワークメンバーはどう思っていたか聞いたところ、特に行き詰まりは感じていなかったこと。
・あまりリフレクティングの内容は、覚えていなかったり、ごく一部の言葉にしか反応できないが、リフレクティングの間の時間が思いを巡らす貴重な時間だったこと。

などです。

困ったままでいい、いまここでの苦しみや怒りや不安がまずはその場に出されればいい。そして、第三者によって生まれるスペースで、少し思いを巡らせたり、考えてみるスペースが生まれればいいのだと思いました。極力、コントロール性を排し、余計なことをしないことだと思います。

【その他のやってみての気づき】
・参加者が「オープンダイアローグ」を知っているかどうかでも状況が違ってくると思います。専門家に助言を期待して参加している方がいる場合は、
何も進展していない状況に、徐々に不安を覚えいく場合もあると思います。
⇒ネットワークメンバーに、「この場にどんなことを期待しますか?」という最初の質問をすることで、場合によっては、具体的なアドバイスや、どんな選択肢があるのかを提示する必要も出てくると思います。

・話し合いを初めてすぐに、緊迫する雰囲気を感じたり、行き詰まりを感じた場合は、早めに、専門家チームでリフレクティングを入れることで、その状況に第三者の別の視点を挿入することができ、小さな変化や、対話が少し促進する可能性が生まれると感じます。

ということで、オープンダイアローグのロールプレイ体験は、主に初回の場面設定でおこなわれていることもあり、お互いの基本的な信頼関係もない、モノローグが表出しやすい、不確実性に耐え続けながら行う局面の体験ができるので、やっている間は結構辛いのですが、振り返りの時間などは、とても多くの気づきを得られると思っています。

りすにんぐファームでは、4回シリーズで土曜日に「オープンダイアローグのロールプレイ体験」を開催しております。

詳しくはこちら!
https://listening-firm.com/free/manabi2

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