見出し画像

人口減少時代の地域工務店経営

2020年からコロナが始まり、それに伴ってウッドショック・マテリアルショックが起こりました。住宅の販売価格は坪単価で10~15万円ほど上がり住宅市場が冷え込むことが予想されましたが、逆に住宅着工棟数は増え市況は活況を呈しました。コロナ禍であまり大腕を振って言えないと思うのですが、住宅メーカーはじめ工務店においても過去最高クラスの好業績を残した企業は多くあります(住宅着工棟数の増加は下記野村総合研究所のレポートからも見て取れます)。
好業績を残した住宅会社の特徴としては
①デジタルマーケティングをしっかり推進した事
②最低でもZEH以上・耐震等級3の高性能住宅を取り扱っている事
③販売価格の上昇に伴って利益を確保した事

などが言えるでしょう。特にコロナ禍においてはリアルで会う事が限られてしまった事から家づくりをしたい人たちはネット上での情報収集がメインとなりました。結果としてモデルハウスや見学会への来場、直接来社される際には候補をかなり絞り込んだ状態で来ている事が多くなりました。従ってHPの内容の充実やその前にあるSNSなどに動線を引いてデジタルマーケティングに注力している住宅会社の業績が伸びたと考えられます。もちろんそれは一定期間地域内で営業をしてきた事による信用力、家造りそのものの施工力や設計力、そして経営者をはじめ社員の人間性などが前提となって成り立ちます。時間をかけて培ってきたことが時流に乗って花開いた、という事でしょう。これは素晴らしい事だと思います。

しかし、この状況が長く続くとは考えにくいでしょう。むしろコロナ禍が需要の先食いになってしまい、2023年以降の住宅着工は減少すると見るべきです。実際に国土交通省の発表によると足元の注文住宅の着工棟数は減少傾向であり、中長期的には漸減する傾向である事は前述の野村総合研究所のレポートからも見て取れます。
我が国は人口減少トレンドとなっており、少子高齢化が進んでいきます。こんななかで地域工務店はどのような経営をしていけば良いのでしょうか。

まず第一に、地域工務店の強みである局地戦を強化する事。地盤である現在の営業エリアでの足固めをする事が必須と考えます。しかし、着工棟数の減少と共に注文住宅だけではシェアの奪い合いが激化していく事も予想されますので、次善の策としては不動産事業および分譲住宅事業への進出(現営業エリア内での隣接事業への多角化)が良いと考えています。注文住宅事業でエリア拡大をする事も考えられるのですが、地の利もなく経営資源が分散してしまう戦略になりかねず地域工務店の得意な局地戦ではなくなってしまいます。過去何年にもわたって営業をしてきた地域を住宅不動産の総合面で掌握する事で活路を見出す事の方が地域工務店の特徴を活かせると思います。2020年~2022年で急成長をした地域工務店は特に業績揺り戻しや人材不足などが原因となって施工面や営業面での課題が露呈してくると思われますので、足腰を鍛える意味で密度の経済を働かせるほうが良いでしょう。
これと同時並行で行う事として、デジタル化の推進が挙げられます。デジタル化は大きく分けてマーケティングと業務効率化の2つの観点があると思います。限定されたエリアの皆さんに対する認知度向上を図る手段として、人不足を補いノウハウを共有する手段として、ここで先んじて大きめの投資を行う事が必須だと思っています。
しかし、ただ単にデジタル化を進めるという事は手段の目的化につながりかねません。改めて経営理念の明確化・市場調査・中長期の経営計画策定・事業承継の準備・各戦略策定をしたうえで限定されたエリア内での多角化・デジタル化を行えば、地域に密着した地域工務店の良さを最大限に発揮する事ができるでしょう。

1.経営理念の明確化:自社の経営理念(ミッション・ビジョン・バリュー・行動指針・コーポレートスローガンなど)を明確にしましょう。言葉は大切なので、しっかりまとめて次世代に引き継ぐ事が肝要です。
2.市場調査:住宅着工減の割合は全国一律ではありません。各都道府県・各市町村で自社の営業エリアの将来予測を調査しておきましょう。
3.中長期の経営計画策定:フレームワーク分析・財務分析など、現時点の内部環境と外部環境を考え中長期(3~10年)の経営計画を立てましょう。
4.事業承継の準備:事業承継には①親族による承継②社員による承継③M&A④上場⑤廃業など多くの方法がありますので、早期に方針決定をしましょう。また社内ノウハウの承継等も非常に重要です。
5.各戦略の策定:販売戦略・商品戦略・人材戦略・ブランディング戦略・財務戦略などからスキル維持・ポジショニングの明確化などを積極的に行っていく事をお勧めいたします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?