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SDGs時代の問題解決アプローチ 9

今回のキーワードは、「●●しない人ではなく、●●している人の視点へ」


事例11 がん検診受診率向上


今回は、「がん検診受診率向上に向けたPositive Deviance (以下PD)活用」である。

 A区は、全国でも珍しく自前のがん検査施設を有し、国が定めた5つのがんの検査を実施。A区では、受診率を上げるために、無料化に加え、対象者に個別通知・土日開催・託児付きなど様々な工夫を行っていた。しかし、他の自治体と同様に、厚生労働省が目標値として掲げる受診率50%には程遠い状況であった。アンケート調査を実施しても、「時間がない」「健康なので必要性を感じない」「必要な時に医療機関を受診できる」という内容で、事業改善となるヒントが得られないものでした。そこで、「がん検査を受診する住民のなかで、少ないながらでも毎年必ず受診する住民がいる!」に着眼点を替えて、PDの人を探し出した。

今回のPDスケースを特定する条件としては、

-すくなくとも5年連続でがん検診を受診している

-ガンを含め、重篤な病気を経験していない

-家族や友人など、身近にがんを経験した人がいない

-食事に気を付けたり、定期的に運動するなど、特に健康意識が高いわけではない

発見できたPD行動

-家族や友人と日程を調整し、一緒に検診を受け、受診後は一緒にランチするのが恒例行事

-受診後に、会場近くにあるスーパーで買い物をするなど、「ついでの楽しみ」をつくっている

-孫にがん検診を勧められる。実は、その孫に言わせているのが奥さんであることは知っている

-夫婦一緒に受けることで、乳幼児の子供を交換で観ながら受診する

-要介護者と一緒に受診する(検診中は、スタッフが要介護者に付き添う)


その後のアクション

-行政によくある簡素な封筒から濃い水色の目立つ封筒に変更し、かつA区のキャラクターの絵を大きくする(インタビュー結果から通知が来なければ忘れてしまうとの回答が多数)

-子供に言われるとNOと言えない、おじいちゃんのPD行動をヒントに、がん予防授業を小学校に出向いて実施

-未受診の家族を誘う啓発(声掛けやポスター)を強化するとともに、未受診者の受付期間を延長

結果:受診率向上

下記のニュースレターからも同様の内容が読めます。
SDGs時代の問題解決アプローチ (theletter.jp)

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