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中国人になれなかった私が未来のためにできること

昔、『中国人になった私』というエッセイ本を出版した。1991年に青年海外協力隊の日本語教師として中国に赴任。その後、現地で知り合った男性と結婚し7年が過ぎた頃だった。赴任当初は貧しい街並みだった中国が、7年の間に、誰もが予想だにしなかった急激な発展期を迎えていた。
『中国人になった私』を出版した当時、私は実際には中国人になっていなかった。ただ、普通に恋をして結婚し、そこに暮らして、自分の知っている中国を日本に伝えたいと思っていただけだ。タイトルは出版社から提案され、私は戸惑いながら受け入れた。中国人になる覚悟で嫁いだとはいえるのだが、24年たった今も、私は中国人になっておらず、日本にいる。

今年は日中国交正常化50年を迎える。内閣府の昨年の調査によると、中国との関係について「良好だと思わない」との回答が85%に上ったという。「中国に親しみを感じない」と答えた者が79%だ。
ちなみに24年前、私がエッセイ本を出版した年は「中国に親しみを感じる」と答えた者が49%だった。

「親しみを感じない」とは、どういうことなのか。
テレビのニュースから流れるのは、赤い横断幕に見られるプロパガンダの数々、香港での民主主義運動を押さえつける警察の姿、主席の笑わない顔写真。新型コロナウィルスの蔓延でイメージは最悪だろう。親しみを感じる要素に触れるチャンスがない。

印象操作ばかりだとは言わないが、メディアの影響力は大きい。
それでも両国の関係は改善されるべきだと考える人は多い。隣の国だもの、異なる歴史、価値観、文化もまずは理解しあう姿勢が大切だということは皆わかっている。でも、聞こえてくるのは悪いニュースばかり。色眼鏡をかけずに、理解することはできないのだろうか。

私は私が知っている中国を書き残そう。中国の人々の優しさも伝えよう。「人権問題が」とあなたは言うかもしれない。メディアを鵜呑みにしないで、自分の眼で見てほしい。聞く時は、一方だけではなく、多方からの意見を聞こう。SNSでは難しいかな。どこの国にも問題はある。好き嫌いを越えて、隣あう国どうし、偏見を持たず分かり合う努力をしたい。

紛争はあってはならない。「親しみを感じない」人々の感情は戦争に利用される。
私は私が生きていた中国を日本と中国の若者に伝えたい。それが、中国人になれなかった私が未来のためにできる小さなこと。急がなきゃ。




#未来のためにできること

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