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Day 12. 100%の解決策がほしい

昨日のエネルギーのお話に続いて、今日は再生可能エネルギーについてのお話。

再生可能エネルギーというのは、自然界に常に存在している太陽光や風力、水力、地熱などのエネルギーを指す。昨日の石油、石炭、天然ガスや原子力との違いはエネルギー源が実質限られているか否かというポイントだ。こうした再生可能エネルギーは、新しい時代のエネルギーだとかクリーンエネルギーだとか喧伝されて注目されている。さて、じっさいのところどうなんでしょうか。

=クリーンエネルギーとは限らない

"Living in the Environment"のテキストでは6つの再生可能エネルギーが紹介されていた。

再生可能エネルギーの種類
1. 太陽光
2. 風力
3. 地熱
4. バイオマス
5. 水力
6. 水素

あまり馴染みのないメンツも混じっているね。
ちなみに2019年の日本の電力供給量のうち再生可能エネルギーの割合は約17%だった。つまり8割以上は天然ガス、石炭、石油、原子力由来が占めている。再生可能エネルギーの内訳としては水力発電が7.6%、太陽光発電が7.2%となり、バイオマス発電が1.2%、風力発電が0.9%となっている。上にある「地熱」と「水素」はまだ0%扱いだ。
(出典: 環境エネルギー政策研究所

水力発電は再生可能エネルギーに含まれるかというのはよく議論の的になっている。というのは、ダム建設時の社会・環境コストが大きいからだ。とはいえ、他の再エネだって実は一丁前に社会・環境コストがかかる。
例えば太陽光パネルはクォーツや石炭から作られるし、大規模にパネルを敷く場合は山の一部や土地を切り開いている。パネルは数十年でダメになる一方で複合物なのでリサイクルがとても難しい。

再生不可能エネルギーに対して再エネは正義のヒーローみたいに語られがちだけど、決してクリーンエネルギーであるわけではない。そのことは別に隠蔽されてるわけじゃない。だけど、企業の広告やイメージで覆い隠されがちな事実だ。

知りすぎると、落ち込む

マイケル・ムーア監督による"Planet of the Humans"というドキュメンタリー映画が、無料で公開されている。「環境に良い」とされている再生エネルギーをぶった切っている映画だ。まだ途中までしか観ていないけど、環境問題の根深さに落ち込みたい人にはうってつけだ。

もう一つ、さらに疑心暗鬼に陥りたい人におすすめなのは"The Green Lie"という現在公開中の映画だ。これまた「環境に良い」と見せかけている大企業とそれを信じる人たちの横面を張り倒している。元々はこの3月から劇場公開予定だったけど、今は「仮設の映画館」で観られる。

この手のドキュメンタリーの良いところは、新しい情報と視点を示し、同じ景色を違うように見せてくれるところ。例えばアップル社の工場運営のエネルギーを全て自然エネルギーにしたという発表は記憶に新しいけど、太陽光パネルが敷設されたのはかつて緑で覆われていた地域だった、とか。

一方であまり腑に落ちないのは、善悪二元論的に正義と悪をわかりやすく分けて、敵をあぶり出しているところ。ここでいう敵とは行き過ぎた資本主義経済でありグローバル企業にあたる。善に与するのは、搾取される側の労働者や居場所を失った先住民たちだ。そして映画を観る人もついつい「善」サイドの気分になってくる。

でもじっさい、そんな簡単に善悪が別れるだろうか。わたしたちも大企業の提供する商品やサービスを便利だと言いながら(もしくは便利だと気づかされる間も無く)活用しているし、現代の生活に電気や熱と言ったエネルギーは欠かせない存在だ。「善」と「悪」は本当はもっと境目が曖昧な、共同体みたいなものなのだと思う。誰かを責めれば解決する話じゃないのだ。

今後の見通しと、これからのエネルギー

社会・環境課題を数多く抱えている再生可能エネルギーではあるけれど、従来のエネルギーよりもCO2排出量を抑えられるという点では、引き続き導入を真剣に考えていかなきゃいけない。気候変動は待ってくれない。
研究開発資金や補助金、減税などの形で政府の支援を増やすなどすれば、再生可能エネルギーは2025年までに世界の電力の20%、2050年までには50%を賄うことができるといわれている。

これからはエネルギー効率をどんどん上げていくことと、破壊的なエネルギーからよりベターなエネルギーにシフトしていくことが概ねの道筋になるだろう。
「よりベター」というのが結局の落とし所で、残念ながらどこにも100%の解決策は落ちていない。イライラしたり落ち込んだり無力感に襲われたりするけど、今できることを着実に積み上げていく他にやりようがない。そしてその時は、敵を見つけて糾弾するだけじゃなくて、ダメなところは指摘しつつも協力しあってより良い方向を目指していきたいところ。まあ、地球が2つとか3つとかあれば、それぞれ好きにやれば良いんだけどさ。1つしかないのでね。

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