【疑問2】 聖別・聖職位
「聖職者」の定義とはなんでしょうか。
カトリック系では「聖職者」と表記できますが、プロテスタント系では違います。
プロテスタント教徒である佐藤優氏の著書『神学の技法:キリスト教は役に立つ』によると「教会奉仕者」が正しい表記となります。
神父と牧師で例にたとえると。
これは差別ではなく教義の違いによるもの。
一般のプロテスタントは「聖別された聖職者」に否定的だからです。
■聖別とは
文字の通りなのですが、聖なるもの(人・物)を世俗から切り離し「聖なる別格の存在」として扱う行為になります。つまりカトリックは聖別された聖職者を認める立場にあるのです。
チャールズ国王の戴冠式は聖別式でした。私の物語に登場する司祭アルフレッドも、聖別された聖職者です。キリスト教会で「聖職者」という表記ができるのは、聖職位を認める宗派のみになります。
■聖職位について
「聖職位」は主に三つに分けられます。
カトリック教会は【司教・司祭・助祭】になります。
英国国教会では、【主教・司祭・執事】です。
【聖職位】【役職名】【敬称】は宗派ごとに異なります。
一般のプロテスタント系は【聖職位】に否定的です。これは万人が司祭とする説「万人祭司説」によるものです。
■カトリック教会の場合
聖職位【司祭】――Priest
役職【司祭】――Priest
敬称【神父】――Father
■英国国教会の場合
聖職位【司祭】――Priest
役職【牧師】――Rector・Vicar
敬称【司祭・先生】が一般的(牧師・神父とも呼ばれる)
■プロテスタント教会
資格【教師】
役職【牧師】―― Pastor・Reverend
敬称【牧師・先生】が一般的
日本だと「牧師」でまとめられていますが、同じプロテスタントでも、その役職や地位、宗派に因ってRector・Vicar(国教会) Pastor(一般のプロテスタント教会)と分かれており、日本語訳が「ゆるいなー」と思い、書き手に新たな悩みの種を与えたというのはここだけの話。
英国国教会の【司祭】は、一般のプロテスタント教会の「牧師」と全く異なる存在なのです。例えば聖公会司祭の著書のあとがきを拝見すると、
「司祭○○」
「教会牧師司祭○○」
と記されています。聖職位の「司祭」を自分の名と必ず併記するようです。
ちなみに「牧師」の表記は無かったり、抜けていたりします。役職名だからかもしれません。後々、牧師でなくなっても、司祭の聖職位は変わらないからでしょう。
この「司祭であり(牧師である)」という独特のスタイルは、聖職位に異を唱える一般のプロテスタント系と明らかに違う点です。
■キャライラスト:CHARAT様
https://charat.me/
■背景素材:イラストAC様より
https://www.ac-illust.com
■参考文献
『今さら聞けない!? キリスト教:聖公会の歴史と教理編:ウィリアムス神学館叢書Ⅴ』
岩城聰著/教文館/二〇二二年五月
『今さら聞けない!? キリスト教:聖書・聖書朗読・説教編 :ウイリアムス神学館叢書 Ⅱ』
黒田裕著/教文館/二〇一八年七月
『ふしぎなイギリス』
笠原敏彦著/講談社/二〇一五年五月
『神学の技法:キリスト教や役に立つ』
佐藤優著/平凡社/二〇一八年五月
『神学の思考:キリスト教とは何か』
佐藤優著/平凡社/二〇一五年一月
『聖公会が大切にしてきたもの』
西原廉太著/教文館/二〇一六年十二月
『芸術の都:ロンドン大図鑑:英国文化遺産と建築・インテリア・デザイン』
フィリップ・デイヴィース著/デレク・ケンダル写真/加藤耕一監訳/二〇一七年六月
『聖公会物語――英国国教会から世界へ――』
マーク・チャップマン著・岩城聰監訳/かんよう出版/二〇一三年十月
『現代世界の陛下たち――デモクラシーと王室・皇室――』
水島治郎・君塚直隆著/ミネルヴァ書房/二〇一八年九月
■WEB参考記事
ビジュアル・ジャーナリズム・チーム/BBCニュース/2023年5月1日
【図解】 イギリス国王チャールズ3世の戴冠式 どこでどのように
https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-65382456
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?