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バンブーポテト戦役-5話くらい-

(これまでのあらすじ:ついに始まったバンブーエルフ集落とポテサラエルフ集落の戦争。バンブーエルフ側は騎兵七体という万全の布陣、対してポテサラエルフ側はただ一人……!)

「敗走しただと!?」バンブーの軍師は叫び、拳を戦略机に叩きつける。

「間違いありません。小隊長ハオズーからは、一太刀も浴びせられなかったとの報告が上がっております」副官バンブーエルフは動じずに答える。

「相手は弱小集落のはずだ、何があったか詳細を聞きたい」「わかりました」

◆竹◆芋◆

彼我の距離、大凡真竹二本。バンブー側の戦術としては、精強なパンダ騎兵を数名ぶつけ、その威を知らしめ敵の意気を削ぐ狙いがあった。だが、相手を見て拍子抜けした。「なんだァ? 我々騎兵隊の相手は小娘一匹かァ?」敵陣に立つは、木製の杵を持った小柄なポテサラエルフただ一人。

「お前も小娘だろう、私にとっては」「うるせェ」隊員は小言を小突きで返す。そして数瞬後、ポテサラのやり口に小隊長は憤りを覚えた。わざわざ生贄のようなマネをしやがるな、と。

「あー、分かっていると思うが。これから我々は、君を殺すことになるだろう。この戦力差だから、できれば抵抗を止め、捕虜になっては頂けないだろうか。そうすれば戦闘は起こさず、命を保証する」

「青竹食べられないから死ぬゆ。さっさと来いゆ」ポテサラエルフは手招きをした。捕虜にはならぬ、そして命を失う覚悟あり、か。「合図を掛けたら一斉にかかれ。慈悲は持つな」

「三、二、一……」

「おしまいゆ」

「アイ……なんだと!?」バンブーエルフ騎兵隊は驚愕した。踏みしめ、加速度を受け取るべき地面が、消えている。違う、潰した芋のようになり、まるで用をなさぬのだ。「隊長! 騎獣パンダが地面に埋まりバランスが……!」「降り……いや、後ろに飛べ! 何かがおかしい!」「アイアイー!」「後ろも嵐の後みたいにぐずぐずになってます!」「嘘だろ!?」「隊長! 武器も溶けています! 鎧も!」「お前のも溶けてる! 状況が悪すぎる! 撤退だ!」「アイー!」

 ほうぼうの体で地面を泳ぎ、逃げ出す部下たち。何をされたのかも分からなかった。追撃を警戒して振り返ると、ポテサラの魔術師の言葉が聞こえた。

「命は取らぬゆ。ハムも待つゆ」快勝したはずの彼女の顔に笑みはなく……何か、より遠くのものを見つめていたようだった。

◆竹◆芋◆

「結果として。損失は、捕まえそこねたパンダが5頭。すべての竹装備。しかし人的被害はなし」「分からんな。戦争では首級こそが誇るものではないのか?」「文化が違いますから……。もしくは、首を落とせるような装備がなかったとか」「いくらなんでもそれはなあ。しかし思えば、ポテサラエルフ集落のことを何も知らんな……」「やや危険ですが、斥候でも送ります?」「……そうしよう」「アイー」

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