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【西武ライオンズ 今日の見どころ 特別編】球団史上3度目のシーズン途中の監督交代 限られる過去の成功例

●伊原監督時代の2014年と ほぼ変わらない今年の成績 

松井稼頭央監督の休養に伴い、事実上シーズン途中での「監督交代」となった。シーズン途中での「監督交代」はライオンズでは珍しく、1969年、2014年に続いて、今回が3度目となる。

69年は就任8年目だった中西太選手兼任監督が、10月8日の試合を最後に退任。鬼頭政一コーチが代理監督に就き、残り3試合の指揮を執った。

この年は5月23日から6月13日までの11試合も、成績不振と体調面の問題を理由に中西兼任監督が一時休養。鬼頭コーチが代理監督を務めたことがあったのだが、このシーズン終盤の交代劇に関しては、10月8日にいわゆる「黒い霧事件」が発覚。その影響があったとも言われている。

14年のケースは、11年ぶり2度目の就任となった伊原春樹監督が、開幕からの成績低迷に「試行錯誤してやってきたが、どうしても最下位から抜け出せなかった。ここは1度監督が引いたほうが、良い風が吹くのではないか」と、休養を申し出て、6月4日の横浜DeNAベイスターズ戦の終了後に発表。翌日から田邊徳雄1軍打撃コーチが、代行監督を務めることになった。

以前にも指摘したように、この10年前と今年の成績は似通っており、やはり両リーグ最速で30敗に到達。伊原監督が休養した53試合を終えた時点で、20勝33敗の借金13。勝率.377の最下位だった。

●10年前は途中加入のメヒアが本塁打王の活躍

監督交代は手段に過ぎず、重要なのは交代したあとの結果だ。14年は最終的に63勝77敗4分の5位で、シーズンを終了。劇的な効果を生み出すまでには至らなかったが、田邊代行監督になって以降、43勝44敗4分と5割近い勝率を残している。

監督交代の前と後で、最も大きく変わったのは攻撃面で、1試合平均の得点が0.5点以上アップした。なかでも本塁打が1試合平均0.53本から1.07本へと倍増したのだが、その最大の要因はメヒアの加入だ。

今シーズン同様、この14年シーズンも、レイノルズ、ボウデン、ランサムといった新外国人選手がことごとく機能せず。野手のランサムに関しては、背中の張りで出遅れていた中村剛也に代わって、サードの開幕スタメンを任されたものの、本塁打は1本。打率も1割台に落ち込み、5月初めにはファーム落ちした。

そんななかフロントは、メヒアを獲得。期待の新戦力は、5月15日の来日デビュー戦で、いきなり初打席初本塁打。シーズン34本塁打して、中村と本塁打王を分け合うほどの活躍をすることになる。

もちろんメヒアを日本野球に順応させるため、首脳陣のさまざまな尽力があったのだろうが、極論を言ってしまえば、成績がそれなりに持ち直したのは、補強の成果だった。

もちろんアギラー、コルデロの復調でも構わないが、はたして、いまのライオンズに、そういったことが期待できるのだろうか。

●監督交代の成功例には03年ドラゴンズ、08年バファローズなど

近年のシーズン途中での監督交代の成功例には、03年の中日ドラゴンズ、08年オリックスバファローズがあげられる。

03年のセ・リーグは阪神タイガースが独走するなか、9月8日からドラゴンズは佐々木恭介ヘッド兼打撃コーチが監督代行に就任。タイガース相手に同一カード3連勝するなど、監督交代の時点で5位だったチームを2位へと押し上げた。

08年のバファローズは、大石大二郎ヘッド兼内野守備・走塁コーチが監督代行に就くと、積極的に若手選手を起用、2年目の小松聖が15勝をあげて新人王に輝いた。ローズ、カブレラ両主砲の活躍もあり、最下位だったチームは2位へと躍進。クライマックスシリーズに進出した。

10年の東京ヤクルトスワローズは最終順位こそ4位に終わったが、借金19あったチームは、監督交代を機に貯金4まで巻き返し、翌年のリーグ優勝へつながる礎を築いた。またバファローズの中嶋聡監督のように、監督交代の翌年から大きく花が開いたケースもある。

とはいえ、大半のケースは監督が代わっても、Bクラスのままシーズンを終えているのが現実。チームの低迷には、フロントの資金力、編成、スカウティング、育成環境…など、要因は多岐に渡るはずで、監督を代えただけで、弱い球団に魔法は掛からない。

●この先の戦い次第では 長期暗黒時代の突入も…

今回の松井稼頭央監督の交代は、18年のライオンズ復帰、引退後の2軍監督就任、1軍ヘッドコーチを経験させてと、順序立てて進めてきた計画の頓挫を意味する。この先の戦いによっては、監督代行を兼任することになった渡辺久信GMの進退も問われかねない。

もちろん、この交代が正解になるのか、不正解になるのかは、今後の結果で変わってくる。ただ、正解にできなかったときのダメージは、測り知れないほど甚大になるだろう。


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