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犬と猫の歯周病②

歯周病①では、歯周病がどんな病気なのかを取り上げました。
今回は、歯周病の原因となる歯垢(しこう)歯石(しせき)についてのお話です。

■歯垢って?

歯垢は、食べかすなどをエサにして増えた細菌のかたまりです。
この菌の中に、歯周病の原因となる歯周病菌がいます。
歯垢はプラークとも呼ばれます。

歯垢の形成のはじめには、まず唾液中成分糖タンパク質が歯に付着し、ぺリクルという層を形成します。この粘着性のある糖タンパク質に、口の中の細菌が集まってきて増えていきます。

その結果、歯の表面に初期の歯垢が形成されます。
細菌がさらに増え、互いにくっつきあうことで歯垢は大きく成長していきます。

歯垢は細菌の塊がどんどん成熟していくと、バイオフィルムという要塞(ようさい)を作ります。

歯垢は、しっかりと付着しているので歯ブラシ歯みがきシートなどで物理的にこすり落とすことで除去します。

図35

■歯石って?

歯石とは、唾液の中に含まれているカルシウムリン酸が歯垢の中に少しずつたまり、細菌の死骸と一緒に石のように固くなった(石灰化した)ものをいいます。

歯石の中の細菌は死んでいるため、炎症には直接かかわりません。
しかし、歯石がつくと歯石の表面がデコボコになっているため、新たな歯垢がつきやすくなります。
そしてその歯垢が再石灰化することを繰り返すことで、歯石が成長し歯の周りの組織に悪い影響を与えてしまいます。

図10


歯石は、とてもかたいので、歯ブラシや歯みがきシートではこすり落とすことができません。落とすためには、動物病院で専用の器具を使った処置(スケーリング等)を行う必要があります。

■犬や猫は歯石がたまりやすい!?

ヒトでは歯垢が歯石に変わるまで約25日といわれていますが、犬では約3日~5日猫では約1週間といわれています。
この差は、次のように口腔環境の違いが関係しています。

ヒトの唾液は弱酸性~中性(pH6~7)ですが、犬猫の唾液は弱アルカリ性(pH7.5~9)です。
弱アルカリ性であることで、唾液中に溶けているカルシウムやリン酸が石灰化しやすく、歯石がたまりやすいのです。

つまり、犬ではヒトの5倍、猫ではヒトの3倍も早く歯垢が歯石に変わってしまうのです。

図34


犬猫はヒトよりも歯石になるまでの期間が短いので、犬猫の歯みがきでは「歯垢が歯石に変わる前に歯みがきをして、歯垢を落とすこと」がポイントになります。

次回は、この歯垢と歯石がどのように歯周病を進行させてしまうのかを解説していきます。

「犬と猫の歯周病③」へ続く…

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