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SM小説「路上の恋文」④本性

暗い部屋

コンクリートの打ちっ放しで窓は一つもなく、ドアが一つだけ。ドア横の照明が仄かに灯っているだけだ。ん?!手足を拘束されている、身動きできない・・・薄っすらと麻美の意識が戻ってきた。

「やっと目が覚めましたか?3時間ほど眠っていました。その間に麻美さんの持ち物チェックをさせてもらいましたよ。ほら?」

麻美のスマホを得意気に掲げて見せた。そして、麻美のスマホを淳司の指紋でロック解除して見せた。

「えっどうして?!」

「麻美さんが眠っている間に麻美さんの指でロック解除してから、パスワードや指紋を変更しました。麻美さんの友達も分かったし、麻美さんの素敵な写真も撮ったんですよ。」

そう言うと、敦司は麻美の真ん前まで来て、顔のすぐ前にスマホをぶら下げて画面を見せた。その画面には全裸の麻美が眠ったままで敦司に両脚を抱えて持ち上げられていた。麻美の乳房や陰部が全て映し出されていた。麻美は顔を背けて、敦司への嫌悪で唇を噛んだ。・・・この画像だけではない。スマホには麻美のプライベートな情報が全てあると言っても過言ではない。それら全てを見ず知らずの淳司に握られてしまったことになる。

脅迫と反抗

「これから麻美さんは私の恋人になってもらいます。今、土曜日の十三時なので週末はまだまだこれからですよ。」

即座に麻美は強い口調で答えた。

「一体何を言っているんですか?気持ち悪い!あなたの恋人なんかになるつもりは一切ありません!手紙を読んだことは謝りますし、このことは誰にも言いませんから今すぐ帰してください。スマホも返してください!いい加減にしてください!」

「麻美さん、自分の置かれている状況を分かっていますか?もっと賢い女性だと思っていました。少しがっかりしましたよ。先ほどの写真を麻美さんの友達にLINEで送ってもいいんですよ?」

麻美は再度罵倒しようとしたが、全裸のまま木のロッキングチェアに座らされ手と足を固定されている状況を考えると、ただ黙ることしかできなかった。続けて、敦司が言う。

「まだ分かってないんですか?最初から、麻美さん、あなたを狙っていたのですよ。私があなたの家の近くに封筒を置いたんです、あなたが通る直前にね。あなたはまんまとその罠にかかった。罠にかかった獲物の運命を知っていますか?飼われて愛玩を受け入れるか、野生のまま殺処分されるかのどちらかです。」

全てはこの目の前の男が仕組んだ罠だったのだ。麻美は愚かな自分を呪った。しかし、敦司は麻美にはまるで身に覚えのない男だった。そもそも、男と女の関係になったのは隼人しかいないのだ。どこで接点があったのか・・・どうしても思い浮かばなかった。麻美は敦司を睨み付けることしかできなかった。

「そんな反抗的な態度でいると麻美さんの魅力が半減しますよ。自分がどうすべきかちゃんと考えといてください。それと、あまり僕を怒らせないでくださいね。」

そう言うと、淳司はどこからか持ってきたバケツを麻美の頭の上でひっくり返してバケツ一杯の水を浴びせた。そのバケツには水だけでなく氷も入っていた。

「ひぃっっ!やめてください。なんてことするんですか!!!」

麻美は咄嗟にのけ反ろうとしたが、ロッキングチェアが倒れそうになったのですぐに前かがみになった。椅子が前後に大きく揺れた。そして、淳司は何も言わずに麻袋を麻美の頭に被せた。その瞬間、麻美は初めて恐怖を感じたのだった。

バタン!ガチャッ

ドアの閉まる音が響き、静寂に包まれた。麻美は恐怖と寒さで一言も発しないままじっとしていた。昼間の太陽の下ならば耐えられたかも知れないが、太陽の光が届かない部屋で濡れた身体を拭うこともできない麻美は凍てつく寒さに身体を小刻みに震わせた。寒さは一向に収まらず、唇はどんどん紫色になり身体の震えはさらに大きくなった。しかも、視界は遮られこの状況がいつまで続くのかも分からない。身動きできず、周りを見ることもできない麻美はただただ時間が過ぎるのを待つことしかできなかった。…やがて、体力と気力も尽き、麻美の中で何かが壊れた。椅子に座ったまま、気を失って失禁してしまうのだった。

<続く>

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