世界のアソビ大全51を良作だと評価してはいけない
Switchで2020/6/5に発売された「世界のアソビ大全51」、発売から2ヶ月が経ち、プレイ時間も50時間を超えたのでいい加減レビューみたいなものを書き殴ろうと思う。
結論から言えばクソゲーだ。
いや、クソゲーは言い過ぎた。このゲームは致命的なバグやグリッチはない。
ただ、この4000円のゲームを人におすすめするかと言われたら答えはNOだ。はっきりとNOだ。
なぜか?
前作「だれでもアソビ大全」と比較し、ゲームとして内容があまりに簡素で薄味だからだ。
このゲームのダメなところを1つずつ上げていこう。
1.マルチプレイ人数があまりにも少ない
まずこのゲームには前作がある。DSの『だれでもアソビ大全』だ。
こちらは良作と名高い。トランプゲームを中心にカードゲームやテーブルゲームを40種ほど収録している。
特筆すべきは1つのソフトで最大8人のローカル対戦が可能な点だ。
また1人プレイであってもスタンプラリーというやりこみ要素がプレイヤーに遊ぶ動機を与えてくれる。
さて、「世界のアソビ大全51」を見てみよう。
このゲーム、普通に考えれば家族や友達と遊ぶために買う人が多いだろう。
今のコロナ禍を考えれば、オンライン対戦で皆遊びたいはずだ。世のゲーム実況者たちも同じようなことを考えるだろう。
だがこのゲーム、オンライン対戦で4人プレイが可能なゲームはたったの”8”つだ。51+1(ピアノ)が収録されていながらたったの8つしかない。ラインナップは以下の通りだ。
・ドミノ
・ルドー
・麻雀
・ラストカード
・ブラックジャック
・テキサスポーカー
・大富豪
・7並べ
以上。たったこれだけだ。
ラストカードは実質UNOの劣化版だし、腰を下ろしてじっくり遊ぶタイプのゲームである麻雀に至っては、天鳳にじゃんたまなど、その他いくらでも無料で遊べるハイクオリティなサービスがあるので、わざわざアソビ大全で遊ぶ理由がまるでない。
ゲーム実況者たちがコラボであまりにも遊ぶゲームがなく、麻雀やべらぼうに時間のかかるルドーとかいう歴史があるだけの時間の浪費としか言えない苦行ゲーで尺を稼いでいるのを見て何も思わないだろうか?
DSの8人対戦はやりすぎ(褒め言葉)だったにしても、4人対戦のゲームが10にも満たないのはユーザーを舐めているとしか思えない。
ぶたのしっぽ、ゴルフ、ボウリング、ダーツ、VSタンク、協力タンク、このあたりは4人で遊べてもおかしくないはずなのに2人用だったりそもそもオンラインで遊べない。
2.ゲームのチョイスが悪すぎる
51つのゲームがあるが、前作「だれでもアソビ大全」ほど奥深いゲームは収録されていない。
原因は「はじめてのWii」と「Wiiスポーツ」の要素を中途半端に取り込もうとしたせいだ。
それぞれのゲームからアソビ大全に入れられたゲームは以下の通り。
「はじめてのWii」から「世界のアソビ大全51」
・ホッケー → エアホッケー
・つり → フィッシング
・タンク! → VSタンク
・タンク! → 協力タンク
・シューティング → 的あて
「Wiiスポーツ」から
・テニス → トイテニス
・ボクシング → トイボクシング
・ベースボール → トイベースボール
これ以外にもトイサッカーやスロットカーなど、アクション性の高いゲームが12個ほど並んでいる。
そしてこれらのゲームすべてに言えるのが、51あるゲームの1つとして収録されるにあたり、かなり簡略化されている点だ。
簡略化の結果、最低限の要素と大味のゲームバランスにより、奥深さのまるでないミニゲームと化している。2〜3回対戦したら十分な程度の内容なのだ。
そこそこ長くこのゲームで遊ぶとなった場合、これらのゲームは実質死んでいる。
あとなんだ6ボールパズルって。なんでオリジナルの落ちものパズルが収録されてるんだ。
直線や三角か六角で消した場合、大技が出る。これを先に出した方が勝ち確定でギリギリの戦いなんてものはない。すぐに終わる。
そもそもリアルタイムでアクション性のある対戦ゲームというのがアソビ大全というものに合っていない。前作ではスピードくらいしかなかった。ボードゲーム、カードゲームなら基本的にターン性だろう。異物を持ち込まないでほしい。
他にはナインメンズモリスやウサギと猟犬のような、ハメた者勝ちや絶対に勝てる方法を知ってれば勝ち、でなければ確定負けのようなゲームがチョイスされてるのも問題だ。ローマといい、フランスといい、ルドーのイギリス(インド)といい、もうちょっとマシなゲームはないのか……。
3.致命的なトランプゲーム不足
これは先の項目の続きみたいなものだ。
今作、トランプゲームの少なさがあまりにも致命的である。
前作では20ものトランプゲームが収録されていた。しかし、今作はたったの9つ。そのうち3つが「戦争」「たこやき」「ぶたのしっぽ」という運要素が非常に強いゲームとなっている。
確かに、前作に収録されていたトランプゲームの多くは小学生以下の子供には難しい大人向けのルールだ。親と遊ぶとなった時に、勝てない以前に遊び方がわからない。
だからといって完全な運ゲーが9つの内3つを埋めているのはおかしい。しかも3つとも2人プレイまでにしか対応していない。
前作ではカードを引くだけの運ゲーは「ぼうずめくり」が担っていた。これは8人プレイまでに対応し、百人一首を使うのでカード枚数も100枚。盛り上がる前に終わってしまうなんてことはなく、ぼうずを引いたら場に捨てる他に、姫を引いたら場のカードを全取りできるなど、同じ運ゲーでもよりバラエティに富んでいた。
そもそも子供も楽しめるルールが簡単なトランプゲームといえば「ばばぬき」があるだろうに、なぜそれを収録せずにこれらのゲーム収録されているのかもわからない。「ダウト」などもルールが簡単ながら盛り上がるゲームだ。なぜなくした?「ラストカード」がこれの代わりとでも言うのか? ふざけるな、UNOの方が5倍面白い。
4.貧弱なゲーム内容
例えば大富豪を例に出してみよう。
5ラウンド制と10ラウンド制で遊べるが、あろうことか勝敗は最後の1ラウンドの結果だけで決まる。
たとえ9ラウンドまで大富豪で勝ち続けても、10ラウンドで都落ちすれば4位である。なぜ? 最終ラウンドだけで決まるなら1ラウンドだけやればいいじゃないか。ポイント制でないならなぜ5ラウンドや10ラウンドもやらせるのか? 時間の無駄ではないか? だったら1ラウンド制は何故無い?
それだけではない。
今作の大富豪で設定できるルールは「8切り」「スペード3返し」「しばり」「都落ち」で、これは大富豪の公式ルールにあるものだ。しかし公式ルールにあるあがり禁止札に関しては無い。なんと中途半端な。
大富豪は特にローカルルールが多いゲームだが、その中でも特に人気のあるルールの「11バック」がない。これの有無で貧民、大貧民のチャンスの数が大きく変わる。
7ならべもそうだ。ジョーカーなしの7ならべとはどういうことだ? ワンチャンもない。
トイ系も貧しい内容だ。
ゴルフは前作のおはじきゴルフが18ホールあったのに対し、半分の9ホール。
スロットカーは3コースのみ。VSタンク、協力タンクもたったの3ステージ。操作を覚えた頃にはすべてのステージをクリアしてしまい、やることがなくなる。
5.無くなったゲーム達
この項目は個人的に前作で面白ったのに、今作で無くなってしまったゲームのうち特に残念だと思うものをあげる。
トランプゲームは多すぎるので、それ以外の今まで触れていないゲームからの紹介。
・軍人将棋
意外と遊べる環境が少ない貴重なゲーム。相手のコマが見えない、コマの強さや動きがバラエティに富むなど、将棋の名はついているがまるで別のゲームだ。
将棋がわからない、将棋で勝てないという場合でも、いい勝負ができるのが良いところだった。
・はさみ将棋
将棋の簡便な遊び方といえば、まず出てくるのがはさみ将棋だろう。なぜか無くなって、かわりに5五将棋が収録されている。
だから将棋がわからない人向けにはさみ将棋や軍人将棋があるんでしょうが。なんで将棋と将棋を収録するんだ。
・すごろく
サイコロを振って進む、なんとも簡単で子供でも遊べる非常に一般的なゲームである。ショートカットや進むマス戻るマスなど、すごろくらしいギミックも実装されており、十分に楽しめた。少なくともルドーのようにゲーム未満の苦行ではない。
・バランスゲーム
シーソーの上に順番にハコを置いていき、崩した人の負け。シンプルながら複数人で盛り上がれる緊張感のあるゲーム。
任天堂的にはDTB(動物タワーバトル)でもやってろということだろうか。まあDTB無料だもんな。
・ソーダゲーム
一番シンプルなゲーム。順番にソーダを振って、噴射させてしまった人の負け。子供でも楽しめるゲームの筆頭だが、まあこれは1-2-Switchで収録されてたし無くなったのも仕方ないか。
・シーソーゲーム
全員同じ決められた手持ちの重りを天秤に置いていき、自分の方に倒したら勝ち。勝った回数の多い人の優勝。ポーカーのような駆け引きがあるビジュアル的にもドキドキする楽しいゲーム。
・ことばさがし
隠れている言葉を探す穴埋めゲーム。知育にもなるしどうしてなくしちゃったかなぁ。任天堂的にはもじぴったんを買えということだろうか。
6.テンポの悪さ
今作はテンポを悪くしている部分が2つ存在する。
・ルール説明
ゲームを選択する度に必ずルール説明が挿入される。毎回スキップを押さねばならず手間。1度見たら挿入しないといった設定は存在しない。(そもそもこのゲームにオプションはない)
・処理落ち
おそらくだが、サイコロを中心にコマの動きなどで物理演算を採用している。そして、これらの動きはマルチプレイでも全て同期されているらしい。
結果、オンライン対戦中に急に重くなることが多発する。おそらく物理演算の同期がボトルネックになっているのではないか?
7.ゲームを盛り上げる要素
前作には細やかながらゲームを盛り上げる要素がいくつもあったが、本作にはない。
たとえば、マルチプレイ中にチャットを送れる機能。
タッチペンで文字や絵を描いて送ることができた。ローカル通信対戦しかない「だれでもアソビ大全」でも、しょうもないメッセージや絵を送り合ったりして楽しむことができたし、なにより他人のターンの間、待ち時間を潰せた。
たとえば、BGMチェンジ。
あと1枚で上がりのような、いわゆるリーチの人が出るとBGMがアップテンポの曲に切り替わり、ゲームを盛り上げた。
これ以外には、本来あるべき野良のオンライン対戦のレート制がない。アソビガイド機能の存在意味が不明。音量の設定項目がない。などが今作の不満点に挙げられる。
最後になるが、僅かな今作の良い点をあげる。
・効果音が良い
素朴ながら気持ちの良い効果音で、なかなかリアリティがある。BGMの方はパッとしないがサウンドクリエイターは非常に優秀だ。
・一覧
全てのゲームが一覧で見れる。(ただ、逆にいえば前作の様にカテゴリ分けされていない)
・ルーレット機能
どのゲームを遊ぶかランダムで選べる。
・マンカラ、ヨット、ヒット&ブロー、キャロムの追加
今作で新規収録された中でもめっちゃ面白いゲーム達。
【総評】
UIデザインやグラフィック、モーション、効果音などパッと見の見た目や最初の手触りが良い部分は良くできている反面、ゲーム内容が簡素で疎かになっている。
このゲームに★5つを付けている人はよく考え直して欲しい。任天堂のゲームだから良いものだ、信用に足ると簡単に思ってしまっていないか?
このゲームは、浅い部分は非常に良く感じられるように作られている。
だが、これは”ゲーム”だ。ゲームの本質はゲームがもたらしてくれるエンターテインメントの質にある。
その点でこのゲームは簡素すぎて4000円の質に達していない。
ゲームディレクターではなく、Webデザイナーが作ったというなら納得だ。このソフトはゲームというよりツール的である。
このゲームのディレクターはゲームに、”アソビ大全”というタイトルに求められているものをまるで理解していない。
もしかして、みんなでボードゲームやUNOやトランプを囲んで遊んだ経験がない? そもそも前作の『だれでもアソビ大全』をプレイしている?
開発にあたり、社内で実際に実物のアナログゲームで遊んでいたら、こんな内容にはならないはずだ。
あまりにもオンラインを中心にゲームのなんたるかを軽視しているが、これはこの開発会社のゲーム全般に言える。
「世界のアソビ大全51」の開発企業「エヌディーキューブ」のゲームには
・Wii Party
・どうぶつの森 ポケットキャンプ
・マリオパーティ100ミニゲームコレクション
・スーパーマリオパーティ
などが並んでいる。
2時間も遊べば飽きるパーティーゲーム、虚無ゲーム、ただのミニゲームの詰め合わせ、オンラインではミニゲームでしか遊べないマリパ。
どれもパッと見の外見や手触りは良く、致命的なバグやゲームバランスは無いが、ゲームとして微妙なタイトルが名を連ねている。
任天堂には自社の素晴らしいIPをこの開発会社に任せるのを考え直して欲しい。バグや悪いゲームバランスよりは手触りの良い薄味のゲームの方がマシだという消極的な理由で開発会社を選んではいないか?
せめてなんらかの指導を入れて”ゲーム”の質を上げて欲しい。
とりあえずは、トランプゲームを中心にアソビ大全51+20みたいなDLCを出してみたらどうだろうか。まだ間に合うと思うが……。
今の「世界のアソビ大全51」というゲームに下せる評価は★2だ。
人におすすめすることは決して出来ないが、買いたいという人を止めるほどではない。買おうか迷ってる人がいたら、やめとけと助言する程度だ。
このゲームを良作、神ゲーだと評価すればこの開発会社のゲームのようなタイトルが任天堂からさらにリリースされることになる。
ユーザーが任天堂を堕落させるのだ。
発売前に期待していたのは、「だれでもアソビ大全」のリメイク&アップデートで、求めていたのはこんな続編ではなかった。
がっかりだ。
本記事を一行で要約
「4人用ゲームが少なすぎて全然パーティできねえ」
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