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愛の不時着を観て

愛の不時着は、夜空に輝く北極星のような存在だ。不動の地位を確立し、これから観る他の全てのドラマの基準となってしまった。なんと罪深いことだろうか。

韓ドラを見たことがなかった私

愛の不時着にハマった多くの日本人と同様、私は韓国のドラマをほとんど、いや全くと言っていいほど観たことがなかった。韓国の作品をきちんと鑑賞したのは、記憶の限りでは映画「パラサイト」が初めてかもしれない。
最近の韓国の映画やドラマはすごいと言われているが、ほんとにすごい。まず脚本が良いし、俳優陣の演技も素晴らしい。

愛の不時着を観たのは、単純に流行っていたから。Netflixでもずっと上位だったし、観たらきっと面白いに違いないと思った。今では本当にみてよかったと思う。
愛の不時着にハマったというのは、主人公リ・ジョンヒョクにハマったとも言い換えられるかもしれない。主演俳優ヒョンビンにハマったと言えなくもないが、リジョンヒョクとヒョンビンは表裏一体。この役を他の誰かが演じていたとしても恐らくここまで好きにはなれなかっただろうし、リジョンヒョクという役柄があってこそヒョンビンの魅力にハマったとも言える。

ヒョンビンの凄さ

恥ずかしながら、私はこの作品に出会うまでヒョンビン氏のことを認識していなかった。そしてあろうことか、物語の序盤では特にカッコいいとさえ思わなかった(当時の自分をぶん殴りたい)。北朝鮮のおばちゃん達がリジョンヒョクにこんなにも熱を上げているのは何故なのだろうと思ったくらいだ。
しかしそれは裏を返せば、ヒョンビンが北朝鮮の兵士になりきっていたということなのだ。顔天才ぶりを隠している。いや隠せてないんだろうけどさ。雰囲気的な意味では隠している。それが物語後半で生きてくる。

リジョンヒョクを演じている時のヒョンビンからは、そこはかとない外国人感が出ていると思う。韓国から見たら北朝鮮は外国である。同じ言葉を話す同じ民族ではあるが、2020年現在は明らかに外国。そしてその国で生まれて生活してきたという、(ヒロイン・セリにとっての)異国感を、ヒョンビンは体現していたと思う。

これは、愛の不時着を観ていただけでは気づけなかったことだ。
ヒョンビンの他の出演作も観たくなった私は、シークレットガーデン、アルハンブラ宮殿の思い出を立て続けに観た。そして愛の不時着とのヒョンビンのあまりの違いにびっくりした。それらのドラマの中では、ヒョンビンさんは韓国人なのである(当たり前)。北の人を演じる際は訛りなども徹底したりしているだろうが、あの異国感を表現できるのはすごいとそこで気がづいた。
もちろん単純に髪型や体型で変わる部分ももちろんある。ヒョンビンは髪型でかなり顔の印象が変わる人だと思う。撮影に入る前に肉体改造したともいうし、色々と努力しているのだろうなぁ。アルハンブラのヒョンビンと比べるとだいぶ体格が違うよね。

私は現在「ジキルとハイドに恋した私」をNetflixで視聴中だが、このドラマにはその名の通り二重人格のイケメンが出てくる。それがヒョンビンなのだが、先ほどから書いている"演じるキャラによって違う人に見える"という現象を一つのドラマで楽しめる。

リアルじゃないリアリティ

最近になって、愛の不時着の次に人気と言われてきた韓ドラ「梨泰院クラス」を観た。
一人の実直な青年が復讐という目的を果たすため成り上がっていくというストーリー。
この二つのドラマのストーリーを比較したときに、現実的に起こり得そうなのは明らかに梨泰院クラスの方だろう。舞台が韓国だし。しかし両方視聴し終えた今感じるのは、リアリティは必ずしもリアルである必要はないということだ。
愛の不時着は、題材こそ北朝鮮にパラグライダーで不時着するなんていう、絶対にあり得なそうなところから始まっているのに、何故かリアリティを持って観られた。リアリティという意味では梨泰院クラスよりも感じられたかもしれない。
それは、それぞれのキャラクターの感情の機微だったり、背負ってきた人生の重みだったりを詳細に見せてくれたからこそ出せたものなのかもしれない。それでいて説明臭いということはなく、物語に深みを出している。1話あたり70〜80分×16話というボリュームだからこそ為せる業である。
ちなみにこのボリューム感故に敬遠している人も多いらしいが、大丈夫。ハマったら最後、時間を忘れて最終話まで駆け抜けられること請け合い、なんならもっと観たいと思えます。
というか1話の時点ではハマる要素はそこまでないので、私の場合4話あたりからじわじわと、6話で心をつかまれた、という感じだった。(関係ないけど長さを感じさせないと書いていて園子温監督の「愛のむきだし」を思い出した。4時間もある映画なのにそれを感じさせない。時空が歪んでるレベル。題名が愛の不時着と似てるね。)

夫もハマる愛の不時着

愛の不時着はイギリス人夫と一緒に観て、一緒にハマった。
彼は好みがハッキリしており、トレイラーの時点で好みじゃないと思ったら絶対に観ない。特に英国王室もの(今人気のThe Crownとか)は絶対に観ないと決めているらしい。いくら私が一緒に観たいと言っても断固拒否。
運よく韓ドラにはアレルギーはなく、1話を無理やり見せた。その時点では微妙な感じだったが、回を追うごとにハマっていき、中盤からは涙する姿も度々見せた。逆に「なぜ泣かずに観ていられるのか」と私が言われる始末。私が泣くのは老人もの (ex.のび太のおばあちゃんの回)が主なので仕方がない。人それぞれ涙腺ポイントってあるよね。
ヒョンビンのことも夫は好きになり、今では積極的に彼の出演作で次何を観るか提案してくれたりもする。そんな夫曰く、「どのドラマでも、リリカップル以上のケミストリーは起こっていない」とのこと。リリカップルとは、愛の不時着の主役カップルリ・ジョンヒョクとユン・セリのカップルのことで、両方の名前に「リ」が入っていることから命名されたそう。韓国ではドラマの中のカップルの愛称を決めてファンが親しみを込めて呼べるようにするのがお決まりらしい。
そのリリカップルが起こすケミストリーがあまりにも素晴らしかったため、他のドラマでもつい比較してしまいたくなるのだろう。

それにしても韓ドラを観るようになって、韓国語がわからないことのもどかしさを感じることも多くなった。日本語と同じく、敬語など、関係性によって言葉遣いが変わったりするそうだし、それによってドラマの中での二人の関係性の変化が表されていたりもするそうじゃないですか。特に愛の不時着では、北の言葉と南の言葉の使い分けが絶妙と言われているのに、字幕じゃその辺のことは全然わからない。
少なくとも日本語で観た方がまだ近いので、愛の不時着に関しては日本語で一度観た。夫と観るときは英語字幕になるので、必然的に二度観たのだ。でも全然苦ではなかった。
英語では言葉の意味は訳せてもニュアンスが全く伝わらないことが多いだろうし、翻訳する方は日々苦労しているだろうなと思う。(夫が好きな韓ドラ「美男(イケメン)ですね」なんて、英語のタイトル"You're Beautiful"である。悪くないけど本来のタイトルのニュアンスが全く伝わらない…)

いつか韓国へ

これまで興味を持っていなかった韓ドラの扉を開いてくれた愛の不時着には感謝している。いつか韓国に旅行にも行きたい。今は海外旅行は無理なので、韓国チキンを作って食べたり、ソジュを飲んだりして韓国気分を味わっている。韓国のドラマは間接広告が入っているのだが、このチキンとソジュに関しては広告効果抜群だった(少なくとも私には)。

次は何を観ようかな。ヒョンビンブレイクのきっかけとなった2005年のドラマ、「私の名前はキムサムスン」を観るために、アマゾンプライムに入るかどうか、悩みどころだ。

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