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多様な腸内細菌叢が栄養素をブロックすることで有害な病原体から身を守る

常在細菌の多様なコミュニティが病気の原因となる微生物からヒトの腸を守ることができることが実証された、という英国オックスフォード大学からの研究報告。単一種の腸内細菌のみでは保護効果は得られなかった。研究者らは、保護コミュニティが病原体が必要とする栄養素を消費することで、有害な病原体の増殖を阻止していることを発見した。

ヒトの腸には、腸内マイクロバイオームとして総称される数百の異なる細菌種が生息している。これらがもたらす主な健康上の利点は、有害な感染症を引き起こす可能性のある侵入病原体から腸を保護することである。しかしこれまで、この保護効果がどのようにして起こるのか、また特定の細菌種が他の細菌種よりも重要な役割を果たしているかどうかは不明だった。

これを調査するために、英国オックスフォード大学の研究者らは、100 の異なる腸内細菌株を個別に、または組み合わせて、2 つの有害な細菌性病原体(肺炎桿菌とサルモネラ菌)の増殖を制限する能力をテストした。個々の腸内細菌単独では、どちらの病原体の蔓延を制限する能力もきわめて不十分だった。しかし、最大 50 種の群落を一緒に培養した場合、病原体の増殖効率は、個別の種で培養した場合に比べて最大 1000 分の 1 に低下した。この「コミュニティ保護効果」は、細菌がバイアル内で一緒に培養されたか、「無菌」マウス (実験開始時に腸内細菌が存在しなかった) で培養されたかに関係なく観察された。

また研究者らは、全体的な多様性だけでなく、細菌群集のメンバーが防御レベルに重大な影響を与えていることを発見した。特定の種は、それ自体ではほとんど保護を提供しないにもかかわらず、コミュニティベースの保護に不可欠であることが判明した。

研究者らは、保護細菌群集が病原体が必要とする栄養素を消費することで病原体の増殖を阻止することを実証した。さまざまな細菌種のゲノムを評価することにより、最も保護的なコミュニティは、病原種と非常に類似したタンパク質組成を持つ種で構成されていることがわかった。彼らはまた、代謝プロファイリングを使用して、保護種が病原体と同様の炭素源を要求していることを実証した。

「多様なマイクロバイオームは健康上の利点をもたらす可能性があります。本研究結果により、健康に有害な細菌種から保護するためにマイクロバイオームの構成を最適化するという目標を実現することが期待できます」と研究者はコメントしている。

出典は『サイエンス

http://dx.doi.org/10.1126/science.adj3502


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