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鉛への曝露による死亡とIQ低下は推定をはるかに超える

鉛への曝露が2019年に世界中で心血管疾患による成人550万人の死亡と、5歳未満の子供の7億6,500万点に及ぶIQの低下を引き起こした可能性があるようだ、という研究報告。

研究者らは、2019年の世界疾病負担(GBD)研究からの血中鉛濃度(BLL)推定値を使用して、鉛曝露による世界的な健康への影響とコストを推定した。これは、世界人口の 99.9% を占める 183 の 低中所得国(LMIC) および 高所得国(HIC) の推定平均 BLL を提供する。

解析の結果、LMIC の平均 BLL は 4.6 μg/dL であったのに対し、HIC では 1.3 μg/dL だった。北米、欧州、中央アジアの人々の平均BLLが最も低く、南アジア、中東、北アフリカ、サハラ以南のアフリカの人々で最も高かった。

研究者らは、心臓や動脈への損傷(アテローム性動脈硬化など)や脳卒中発生率の増加など、高血圧以外の要因によって引き起こされる心血管疾患による死亡に対する鉛曝露の影響を推定した健康影響モデルを用いてデータを分析した。

分析では、2019年の世界の心血管疾患による死亡者数は550万人、つまり心血管疾患による死亡全体の30%に鉛曝露が寄与していると推定された。これは、鉛曝露によるCVD死亡者数85万人というGBDの2019年の推定値の6倍以上である。鉛への曝露による死亡者550万人のうち、90%がLMICに属していた。この分析には高血圧による死亡は含まれていないため、また鉛への曝露により心血管疾患以外の原因による死亡リスクも高まるため、鉛への曝露に関連する実際の死亡者数は大幅に増加する可能性がある。

分析はまた、鉛への曝露により、2019年に5歳未満の子どものIQポイントが7億6,500万点低下し、その95%がLMICの子どもであったことも示唆している。LMIC の子供たちは、生後 5 年間に鉛への曝露により平均して 5.9 の IQ ポイントを失っている。研究者らは、これにより、これらの子供たちの生涯総収入が最大12%減少する可能性があると推定している。

出典は『The Lancet Planetary Health

https://www.thelancet.com/journals/lanplh/article/PIIS2542-5196(23)00166-3/fulltext


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