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要介護認定調査と認定審査会

介護保険は身体機能や認知機能によって利用できるサービスの量が決まります。「介護のはじまりは保険事故」で記載したように、高齢者等(被保険者)に保険事故(国が定めた介護が必要な状態)が発生したことによって、介護サービスを利用できるようになります。

要介護段階を決める基となるのが
主治医意見書
要介護認定調査

要介護認定調査
介護申請を行うと、申請用紙に記載した連絡先に訪問調査員から日程調整の連絡が入ります。調査は要介護認定を受ける方のいる場所で行います。ご自宅や、入院中なら病院、施設入所中であれば施設です。「要介護認定調査票」に基づいて調査が行われますが、今は調査項目や認定調査対策などのサイトもいろいろありますね。日常生活を送る上で、家事や身支度、入浴などに支援が必要で申請したとしても、当のご本人が調査項目に対して「できます。」と答えてしまうことがあります。独り暮らしの方がサービスの必要量が多くなるのは想像頂けると思うのですが、この調査ではほとんど反映されません。家族と同居している方より、一人暮らしの方の介護度が軽く出てしまう傾向もみられます。

薬の飲み忘れで例えると、
【ご家族が同居】
 薬を管理していたり飲み忘れがないか声かけを行っているなどで、
 チェック項目は「一部介助」
【一人暮らし】
「介助されていない」

「一部介助」について
認定調査員テキスト2009より抜粋
薬を飲む際の見守り、飲む量を指示
飲む薬や水を手元に用意する
オブラートに包む、介護者が分包する
等の何らかの介助が行われている場合
※薬局で分包されたものは含まない。

お薬カレンダーに週一回お薬を配薬する支援を行っていても、目の前で見守っていないと「介助されていない」となります。支援者が週一回安否確認と配薬に訪れたときに薬が床に落ちていた等を調査員に伝えると「一部介助」を選択し、「特記事項」という書類に「服薬管理が必要だが一人暮らしでできていないため、一部介助を選択する。」と記載します。
この調査票「要介護認定調査票」のチェック項目をコンピューター分析で判定したものを「一次判定」と言います。この一次判定は介護の手間を数量化したもので仮の介護度です。一次判定だけでは介護の実情を反映できないため、介護認定審査会で医師が記入した「主治医意見書」と「特記事項」の内容を照らし合わせて要介護度が決まります。先の一人暮らしの方だと一次判定は要支援1だけど、状態像としたら要支援2相当だと審査会で決まれば要支援2がその方の介護度になります。

このように二重三重に介護の実情を反映できるように制度設計されてはいるのですが、人のやることなので完璧とはいきません。Aさんは糖尿病で薬の飲み忘れがないように支援することが重要だとします。変形性膝関節症も患っているため整形外科にも通院していますが、身の回りのことはご自身でほぼ行えます。主治医意見書を整形外科の先生に依頼しても、糖尿病の情報をその先生が把握していない等、主治医意見書に記載がないことがあります。
訪問調査時にお一人で調査を受け、薬の内服の項目に「できます。」と答えていれば「生活できているから大丈夫だね。」ということで、その他の調査項目にもよりますが「非該当」と認定されることも起こり得ます。誰に主治医意見書を書いてもらうか、調査時に支援者が立ち会っているかなどが調査結果に影響を与えます。

介護認定審査会
介護認定審査会は、市町村長に任命された保健、医療、福祉に関する学識経験者で行われます。委員は市町村長が任命する非常勤の特別職の地方公務員で、任期は2年、再任も可能です。認定審査会委員を6年務めましたが、議長(ほとんど医師)や構成メンバーによって特色がありました。委員の中には資料を見ずに「すべて一次判定どおりでいい。」と言った人がいたとか、いないとか...。

ケアマネは、それも加味して一次判定結果で臨む介護度がでるように訪問調査時にご家族に同席してもらったり、ご本人に調査の時に気を付けてほしいポイント等をお伝えするのですが、なかなか思うようにはいきません。調査に立ち会うときはご本人、ご家族に気を付けて欲しい箇所は一か所と決めて協力を求めるようにしていました。

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