リリとクマ

ある森の奥に女の子が住んでいました。
リリという名前のその子は、少し小さな小屋で1人で暮らしていました。
読書したり、小鳥やリスと遊んだり、お昼寝したりする日々です。

あるとき、森に山菜を取りに出かけると、大きなクマに遭遇しました。
クマは言いました。
「お前を食べてやろう」
リリは答えます。
「食べてもいいけれど、今食べても美味しくないよ。
もっと太ったほうがきっと私は美味しいよ。」
クマは少し考えて、それならばもっと太るようにリリに言いました。
「私は体が小さいからあまり遠くには行けないの。
お魚や栄養のある山菜を持ってきてくれたら、たくさん食べてすぐに太れるよ。」
クマは言うとおり、たくさんのお魚や山菜をリリに与えました。
リリはありがとうと言って、それらを料理し始めました。
森に漂う素敵な香りに仲の良い動物たちも寄ってきます。
クマもお腹が空きました。
リリは出来上がった料理をクマに与えました。
「一緒に食べよう。
私が太るまでは私があなたに料理を作ってあげる。」
クマは美味しそうに料理を食べました。
それからというもの、クマはせっせと食材を運び、リリが料理して、2人で食べる生活が当たり前になりました。
2人は共に暮らすようになったのです。
寒い寒い夜は一緒のベッドで身を寄せ合い、日差しの暑い日は一緒に川で水遊びをしました。

あるとき、森に村の猟師が入ってきて、クマと一緒にいるリリを見て青ざめました。
猟師は迷わず猟銃を構え、クマに撃ち放ちました。
クマは大怪我を負ってその場に倒れました。
リリはひどく悲しみました。
「もう大丈夫だよ」
猟師は優しい眼差しでリリに手を差し伸べました。
リリは猟師の方には目を向けず言いました。
「私はずっと幸せだったのに。
こんな一瞬で傷ついてしまう。
あなたの善意は、私には辛い。」
猟師は、まるで野獣でも見るかのようにリリを見つめました。
気味が悪いと思った漁師はクマとリリをそのままにしてさっさと森を出ました。

クマは大怪我を負いましたが、リリの看病のおかげで、また食材集めに出かけられるほど元気になりました。
その頃、村ではリリのよくない噂が流れているようだと、小鳥が教えてくれました。
そのことを知ったリリはその夜少し泣きました。
クマはそっとリリを抱きしめました。
あたたかいとリリは思ってホッとしました。
リリはもう悲しくはありませんでした。
クマがいてくれるからです。
「もう私を食べても美味しいかもしれない」
リリはそっと呟きました。
「もうお腹がいっぱいなんだ」
クマはそう言ってまた強くリリを抱きしめました。

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