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コカコーラに聖火ランナーの応援させてる場合なのか?

あまりにもショボくて観てられないので五輪関係の映像が目に入るとパソをそっ閉じしている。っていうかまだオリンピックやる気で、聖火リレーまで始めちゃったのが「日本すげー」たるところ。

しかし、あのコカコーラのチンドン屋みたいなウェーイ応援団はなんなの?(SNSに写真あげちゃいけないんだってねww だから普通のコカコーラ・トラックを置いてみた)アメリカでは今コカコーラ社がとある重大な決断を迫られてて、一歩間違えると全米でボイコットが起こりそうな問題になってるんだけど、ニュースにもなってないみたいだからいちおう説明しておく。

今ミネソタ州で、黒人容疑者の首に10分近くも膝で圧力かけて殺しちゃった白人警官の裁判が始まってる。コロナ禍ということもあって傍聴人を制限する一方、生放送で毎日法廷の様子が見られるのでアメリカ人はけっこう釘付け。オリンピックなんてどうでもよくなりそうな法廷ドラマが繰り広げられている、ジョージ・フロイド事件っていうんだけど。ここで見られる。

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この事件がきっかけとなって昨年の夏は全米でBlack Lives Matter運動が広がったわけだけど、市民レベルのデモや集会の影響として、アメリカといったらこのブランド、みたいな有名企業がBLM運動を支持するのか、支持するなら具体的にどういう対策をとるのかという表明を迫られたという一面もあった。

日本でもよく紹介されていたのはケーブルTV/ストリーミングのHBOが古典映画『風とともに去りぬ』をいったんひっこめて、「これはまだ奴隷制度が当たり前だった時のストーリーです」みたいな注意書き付きで再アップした話とか。一方のネットフリックスは「BLM運動をもっと知るために」というカテゴリーを新設。

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他にもNASCARがレースで南軍の旗をディスプレイするのを禁じたとか、ツイッターやNYタイムズがJuneteenthと呼ばれる黒人奴隷解放記念日を正式に祝日として認めたとか、私も初耳だったのは、ウォルマートや、Walgreen、CVSといったドラッグストアが黒人向けのコスメだけ鍵付きのケースに入れるのをやめたとか(つか、普段買わないから、そんなことしてたのさえ気づかなかったわけだが)

他には、社内で具体目標を定めて、それを発表したところも多い。グーグルは2025年までに管理職の30%をマイノリティーにする、アディダスは今後4年間で10億円の予算を投じてBLM運動を支援する、ペプシ社は400万ドルをかけて今後4年で管理職の3割を黒人にする、セフォラは棚の15%を黒人向けコスメあるいは黒人オーナーによるコスメに割く、とかね。

そして、『風と共に去りぬ』の舞台ともなっているジョージア州アトランタに本社を置くコカコーラ社のジェームズ・クインシーCEOも、昨年6月に自社ホームページにこんなビデオをアップして「ソーシャル・ジャスティス」に関して高らかに「こんなことがいつまでも許されてはいけない。我々私企業も構造的差別と戦う策を講じねばならない」と熱く宣言してるわけです(イギリス人ってことで、ちょっとそのアクセントが鼻につくんですがw)

そして私企業だけじゃなく、スポーツリーグもBLM運動を支援する動きにで始めた。もともと、アメフト(NFL)では2016年9月にコリン・キャパニック選手が、一連の黒人差別(つまりは構造的差別に対してであって、曲解されていたように警察組織に反対しているわけではない)に対する抗議として、国歌斉唱の時に無言でひざまずく、ってのをやったら、この時は支持されなくて、当時のクソ大統領はツイッターでキャパニックをクビにしろとわめいたり、結局彼はリーグ内で四面楚歌となり、契約切れのままNFLから追い出されたかっこうとなった。

でも昨年のBLM運動が盛り上がった後は、特に黒人スター選手の多いスポーツリーグの反応は早くて、まずバスケのNBAがコートにBlack Lives Matterと大きくデザインしたり、選手が差別撤廃を訴えるメッセージをユニフォームにつけるのを許可したりした。野球のメジャーリーグは、オープニング戦で選手がすすんでみんなキャパニックのようにひざまづいたりした。ということで、キャパニック選手を追い出したNFLは(選手には黒人も多いが、観客は圧倒的に白人男性が多いスポーツなので)出遅れたが、そこはスポーツ選手をスポンサーして広告をうつナイキがキャパニックを後押ししてきた、ってのがある。

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もうこの時点で、日本でオリンピック開催したいなら、アメリカのBLM運動に対しても、何らかの意見表明をしなければすまない(だって、NBC様のために時間ずらしたりするんでしょ?)のはわかってもよさそうだったのに、国民レベルでは相変わらずテニスの大坂なおみ選手のバッシングやってたりして、空気読めてなかったよね。空気を読むの、お家芸/国技かと思ってたんだけど。

そして、昨年秋にはアメリカで大統領選が行われ、最後の最後の開票で、赤から青に寝返ったまさにこのジョージア州が決め手となってジョー・バイデン政権が誕生した。今年に入って行われたジョージア州の上院議員の特別選挙でも、それまで2人とも共和党だった(白人)議員が落選して、ジョージア初の黒人上院議員とユダヤ系の上院議員まで誕生した。というわけで、大統領、下院、上院(ここは議員が100人いてピッタリ50/50なんだけど、同数の場合、副大統領が決定票を入れるので民主党が与党扱い)と揃って民主党が与党となり、バイデン大統領が推奨する「国民みんなでなるべく早くワクチンうつぜ」大作戦が今のところ驚異のペースで進んでいて、夏までには国民全員分のワクチン確保できそうなところまできているというわけだ。

民主党のこの好調な出だしに「次の中間選挙でも議席もってかれる〜」とビビっているのが赤い州で、特に州知事と州議会の与党が共和党で構成されているジョージア州では、「だったら黒人票が取りにくくなるように選挙法を変えちまおうぜ」作戦が展開されて、有権者が反対運動を起こす間もなく改定決議と州知事の承認がサクッと進められてしまった。日本のニュースでは「選挙改正法案」としか書かれてなかったりして、わかりにくいかもしれない。

例えばこの中に「日曜日の期日前投票は禁止!」ってのがあったりして、何でこれが黒人票に不利になるのかといえば、南部の黒人のバプティスト派の多くの信者は、日曜日に教会に行ってひとしきりゴスペルを歌った後、バスに乗ってみんなで投票に行く「Souls to the Polls」という習慣があって、これを阻止しようというものだったりする。他には、投票所を減らしたり、投票時間を削って(しかも黒人の住民が多い地域を狙って減らしている)、当日投票する列が長くなるようにしておきながら「並んでる人に水や食べ物を差し入れするの禁止!」みたいな改定もあって、11月の選挙時でもあのくそ暑い南部の気候の中、ご高齢の爺さん婆さんを殺しかねないルールが入ってたりするわけです。極悪非道すぐる。

で、またコカコーラの話にむりやり戻すと、このジョージア州の選挙改正法案に対しても、地元の企業としてどうよ?反対表明すんの?という気運の中、アトランタに本社のあるデルタ航空が「選挙でズルする人が出ないようにする改正は歓迎で〜す」とか、空気読めない発言をSNSでしちゃって、その後「絶対はんた〜い!」って慌ててCEOが出てきたけど、非難轟々なわけですよ。コカコーラはBLM運動の時はあんなに威勢がよかったのに、最初はなにも言わなかったので、「おや?」みたいな反応だった。「コカコーラ不買運動すっぞ」みたいな運動家がうるさくなってから前述のクインシー社長が出てきたけどね。

そして今盛り上がりを見せているのが、今年の夏にアトランタで開催予定のメジャーリーグのオールスターゲーム、やめようぜ(あるいは他の都市に移そうぜ)運動なのだ。(追記:4月2日の時点で、メジャーリーグが「アトランタではやらないよ」と正式発表した。)

というわけで、アメリカでは「ソーシャル・ジャスティス」という言葉の元に、企業やスポーツ団体がきっちり、立場を表明することが求められている。差別はいけない、と言うだけじゃなくて、行動で示すことも求められている。

ついでに言えば、黒人だけでなく、前クソ大統領が新型コロナウィルスをいつまでも「チャイナウィルス」とか呼んでるせいもあって、全米で日本人も含めアジア人が(しかも弱そうな高齢者や女性を狙い撃ちにして)「いきなり襲われる」というヘイトクライムの対象になってて、普通に考えれば、オリンピックの開会式って、アジアからこの差別行為に対する明確なメッセージ性を打ち出せる絶好のチャンスだよね。(もちろん皮肉)

で、日本の聖火リレーなんだが…もう何も言うまいよ。オリンピッグ、期待してるよ。

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