関電スキャンダルと同和問題

 関電の経営陣が元高浜町助役から多額の金品を受け取っていた問題が、当初思われていた大企業の不正や収賄、不適切な原発運営という話から、どうやら同和問題へと飛び火しているようだ。

 念の為大前提として書いておくが、「同和問題については、いわゆる差別問題が既に完全に解消したとまでは言い難く(特に西日本)、同和絡みでのスキャンダルを利用して、それを元に『だから差別されて当然』なる論理を構築する連中は絶対に許されるべきではない」というスタンスを我々は取るべきである。特に最近はこの同和問題、差別問題が、インターネットを通じてむしろ再拡大しつつある傾向が見える。到底許されることではない。実際未だに苦しんでいる同和出身者が多数居る。

 一方で、同和問題を利用して強要・恐喝の類の不法行為を行う連中(同和とは無関係の出自を持つ「騙り」を含む)も残念ながら存在し、「似非(えせ)同和問題として以前から社会問題化しているのも事実である。これらの点については、法務省もウェブサイトで周知している。この両方をきちんと区別しないことには、悪循環にハマるだけであることは当然のことだ。

 さて、今回の問題で渦中の故人である元助役は、長年高浜原発絡みで地域において権力を振るっていたという話がマスメディアで流れ、同時に「人権教育(つまり同和教育)」絡みでも力を持っていた人物であるとされている。これがこの助役が同和絡みであるという根拠だそうだ。これについては週刊誌やゴシップ誌のみならず、MBSも「やんわり」触れたそうなので、おそらくその点は正しいのだろう(当然、こちらは自分できちんと取材している訳ではないので、安易な断定は危険でもあるが)。

提供金品受領を拒否すると何故脅されるのか?

 その助役が関電の経営陣に金品を配布し、受け取りを拒否すると「脅迫」されたという話を最初にニュースで聞いた時、多くの人が「なんで金もらうのを拒否したら脅迫されるんだ!?」と大いに疑問を持ったはずだ。「何でも死者のせいにして、責任逃れをしている」という感想を当初持った人も多かったに違いない。実際そういう批判をしているマスメディアも未だ多い(当然そういう側面がないとは言い切れないので、この論評が的外れだというのも危険)。

 当初の構図からすれば、関電が利用者から高い電気料金を聴取し、それを原発絡みの取引企業に高値で受注させ、その一部をキックバックさせているのではないかという疑念があったからだ。関電経営陣側が主導してキックバックさせているのに、「断る」理由もなければ、その上更に受領拒否して「脅される」理由もないと思うのはもっともな話だ。

 しかし、一部報道の通り、助役が同和絡みの人物だったとすれば、金品の受領を拒否して更に提供側から脅されることが、必ずしも「あり得ない」ことではないと言える。それは原発の建設と運営は「ダーティー」な側面があることは公然の事実だからである。

 例えば原発の作業員などは、最初の電力会社からの発注額から末端の作業員に行き渡るまで相当の中抜きがされていて、そこに暴力団が介在していることが一例として挙げられる。福島原発事故以来特に有名になったが、それ以前からいわゆる「あいりん地区」から日雇い作業員を連れ出し、まともに労務管理もしないまま原発構内で作業させて被爆させ、後は何があっても知らぬ存ぜぬで放置などという話を聞いたものだ。

 作業員の健康を維持管理するより、簡単に「捨てられる」作業員を補充する方が、電力会社にとっても大変得なので、多少初期段階では高く付いても、反社会勢力を利用して集めることは利(敢えて「理」は使用しない)に適っていると言える。

 これらの原発で働く労働者を食い物にしている連中がいる話は、名著「原発ジプシー」を筆頭に、未だに多くの関連書籍があるのでそちらで読んでいただくこととして、「嫌われ者」の原発である以上、建設立地から維持管理に至るまで、無茶な「仕事」を請け負う連中が必要になってくる。そこに暴力団や反社勢力としての同和(一般的な意味での同和とは区別していただきたい)が介在する余地が出来るという構図である。

 また今回の高浜原発の立地地区そのものが同和地区ではないか?という噂をネットで目にしたが、もしそうなら(そうでないならとんでもない風評であるので慎重であるべきとしても)、厄介者の原発をそういう地区に押し付けることは、何としても原発を建てたいのであれば、金銭面だけは多少高く付いてもやる価値は電力会社側からすればあるだろう。「汚いやり方」含め、取りまとめに同和地区の実力者を抱え込むことはそう不自然ではない。ただ、これは高浜原発の立地そのものが同和と絡んでいるかどうか確信がないので、あくまで仮定の話である。

 ※筆者注。高浜原発立地地区は、同和地区どころか単なる田畑だったという説が航空写真で出ており、おそらくそれは正しいと思われるのでこの部分については、ガセとして扱って欲しい(2019年10月4日13時過ぎ加筆)

 再び加筆。当文では言及していないものの、今度は「立地地区に行くまでの道路が同和地区を通る必要があるので……」なる言説が巻き散らかされていた。だがこれについても、証拠を持って否定されたので、これもまたガセということで(2019年10月21日午前1時前加筆)

 それはともかく、「汚い作業を請け負わせる」ということは、例え高額の報酬を反社側に払ったとしても、反社側に大きな弱みを握られるということと表裏一体であることは想像に難くない。今回の金品の提供を無理やりされたというのは、実際には「お前らと俺らは一蓮托生の関係。この金も出どころは、お前らが俺らに汚いことをさせるために支払った不当な上乗せ分から出てる。その一部を受け取ることで、お前らは一生俺らとは縁が切れないことを再認識しろ」とでもいう意味合いであれば、それ程驚く構図ではなかろう。当然この受領自体も犯罪になり得る(大企業の役員にも刑法ではないが、会社法上の会社役員収賄罪が適用される)のだから、受け取ればより関電側は助役側に頭が上がらないことになる。つまり金銭の受け渡しが成立することで、汚い作業の発注・受注同士という以上に強固な関係が出来上がるのだ。

 役員側からすれば「受け取ったらマズイ金品」である以上、もらったままの状態で役員宅から見つかった場合があるということは、良心の呵責故なのか単なる小心者なのかはともかく、一部役員側の心理としても理解出来る。「金品を渡すのに脅迫行為」、「受け取った金品をそのまま保管」は、この構図で概ね説明が付く。勿論、現時点でこれは私的且つ一定の合理的「想像」の範囲内であることは明記しておく。

注意すべきは論点のすり替え

 さて、ここまで見てくると、「いやあさすがに同和は日本の闇だな」などとしたり顔でいう(と言ってもこの記事を書いている自分もまた「したり顔」と言われれば、直接取材しているわけでもないのでその通りだが……)輩が出て来ると思うが、それもまたお門違いというべきであろう。

 この手の反社勢力が跋扈する背景には、自らは手を汚さず、最終的に大儲けしている連中が居るということを忘れてはならないからである。バブル期なども土地の地上げに、「堅物」の銀行がヤクザに放火を依頼したなどという話がわんさかあった。闇の勢力を利用する、光の当たる場所に居る偽善者が存在していることを無視していては、何事も改善するはずがない。

 助役が同和関係者だったと見られることから、「関電は被害者」として一転して扱われるかもしれないが、最初に反社を利用したのは関電側だとすれば、とんでもない責任逃れであることは言うまでもない。また原発工事業者から金品を受け取っていたことから見ても、原発マネーの関電側への還流そのものは否定出来ないはずだ。

 森山助役の話では、「色々な記録があるのでこれが表沙汰になると騒ぎになる」と生前語っていたそうだが、この際全てを洗い出すぐらいの覚悟が社会に必要だろう。


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