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誰も教えてくれなかったおしゃれのルール(アーカイブ)フォークロア

ファッションでは、フォークロアと呼ばれる民族調のスタイルが、周期的に取り上げられます。

もちろんそれが流行る場合もあれば、流行らない場合もありますが、ここ最近で大流行したのは70年代でした。

ヒッピー・ムーブメントと相まって、より若く、そして自由な雰囲気を表現するために、フォークロアが流行りました。70年代のフォークロアの特徴は、ボヘミアンと呼ばれたジプシーのスタイルが中心で、主にチェコスロバキアなど、東欧の民族調スタイルを取り入れたが主流でした。(わかりやすいイメージとしては、スティービー・ニックスのスタイル)


最近(2014年以降)、再びフォークロアが注目を浴びるようになりました。しかし、それは70年代の主に東欧イメージのものとは少し違い、もう少し範囲も意味も広く、地域性にこだわるよりも、その手法、つまり「手仕事」としての側面に注目するものとなりました。

なぜなら、再びフォークロアが注目されるようになったのは、これまで続いた、平坦で、変わり映えのしない、退屈な大量生産の衣服に対する反動が原因だからです。


今回流行のフォークロアは、その手仕事が重要となります。ですから、必ずどこかしら手で仕事をしたような痕跡、それは刺繍であったり、アップリケであったり、が加えられます。

繊細なレース編みや、複雑な模様編みのニットなども、広義の意味ではフォークロアに入れてもよいでしょう。


今回の流行の特徴は、フォークロアとして取り上げる民族調の範囲が、広く設定されていることです。「手仕事」のあとが見られるものなら、それは地域を問いません。東欧であっても、東洋であっても、そしてたぶんこれから出てくるであろう南米やアフリカであっても、機械ではなく、手を使って作られたあとがあるならば、それはフォークロアなのです。


シルクシフォンのドレスに施された繊細な刺繍、ウールのマントの上の動物や植物モチーフのアップリケ、編んだひもでできたブレスレット、羽や半貴石がついた、ロングネックレスなど、このフォークロアの要素は、ありとあらゆるところに見られるようになりました。


日本に住む私たちにとって、フォークロアは、大流行とはいかないまでも、いつもどこかで何しら存在しているような、身近な存在です。中央線の中野から国分寺あたりまでの、ヴィンテージ・ショップや、エスニック・スタイルのショップをのぞけば、何かしら手に入りますし、それを今までも取り入れていた人たちは多いでしょう。
素朴な感じ、かわいらしい感じが、特にナチュラル志向のファッションが好きな人たちに受け入れられてきた経緯があると思います。


ただ、今の流行は、それがあくまでモードの世界であらわれてきたもの。素朴さや、ナチュラルそのままではなく、もう少し洗練させて、より上等に、手の込んだもののほうがふさわしいです。

そんなフォークロア調の何か、たとえばアクセサリーや、アップリケのついたバッグなど、1つ全体のコーディネイトに付け加えるだけで、そのほかのアイテムがいわゆるナチュラル・テイストではないとしても、21世紀の新しいフォークロアを表現することができます。


民族調の地域は、どこでも構いません。重要なのは手仕事です。ですから、今回は自分たちが住む地域、つまり日本を含むアジアのものを取り入れても、それは構わないわけです。

アジア地域にも、さまざまな民族調の衣装があり、それにはどこかしら、必ず手仕事のあとがあります。


手仕事は、均質化した、終わりのないほど退屈な機械化の対極のものとして注目されています。手仕事の特徴は、均一ではない、ということです。

極度に発達した機械化は、人間の衣服を徹底的に均一なものに統一しようとします。しかし、それを着せられる人間は、均一な存在では、全くありません。

一人一人違って、1つの価値基準では判断不能の、ばらばらで、不揃いな存在です。それなのに、すべてに同じものを着せるということなど、無理なことなのです。

肌の色も、地域の文化や特色も、気候も、言語も、生活習慣も、すべて無視して、ある1つの価値基準に統一しようとする流れに対する反動として、今回のフォークロアが出てきたのであるならば、その結果として、手仕事が全くばらばらであっても、全く問題はありません。

それどころか、手仕事が目指すものは、ほかには存在しない、ユニークなものであるのです。それはあたかも、私たち一人一人がユニークであるがごとく、です。


そんなユニークな手仕事と、どこでどんなふうに出会えるか、それは人それぞれ違うでしょう。しかしそれはスーパーマーケットの、均質なものが大量に並べられている棚からは、選べないということだけは確かです。


誰とも同じではない自分が、ユニークな手仕事の衣服やアクセサリーを身につける。それが、21世紀のもっともファッショナブルなフォークロアです。

2014・10・13


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