見出し画像

誰も教えてくれなかったおしゃれのルール(アーカイブ)定点観測の勧め

私たちは日々、その日に食べるものを買います。ほとんどの食べ物は買ってから、間もなく消費されます。1年以上も、それを保持しているということはまれです。


日々ではありませんが、私たちは服を買います。しかし、そのほとんどは、消費し終わるまでにある程度の月日を要します。それは短いもので1シーズン、長いものでは10年以上に及ぶものもあります。


食べ物も、衣服も、買うという同じ行為によって手に入れるわけですが、これらを同じ視点で買うことは、適当ではありません。かたや、1週間かそこらのためのも、かたや、これから先、何年も続くであろうためのものです。


食べ物を買うときに、私たちは賞味期限をチェックします。それは「いつまで食べることが適当か」ということの指標です。けれども、残念なことに、衣服には賞味期限の記載がありません。それが果たしていつまでもつのか、買う時点では、ほとんどの人にはわかりません。

わからないことですが、失敗のない買い物をするためには、これをある程度、把握することは必要です。買ったはいいけれども、流行という意味で賞味期限がすぐ訪れるものなど、手に入れないほうがいいからです。

ファッションの流れを読み、今まさに買おうとしているものが、この先、どの程度、流行という意味において着られるものなのかと推測するためにも、定点観測をおすすめします。


少なくとも、今、このブログを読む環境にある人は、インターネットに接続可能であると思います。(誰かがコピーしたものを違う媒体で読むのでなければ)

そうであるならば、同じように世界中のあらゆるファッションに関連する情報に、アクセスすることも可能でしょう。ファッションのプロでもない限り、すべての情報をチェックする必要はありません。ですから、定点観測です。

たとえば、自分が好きなブランドのコレクションの情報を、それは買わないかもしれないけれども、チェックし続けるのです。

春夏、秋冬、クルーズ、プレシーズンと、少なくとも年4回、新しいコレクションの情報が、インターネット上で公開されます。それはブランドのHPにもありますし、雑誌のコレクションをまとめたページにもあります。


それによってわかることがあります。それがファッションの流れです。

流行という言葉で示されるように、ファッションはある方向に向かって流れていきます。そして優れたデザイナーは、必ずその流れを把握しています。彼らは、いつでもほんの少し先の未来予測を、コレクションを通じて教えてくれます。何年も続けて、定点観測し続ければ、誰にでもこの流れの方向がわかるようになります。


ファッションの流れがわかると、おのずと、売られている服の流行という意味での賞味期限についてわかってくるようになります。

シルエットの流行の変化が見えるようになり、終わるものと始まるもの、続くものの区別がつきます。そのとき私たちは、1枚のジャケットに、その色や素材や値段など、見えるもの以上のものを見るようになるのです。つまり、その服が持っているデザインの立ち位置です。その位置が遅れたものなのか、今のものなのか、一歩進んだものなのか、それが見えてきます。

それがわかれば、その服がいつまでもつものなのか、大体の予想がつき、それを考慮して買い物することができます。1シーズンで消費し切るものは賞味期限の短いものを買ってもよいし、10年着たいというものは、賞味期限ができるだけ長いものを選べばよいということです。

賞味期限が短いものとは、今だけの気分のものであり、賞味期限が長いものとは、これから続く流れを見越したシルエットのものです。たとえば、2000年だったら、タイトなシルエットのコートがその後、10年続く流れでしたが、2014年になって、完全に流れが変わってしまった後は、コートの流れはビッグシルエットへ向かっています。つまり、ビッグシルエットのほうが、流行という意味において賞味期限の長いコートになります。


また、この定点観測で流れがわかれば、次のシーズンにくるであろう、新しいスタイリングの形がわかります。「新しさ」とは、何も新しい「モノ」だけのことではありません。バランス、組み合わせ、着こなし方法など、今まで既に存在していたものの新しい組み合わせ方や、新しいバランスのとり方などのスタイリングもまた「新しさ」です。

流れがわかるようになると、次に新しく見えるスタイリングの形は何なのかがわかるようになります。それがわかれば、今持っているアイテムの組み合わせを変えるだけで、あるいは何か1つを付け足すだけで、新しく見えるスタイリングがわかるようになります。

その新しいスタイリングの気分を、いちはやく取り入れることも、おしゃれに見せるための重要な要素です。それは多くの人が取り入れる前に取り入れたほうがよりよいのです。見飽きるほどに街にあふれるころに取り入れたのでは遅すぎです。

たとえばタイトスカートには今、ハイヒールをあわせるべきなのか、スニーカーをあわせるべきなのかは流れを見ればわかります。流れが向かう組み合わせを選べば、そのスカートが、たとえ5年前のものであっても、新しく、おしゃれに見えます。


これら定点観測には、ニ、三のブランドを見るだけで十分です。たくさん見る必要はありません。それでも定期的にチェックするだけで、確実にわかるようになります。


20年前のように、コレクション情報が一部の人のものである時代は終わりました。私たちがインターネット上でアクセスできる情報は、環境さえ整えば、特別なものではなくなり、誰でも平等に見られるものになりました。

そこにはプロと素人の差はありません。私たちが今、接することができる情報は、限りなくオリジナルに近いものなのです。

私たちが学べるのは、オリジナルからだけです。二次情報ではなく、オリジナルに接することで、多くを学ぶことができます。


流れを読む、その上で買い物をする、スタイリングを考える。

私たち一人一人、それができるようになれば、誰かにおだてられて余計なものを買うことも、流行っているらしいからと、街にあふれるものを買うこともなくなります。

自分が自分専属スタイリストになるためにも、流れを読みましょう。

特別な才能はいりません。ほんの少しの労力と、そうなりたいという気持ちだけで、それは誰にでも可能です。

2014・09・15


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?