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誰も教えてくれなかったおしゃれのルール(アーカイブ)リバイバル

2013年を過ぎたあたりから、各年代のリバイバルが盛んになりました。

主に60年代、70年代、80年代、90年代がリバイバルしています。


ファッションに限らず、芸術全般は、過去のスタイルを取り入れて発展していきます。絵画におけるラファエル前派は、ラファエル以前の絵画のリバイバル、ゴシック ・リバイバルは、ゴシック建築の復興運動です。

ともに19世紀に起きた運動ですが、社会が行き詰ると、アーチストたちは、過去のアーカイヴに目を向けるようになります。なぜかというと、あたかも過去のほうが優れていたかのように見えるからです。


今がよければ、過去を振り返る必要はありません。過去に何かを求めざるを得ない状況があるからこそ、私たちは古さではなく、新しい発見をアーカイブに求めます。

そう考えると、21世紀に入ってまだ10年足らずではありますが、ファッションは行き詰っています。そして、この行き詰まりから脱出するまでは、さまざまな年代のリバイバルが繰り返されることになるでしょう。


実際のところ、リバイバルと言えども、その年代そのままのスタイルの再現ではありません。それは繰り返しではありますが、同じ軌道をめぐっているのではなく、未来に向かってらせん状に発展していきます。

ですから、70年代リバイバルだからといって、70年代に着たそのものを、そのままのスタイルで再現すれば、それが今風になるかといえば、そうではありません。


ではどうすればよいのか。

私たちが何を見て、これは70年代だ、80年代だと言うのかといえば、それはシルエットとスタイリングです。その他、色と素材もありますが、主なものはシルエットとスタイリングになります。

繰り返されているのは、70年代のシルエットであり、70年代風のスタイリングです。ですから、リバイバルがあらわれて、それを取り入れたいのだとしたら、70年代の服をそのまま着るのではなく、シルエット、またはスタイリングを取り入れればよいのです。

70年代だとしたら、

シャツの上にニットのベスト、ボックスプリーツのスカートにハイソックス、ローファーの学生風スタイル。または、ヒッピー風のフリンジがついた革のジャケットにマキシ丈のドレスやスカート、それらに底に厚みのあるブーツやサボの組み合わせ。

80年代だったら、とにかく何もかもがビッグ・シルエット。自分にぴったりのサイズのものよりワンサイズ上のものを選び、シルエットを大きくした分、アクセサリーは大きく、靴はごつく、フラットに。黒くごついメンズライクの靴に黒いソックスをあわせるのも80年代のスタイルです。

それらは新しいコレクションを見てもわかりますが、古い映画のファッションを参考にすることもできます。

60年代だったら、「シェルブールの雨傘」や「おしゃれ泥棒」、70年代だったら、「追憶」や「アニー・ホール」、80年代だったら、「マドンナのスーザンを探して」や「プリティ・イン・ピンク」がお勧めです。


これらの雰囲気を出すためには、何もすべて新しくする必要はありません。今まで持っていたものを新しく組み合わせ直してみるだけでも、十分に雰囲気を出すことは可能です。

たとえば、タイトスカートにヒールのパンプスをあわせていたものを、スニーカーとソックスに変えてみる、スウェットシャツにロングスカートをあわせてみるなど、それまではしなかった、しかしほかの年代ではしていた組み合わせをしてみるだけでも、十分に雰囲気は出せます。


また、何か買い足すにしても、たとえば、80年代風にしたいのだったら、黒いソックスを買い足す、スウェットシャツは大き目のものを選び、ビッグシルエットを作るなど、今まで買っていたアイテムの色を変えたり、サイズを大きくしたりすることで対応することができます。


注意すべきなのは、70年代リバイバルだからといって、70年代のものを古着で全部そろえたりしないようにすることです。

実際やってみればわかりますが、そんなことをしてみても、今の気分にはなりません。必ずどこかしら進化しなければ、それは今ではありません。


進化したのは何でしょうか。

進化したのは、素材であり、技術であり、洗練の度合いであり、そして何よりも自由度です。

60年代よりも70年代に、70年代よりも80年代に、80年代よりも90年代に大きく変わったもの、それは女性の自由の範囲です。

70年代、ジーンズで大学に通うだけで非難されました。しかし、今では高級ホテルにさえ、ジーンズでチェックインできます。スニーカーは、大人のはくものではありませんでしたが、今では、大人がこぞってスニーカーを選びます。

ファッションの中の不平等や差別の解消と、女性の自由の拡大は相関関係にあるのです。ですから、決して過去に戻ってはいけません。


デザイン・ソースとして、アーカイブを参照しつつ、その自由は決して手放さない。70年代の若者が、そのスタイルでは行けなかったところへ、今の私たちは行くことができます。


ジーンズにダイヤモンドをあわせることも、ドレスにスニーカーにあわせることも、今の私たちには可能です。それは大きな進化であり、進歩です。


過去の豊富なアーカイブを自由な心で再現する。もはやここには禁止事項はありません。なぜならそれは戦いによって勝ち取ってきたものだからです。決してそのことは忘れないように。

今こうして自由でいられるのも、タブーを覆し、非難する声にも負けなかった、先駆者がいてくれたおかげなのです。

2014・09・22


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