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誰も教えてくれなかったおしゃれのルール(アーカイブ)冬のマリンルック

おしゃれに見えるということの条件の中に、他人とは違ったものを着るという項目が、ひそかにあります。

他人とはちょっと違う格好をするだけで、人目を引き、あ、おしゃれだなと思わせることができます。この場合の「他人」とは、大多数の人、という意味です。


他人とは違ったものを着るためには、いくつかの方法が考えられます。

まず1つ目。

奇抜なデザインのものを選ぶ。他人が着ないような、奇抜なデザイン、たとえば袖が4本あったり、余計なところが膨らんでいたり、実用を完全に無視したような、そういったデザイン、できれば有名デザイナーがデザインしたものを着る。

2つ目。

誰もが認めるおしゃれブランドの、それとわかるものを着る。本当におしゃれかどうかはともかく、いわゆるロゴやブランド・マークが入った、誰が見ても、あ、それ、○○だよね、とわかるものを着る。

3つ目。

デザインは何の変哲もない、しかも、有名デザイナーズ・ブランドのものでもないが、その季節、ほかの人が着ないようなスタイルを、あえてする。


この3つのうち、 1つ目と2つ目は、お金が解決してくれます。簡単と言えば簡単です。お金だけの問題ですから。

では、お金がなくても他人とはちょっと違うスタイルにしたい場合、どうしたらいいかという答えが3つ目です。

これはお金は別にかかりませんが、工夫とセンスが必要です。そういう意味では、難易度は一番高い選択肢です。


この3つ目のスタイルとして、去年は「冬のホワイト」を取り上げました。

冬に真っ白いコートを着る人は少数派。しかし、あえてそれを選択することで、おしゃれに見えるという方法です。


それと似たような方法で、冬のマリンがあります。マリン、つまり海に関するスタイルは、どちらかというと、夏向きのものが多いです。夏の湘南海岸にあんなに人がたくさんいたのに、冬は閑散とするのと同じぐらい、冬向きのマリン・ルックは、ぐっと少なくなります。しかし、であるからこそ、冬のマリンはおしゃれに見えます。みながこぞってマリン・ルックを取り入れる夏よりも、それは数段おしゃれ度が高いのです。


しかも、マリン・ルックというのは、案外、簡単に誰でも取り入れることが可能なスタイルです。

基本は、紺色+白の2色、または紺、白、赤のトリコロールの3色で構成することです。そして、この色の範囲を決して出ないようにして、(靴とジュエリーは除きます)そこにマリン・テイストのアイテムを加えます。

たとえば、ボーダー、ピーコート、アラン・ニット、デッキ・シューズ、セーラー・カラー、水兵帽(船長さんがかぶるような帽子)などです。それはほんの1点でも構いません。けれども、厳格に色を絞ればマリン・ルックになります。

そして、全体のコーディネイトをする上で重要なのは、白をきかせること。白い範囲があまりに小さいと、マリンにはなりません。靴でもバッグでも帽子でもマフラーでも、白をきかせれば、それらしくなります。


一番簡単なのは、みんなが好きなボーダーのニットを取り入れることでしょう。白と紺、あるいは白と赤のボーダーのニットを取り入れつつ、全体の色数を絞る。これだけで、立派なマリン・ルックです。


この簡単なマリン・ルックを実際、冬にやっている人は少数派です。雑誌では見るけれども、本当にそういう格好をしている人は、ぐっと少ないと思います。だからこそ、あえてするのが粋でおしゃれ、ということになるわけです。


確かに、世の中にはお金で解決できる問題がたくさんあります。お金がたくさんあればそれで済むのに、と思うことも多々あるでしょう。ファッションは、特にその傾向が強いです。しかも、年々、その傾向は強まっています。


けれども、忘れないでください。どんなにお金があったとしても、手に入れられないものもあるのです。そして、お金で買えないものこそ、誰かに奪われることも、劣化して捨てなくてはならなくなることもないのです。


ファッションは、そのための訓練をする場でもあります。あえてお金で解決しない方法を選ぶことによって、あなたの目に見えない口座に貯金がふえます。その貯金の価値を、初めのころは気付かないでしょう。

けれども、数年たって過去を振り返ったとき、ああ、あのときお金で解決しないでおいてよかったと思える日がきます。それは誰にも奪えないもの、誰にも真似できないもの、欲しいと言われてもあげられないもの、そして、あなたしか持っていないものです。


紺、白、赤をテーマカラ―としている方々は、今からどうやったら冬のマリンができるか、考えてみてください。

それは、たとえば白いマフラーを付け足す、靴を白いスニーカーに変えるといったような、簡単な方法かもしれません。

真冬の海岸線を散歩する、自分の姿が想像できたなら、あなたのマリン・ルックもきっとうまくいくことでしょう。


追記:必ずしも紺色のアイテムを持っているとは限らないと思います。その場合、紺を黒や濃い茶に変えてみても、変形マリン・ルックになります。トリコロールがベストですが、そうでない場合、自分なりのマリン・ルックができないか、考えてみてください。

2013・10・22


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