誰も教えてくれなかったおしゃれのルール(アーカイブ)着回し
ワードローブの数をしぼり、少ない数で毎日のコーディネイトを考える上で、着回し、すなわち、1つのアイテムをそのほかのアイテムとあわせて、回して着ることは、必ず必要になります。
よく雑誌などで、「着回しアイテム」などといって、ジャケットなり、スカートなりが紹介されていますが、この前、そういった記事を見ていて、そこには重大な欠落部分があることに気付きました。
これを読んでいらっしゃる皆さんも、雑誌で「着回しアイテム」として紹介されているアイテムを購入したことがあるかもしれません。しかし、それではたして、着回しできたでしょうか。雑誌で紹介されているほど、うまくいかなかったのではないでしょうか。それにはちゃんとした理由があります。
雑誌などで紹介されている「着回しアイテム」には、それが着回しできるための条件があるのです。そして大概、雑誌の記事において、その条件についてふれられていません。
その条件とは、
「ここで紹介しているワードローブ内において着回しが可能だ」ということです。
つまり、雑誌で紹介されている、その組み合わせの中でのみ可能ということで、それをほかへ持っていっても、可能かどうかはわからないのです。
これは着回しをする上での絶対条件です。
この前提が欠けていたら、着回しはできません。
ワードローブは1つのチームです。
チーム全体で1つの働きをします。
ですので、ほかのチームのいかにも着回しできそうな、万能選手がそのチームに入団したとしても、チームの中での位置や立場がなければ、使い物にはなりません。
あちらのチームでは活躍していた、だけれども、こちらにきたら何の活躍もできなかった、そういうことが着回しのアイテムについても言えます。
また、よく雑誌で紹介されている「着回しアイテム」は、デザイン性の少ない、無難な感じのジャケットやパンツが多いですが、だからといって、チームにふさわしくなければ、着回しはできません。
逆に、とても変わっているデザインの、あまり見たことがないようなジャケットだとしても、それが、そのチームにふさわしければ、出番も多くなります。それは、特異な才能の選手が、あるチームにおいて、大活躍するのと同じです。
そう考えると、着回しできるための条件は、以下のとおりとなります。
自分がいつも選ぶ色と合致していること、
自分のテイストに合致していること、
そのアイテムが好きなこと、です。
最後の、「そのアイテムが好きなこと」は、一番重要な点です。
どんなに自分のカラーと合っていたとしても、
どんなに自分の好きなテイストと合っていたとしても、
どんなに雑誌でそのアイテムが推奨されていたとしても、
どんなにシンプルなデザインでも、
好きでなければ、それを週に何度か、着回してまで、着る気は起こりません。
皆さんも、自分が毎日選んでいる服をチェックしてみてください。結局のところ、好きなものばかり着てはいませんか。
それが全体のコーディネイトから見たら、何かそぐわない点があったとしても、また今日も同じものを着てしまう、そんなことはないでしょうか。
好きには理由など、ありません。
理屈では、それよりもいいジャケットがあるとわかっている、それを着れば、何となくさまになる、だけれども、やっぱりこのジャケットを選んでしまう。
理由はただ1つ、それが好きだから。
好きでないものを、着回しなどできません。
ファッションは、理屈をこえた世界です。これが何となく格好よく見える、これが何となく好き。理由はない。ただ好き、それだけです。
そして、その好きという感情は、どこからきたものでしょうか。
自分でもどうしてかわからない、だけれども、好き。
どうしてこんな変なものが好きなんだろう。
わからないけど、好き。
もっと違うものを好きになったほうがいいような気がするし、みんなもそう言う。
だけれども、これが好きなの。
理由は、自分でもわからない。
いつもそんな調子ではないでしょうか。
自分の好きという感情を自分で選べたことなど、一度もなかったのではないでしょうか。
好きという感情は、自分で選んだり、決めたりしたものではありません。
あなたより1つ上の世界の誰か、たとえば天使が、あなたにそれを好きになるように、そそのかしているのです。
あなたは、キューピッドの矢に射られたごとく、それを好きにならずにはいられません。
だから、自分では理由がわかりません。
だから、自分ではどうすることもできません。
本当のところ、好きという感情を、自分で選ぶことはできません。
これはほかの分野においても同じです。
とてもいいものでも、どうしても好きになれないものがあります。
逆に、どうしようもないと思っても、好きでたまらないものがあります。
何でも自分で決められると思っていたら、大間違いです。
私たち人間は、自分の「好き」という感情すら、自分で選べることができません。
あなたが毎日選ぶもの、そこには必ず「好き」という気持ちが必要です。
しかも、それは自分で選んだものではない。
自分で選んだものではない、その気持ちを自分自身に問うてみてください。
私はこれが本当に好きなの?
私はこれが本当は嫌いなの?
自分でもその理由はわからないでしょう。
そのわからないものをわかろうとするところから、自分の「好き」の追求が始まります。
そして、その「好き」の追求ができて、初めて「着回し」はできるようになるでしょう。
毎日毎日自分に問うてみる。
変化する自分の気持ちを追いかける。
理由もなく、ふいに、つき動かされるようにふれてみる。
それは、自分の「好き」を決めている、上の存在の意向を知るための、永遠の訓練です。
2012・10・25
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