誰も教えてくれなかったおしゃれのルール(アーカイブ)紺色(ネイビーブルー)
日本語で言えば紺色、英語だったら、ネイビー・ブルーやインディゴ・ブルーなど、ダーク・ブルーの服は、誰でもが一度は着たことがあるのではないでしょうか。なぜなら、紺色はまず制服に使われることが多いですし、ジーンズの色であり、ピーコートやトレンチコート等、軍服に多く使われる色だからです。
そして、男性のスーツばかりでなく、女性のスーツにも紺色は多く使用されます。また、すべてのアイテム、Tシャツ、スカート、パンツ、靴下まで、紺色は必ず売っています。どこででも手に入りやすいのも紺色のアイテムの特徴です。
色彩心理学を出すまでもなく、紺色は冷静さ、知的さを人々に感じさせます。そこからはまじめな感じや、仕事ができるイメージを想起させます。
紺色を身につけることにより相手に与えるイメージは、どれもポジティブなものばかりなので、そんな印象を誰かに与えたい人にとって好まれる色です。
また、紺色は、黒とも、茶色のグラデーションとも相性がいいです。紺色と黒の組み合わせは、上品にも、モードっぽくもなり、コーディネイト全体を完成させやすい色合いです。
紺色の利点はまだあります。
紺色は、黒ほどに素材のよしあしを浮かび上がらせません。たぶん、光の反射の具合が黒とは違うのが原因だと思いますが、粗悪な素材の黒は、すぐそれだとわかるのに対して、紺色の場合、あらが黒ほどわかりません。
手で実際にさわってでもみない限り、学生の制服に使われる紺色のウール・ギャバジンと、ハイブランドのウール・ギャバジンの違いはわかりません。
このように、多くの利点を持っている紺色という素材ですが、唯一の欠点と言えば、多くの人が持っているので、平凡に陥りやすく、その人らしさを出しにくいという点でしょうか。あまりに普通すぎるということにもなります。
このあまりにも凡庸な、ありふれた、しかし魅力的な紺色を、その人らしく着るにはどうしたらいいか。いくつかポイントがあります。
まずは、差し色で自分らしさを出してみること。紺色に赤を差し色にしたら、そこに白を足すだけでトリコロールになります。これは完璧ではあるけれども、ありふれた色合わせです。この赤を、たとえば黄色にしてみるだけで、紺色はより引き立ち、印象はがらりと変わります。もちろん黄色ではなくても、紫でも、ショッキング・ピンクでも、多くの色が紺色と合わせられます。自分の好きな色を持ってくることで、凡庸から抜け出すことは可能です。
つぎに形の問題。
紺色のピーコートやトレンチコートは定番です。ですから、どうしてもありふれてしまいます。しかし、案外、紺色のブラウスやシャツは定番ではありません。同じ紺色でも、アイテムによってはありふれていないものがあります。紺色の学生用のバッグは多数ありますが、大人用の紺色のバッグは極端に少なくなります。
靴にしても黒い靴ほど、紺色の靴はありません。たとえば、紺色のブーツなど、ほとんど売っていません。
このように、同じ紺色でも、定番でない形、アイテムにずらしていくことによって、人とは違った感じを出すことができます。
では最後に、紺色の定番を着て、それでもなおその人らしいスタイルについて書いておきましょう。
2014年ごろ、ノームコアというファッション用語が新しく出現しました。これは、肝入りのノーマルということで、デザインも、色も、徹底的に普通のものを選ぶスタイルでした。
この「ノームコア」を志向していた人たちが多く選ぶ色の1つは明らかに紺色でした。しかし、彼女たちは決して凡庸ではありません。
たとえばモデルであるとしたら、彼女たちは非凡な体型を持っています。そのスタイルは紺色の定番アイテムを身につけることによって、より一層引き立ちます。
また同じように、白いシャツにジーンズというようなスタイルを好むデザイナーたちはどうでしょうか。彼らの体型は非凡ではありません。しかし、彼らは非凡な才能の持ち主です。彼らがアピールしたいのは、着ている服ではなく、その才能です。彼らが誰かと会って話すとしたら、必要以上に服に注目がいっては、その才能が見えません。彼らは自分の才能を目立たせるために、あえてインディゴ・ブルーのジーンズを選びます。
もしあなたが何かの分野で、それは体型かもしれませんし、話術かもしれませんし、美しい顔かもしれませんが、非凡であるならば、あえて紺色の定番だけでコーディネイトしてみるのもいいかもしれません。
必要以上に服に出しゃばってほしくなかったら、服が余計な情報を伝えてほしくなかったら、それ以外の部分をぜひとも理解してもらいたいのなら、凡庸な紺色のコーディネイトは、それらを引き立てるでしょう。
服のことなど見ないでほしいとき、忘れてほしいとき、紺色は強い味方です。
紺色の服は、世界の意味のコードの中で、強固な意味を持っています。それが壊れることはありません。時にはそれを利用し、時にはそれに助けてもらい、時にはそこから抜け出して、自分なりの紺色との付き合い方を見つけましょう。
ダーク・ブルーは暗闇などではなく、明晰な知性です。
賢く見せるためではなく、賢いからこそ、使いましょう。
ブルーになるためではなく、クリアになるために使いましょう。
それは誰でも、いつでも、どこでも手に入れることができる、多くの人に平等な色です。
2014・04・21
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