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誰も教えてくれなかったおしゃれのルール(アーカイブ)季節感の新しい取り入れ方

最近のファッションは春夏、秋冬と、2つのシーズンでくくられることが多くなりましたが、90年代までは、春、夏、秋、冬と、シーズンごとに着るものを変えていました。

特に、日本の風土は四季がはっきりしており、季節にあわせて着るものを変えるということは、気候に合った行為であり、無理がありませんでした。


ところが、ここ数年、気温という意味で、夏と冬がとても長くなり、それに比例して、夏物と冬物を着る期間が長くなりました。長いものだと、5カ月ぐらいは同じものを着ることになります。


季節感を出すということは、おしゃれに見えるかどうかを左右する1つの要素です。しかし、ここのところ暑さ寒さをしのぐための衣服という衣服の大前提がまさって、どんな伊達でも、薄着をするわけにはいかなくなりました。その結果、ファッションは退屈さを増しました。


ファッションは、「同じである」ということを嫌います。

誰かと同じであったり、子供からお年寄りまで同じであったり、5月と10月で同じであったりすればするほど、おしゃれには見えません。

平均化は、世代や日常と非日常だけではなく、1年を通した季節でも進んでいますが、それでは面白くないのです。


ただ、実際に暑かったり、寒かったりするのもまた事実。これを無視した形で、服を選ぶことはできません。我慢にも限界があります。

気温がこのように変化してしまった結果、昔と同じ考え方で、季節感をあらわすことはできなくなりました。まず、そのことを認めるべきでしょう。


ではどうするか。ここからは、新しい考え方が必要です。


衣服において、季節によって変えてきたものは主に素材でした。夏には麻を、冬には羊毛を、それがシーズンの変化をあらわしました。つまり、気温の変化に対応する素材を変えることによって、季節感を出していたのです。

しかし、今、それは通用しなくなりました。残されたのは色とシルエットです。


シルエット、たとえば長袖と半袖などは、案外、季節感をあらわさないものです。リトルブラックドレスはノースリーブのものが多いですが、だからといって、真夏だけに着るものではありません。また、ジャケットは長袖が多いですが、夏に着ないわけでもありません。シルエットは、季節を表現するための要素とはなり得ません。


残るは色です。

実は、色こそが、季節をあらわす最もふさわしいものです。なぜなら、季節の移り変わりとは、光の変化にほかならないからです。太陽の角度によって変わっていく光の明るさ、きらめき、陰影を、はっきりと映し出すのは色なのです。


また、素材は近づかなければ認識できない性質のものですが、色は、近づかなくても一瞬で識別できる、いわば服の第一印象です。

私たちの視覚は、光の加減と色から季節を認識します。素材で季節を表現できなくなった今、色で表現するのが賢い方法だと思います。しかも、それは誰にでも、簡単にできる方法です。

簡単に言えば、夏は色の明るさをピークに、冬は暗さをピークに持っていきます。そして、そのピークを少しずつ前へずらしてもってくれば、より効果的になります。なぜなら、季節の先取りはいつでもおしゃれに見えるからです。それは新しさや珍しさを人々に印象づけます。


具体的にどうするか。

たとえば、真冬から春に移る季節では、自分のいつも着ている色を明るいほうへもっていきます。もしネイビーが自分のメインの色だったとしたら、それをグラデーションさせて、明るくしていけばいいのです。つまり、水色を全体の中に入れればよいということです。

ストールや帽子、バッグなどの小物だけでもいいですし、よりおしゃれ感を出したいのなら、素材はウールだとしても、水色のコートを選ぶとよいでしょう。そのようにすれば、暖かさと季節感、両方を表現することができます。


夏から秋へ向かう時期でしたら、この逆です。

水色だったものを一気にネイビーにもっていきます。小物が薄い茶色だったら、ダーク・ブラウンに変化させます。その場合、素材はコットンでもいいわけです。素材とシルエットは変えずに、色だけで季節を先取りしていくというやり方は、これからもっと提案されていくのではないかと思います。


これら、色によっては難しいものもあるかもしれません。特に、夏のグレーは少ないので、必ずしもグラデーションだけでうまくいかないでしょう。その場合は、さし色として春だったら明るい色、秋だったら暗い色を投入していけばいいと思います。


平均化、同一化は、実は楽なやり方です。誰かと同じ、季節が変わっても同じというのは、工夫も努力も考える必要もありません。しかし、楽なほうへいけばいくほど、人生は退屈となり、自分が主人公であるという感覚からは遠ざかります。楽であることが、面白いことではないのです。楽だけなものを、うらやましがることはありません。


せっかく四季のある国に住んでいるのですから、それを楽しみましょう。季節によって、服を変えていきましょう。

冬には冬の、春には春の、主人公にふさわしい舞台が、きっと待っているでしょう。

2014・02・03


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