1週間LINE生活をしてみた
LINEというアプリがある。
LINE株式会社の「2019年10-12月期 媒体資料」によると2019年6月末時点で、日本国内には8,100万人以上のユーザーがおり、人口の64%が使用しているらしい。そんなに使っているのか。「なんで!メールや他のアプリでいいじゃないか」という気持ちで生きているので、私はあまりというか、ほとんど使っていない。
そんな自分に「1週間、LINEアプリを使って生活してみてください」と依頼が来た。大丈夫? 人選ミスじゃない?
ルールは以下の通りだ。
・月曜日から日曜日までの1週間をLINEアプリだけを使って生活する。
・TwitterやFacebookなどのSNSアプリはもちろん、Googleマップなども使用しない。
以上、シンプルである。
ただ、私が会社員なので、昼間会社にいるときはメールや電話を使わせてもらった。会社で怒られたくないのだ。
編集部注:長いように見えますが、写真多めなので気軽に読めます。
1日目 LINEを使ってみる
初日、とりあえずLINE以外のアプリをすべて非表示にした。
画面がシンプルすぎる。いつも空き時間はTwitterを見るのだが、スマホに目を向けると寂しい画面が出てくる。時間を潰せるアプリがないので、電車では窓の風景を見たり、人の動きを見たり、赤ちゃんのかわいさにやられたりした。
暇なので、LINE内のいろんなサービスを触っているうちに「LINEカーナビ」というアプリを入れてみた。AIアシスタント「Clova」を搭載しており、精度の高い音声入力が可能だ。
しかも道案内機能だけでない。5,800万曲以上の音楽を聴けるLINE MUSICやラジオが聴けるサービスradiko(ラジコ)などドライブを楽しくするコンテンツも搭載されている。
通勤時はニュースを聞いて、深夜になれば好きなラジオを聞きながら散歩する。今回の生活の中でこのradikoを重宝した。
とりあえず、小腹が空いたので試しにコンビニを探してみる。
家の周辺に主要なコンビニが全部あることを知った。1年ぐらい住んでいるのに知らなかった。
さらにLINEには株式会社ジョルダン提供の乗換案内アプリが入っているので、乗換情報も簡単に調べられる。
これさえあればお出かけに関しては安心だ。さあ向かおう。
今回、現役大学生の高橋さんにLINEについて話を聞いた。実際に目の前でやりとりをしながら教えてもらえるということで、まずは「友だち追加」をしてみようとLINEアプリを起動する。私の友だち一覧を見た高橋さんが小声で「少ない…」と言ったのを聞き逃さなかった。
一番下が今回追加した担当編集なので、元々2人しか入ってない。
矢継ぎ早に「この企画のためにこんなに少ないんですか?」と単純な疑問ながらも心をえぐる一言が飛び出る。言葉ってときにはナイフぐらいするどいな。心がえぐられたまま、インタビューはスタートした。
江ノ島:そもそもの疑問なんですけど、スタンプってどんな風に使います? 友だちとのLINEも文字だけしか送ったことがなくて…
高橋:文字だけだと寂しいときに、アクセントみたいな感じで使ってます。
文章を考えるのが面倒だったり、会話を終わらせたいときには「OK」や「了解」のスタンプだけ送ったりもします。
スタンプだけで会話をするときもありますね。
江ノ島:スタンプだけで会話…知らない文化だ…
試しにスタンプの送りあいをしてみた。なんだろう、感情のないやりとりになった。
慣れていない証拠だ。
江ノ島:「こいつ、普段は喋らない癖にポップなスタンプを送ってくるな」とか「センスない」とか思われるのではないかと思って、スタンプを送るのは恥ずかしさがありますね…
高橋:そうですか? そんなことあんまり考えずに使ってましたね。
江ノ島:ずっと思っていたんですけど、LINE以外にもメールやTwitterのダイレクトメッセージやFacebookのMessengerとか色々コミュニケーションをとるアプリってあるのに、別にLINEじゃなくてもよくないですか?
高橋:もう、メールは友だちに送った記憶が数年はないですね。メールアドレスも知らないです。Twitterもあんまり使ってないですし、メインのやりとりはInstagramのダイレクトメッセージか、LINEです。LINEがなくなったら連絡がとれなくなっちゃう人もいっぱいいますね。
もし初対面の人と連絡交換するならInstagram、仲良くなったら、LINEの交換が多いです。Instagramは不特定多数で、LINEは大事な人という感じです。
あと、LINEには「タイムライン」があって、中学生の頃は、その時々で流行りの質問テンプレートに答えていく「〇〇に聞きたい100のこと」や「今日あったできごと」みたいにブログな感覚で更新している人が多かったです。
中学生でLINEがあったということに驚きを隠せない。
その後、「『LINEあみだくじ』でサークルのリーダーを決めた」などのエピソードも聞いてインタビューは終了した。
江ノ島:LINE、交換してしまったんですけど大丈夫ですか?
高橋:大丈夫ですよ。こちらこそ、大丈夫ですか?
江ノ島:大丈夫です! 本当にありがとうございました!!
そして、このあと高橋さんから何かLINEのメッセージが来るかなと思って待っていたが、1文字も来なかった。来てほしいと思った。
2日目 LINE Payを使ってみる
この生活ではお金が使えない。1日目は使わずに会社のおかしや水で過ごしたが、さすがにご飯を食べたくなった。
そこでLINE Payである。スマホだけで決済が可能で、LINEを使っていれば登録も簡単だ。銀行口座を登録することもできるが、コンビニやセブン銀行ATMで自分の好きな分だけチャージをすることもできる。使いすぎるのが心配な人でも安心だ。
そして、こういうアプリでよくあるのが「使おうと思ったら対応をしていないお店だった」ということだろう。だが安心してほしい。アプリ内で使えるお店を調べることができるのだ。
実際に使ってみよう。「使えるお店」をタップすると、
使えるお店がマップ上で表示される。アイコンをタップすれば住所や電話番号などの詳細情報も表示される。
実際の店舗に行くとLINE Payのステッカーが貼ってある。LINEのキャラクターブラウンが目印だ。
「どこも使える場所がないので不便で困る」という展開があるのではと不安だったが、最寄り駅にある2軒のスーパーでも使用することができた。
決済完了画面もかわいい。
「今夜は祭りだ!」と思って海鮮丼を作った。LINE丼と言ってもいい。
この後足りなくて、コンビニでシュークリームとコーラを購入。この生活で太ることを確信した日だった。
3日目 LINEで出前を頼む夜
週の真ん中である水曜日の仕事が終わった。木曜日、金曜日と仕事を頑張るために今日は豪華なものを食べたい。
そこで「LINEデリマ」である。なんとLINEで出前をとることができるのだ。
住所を登録すれば、配達可能なお店が表示される。寿司やピザ、カレーや中華などメニューも豊富だ。どれを頼もうか悩みながらメニューを見ているだけで一日がつぶれる。
ちょうど、初回注文で1000円引きのクーポンがついてくるキャンペーンをやっていたので、なおさら迷うが今日はピザを頼もうと思う。チャージしてあるLINE Payで支払いもできるので現金も必要ない。キャッシュレスでスタイリッシュな出前だ。
ピザで10回言ってほしい。じゃあ上の食べ物は何だろうか。ピザである。いただきます。
夜空の下、ハンモックに揺られながら食べるピザの味はいつも食べるピザよりもリッチな味がする。あと、寒い。
心配になるくらい快適な生活をしている。大丈夫か。この日困ったことは、ドアを開けるのに手がピザソースだらけでドアノブをつかむのに躊躇するぐらいだった。
LINEの力ではどうしようもないこともある。
木曜日 I'll be backな映画を1200円で観る
娯楽に飢えている。LINEカーナビのラジオだけではもう刺激が足りないのだ。もっとかわいいネコの映像とか赤ちゃんの映像を観たい。TwitterやYouTube観たい。
何かないかと探したら、「LINEマンガ」、「LINE MUSIC」というものを見つけた。
「LINEマンガ」は少女マンガから青年誌に載ってそうなマンガなど多くの作品が載っている。
「LINE MUSIC」では自分の好きなアーティストを最初に選択すると、好みの曲を自動で選んでプレイリストを作ってくれる。ロックを選んだら気分が盛り上がるような曲ばかりで朝からテンションが上がった。
ただ、もっとこう、刺激的なものはないだろうか。そう思っていたら担当編集からこんなものを教えてもらった。
全国に展開する映画館、TOHOシネマズでは、毎週第3木曜日上映映画のインターネットチケットをLINE Payで支払うと1200円で映画を観ることができるキャンペーンをやっている。
これは行かなければと会社帰りに映画を観に行くことにした。
ただ、その前にご飯を食べたい。LINE Payを使えるお店で食べてもいいが、今回テイクアウトサービス「LINEポケオ」というのを使ってみる。
LINEアプリ上から実店舗のテイクアウト可能なメニューを事前注文して、指定した時間に取りに行くサービスだ。
「持ち帰りしたいけど待ちたくない」という人におすすめ。仕事終わりに最寄り駅のお店で注文して、帰りに受け取って帰るというスマートなテイクアウトができる。
試しに持ち帰りをしてみた。「ぼてぢゅう」というお好み焼きのチェーン店である。
普通にお好み焼きなんてテイクアウトしたら、かなりの時間がかかるだろう。「LINEポケオ」なら指定した時間に行くとそのまま受け取れた。
頼んだのはモダン焼きだ。家で食べたいが上映まで時間がない。なのでどこか座れるところを探して食べようと新宿の町を歩く。そして、気づく。新宿って座れる場所がない。
おいしそうなお好み焼きにテンションが上がる。すぐにでも食べたいので、公園で食べることにした。だが、ベンチにすでに人がいたので座るところがなく、ブランコで食べた。仕事をさぼっている感がすごい。
満足したので映画館に向かう。ちょうど上映されていたターミネーターを鑑賞した。
内容は詳しく書けないが「自分もシュワちゃんみたいになりたい」と思った。興奮のあまり、歩いている人に頼んで記念撮影をしてもらった。撮った後に気づいたが一緒に撮影したのは敵キャラだ。
いつもならTwitterに感想を書くのだが、Twitterが禁止されているので担当編集に気持ちをぶつけてみる。
ターミネーターの新作、全員観てください。
金曜日 銭湯に行きたい
週に1度は銭湯に行きたい。スーパー銭湯のようなにぎやかなところではなく、普通の昔ながらの銭湯がいい。でも、そんな場所、このLINEだけの生活では無縁だと思っていた。しかし、見つけることができた。これも何かの運命だと思うので行ってみる。
日暮里駅から徒歩5分ぐらいのところにある銭湯「斉藤湯」である。外観から良さが出ている。
この日、東京は最高気温8.5℃という寒さに震えが止まらない日であり、雨が降っていた。体の芯から冷えているのでさあ中へ入ろうと自動ドアの前に行くが開かず、closeのかけ札がかかっている。なんでだろうと周りを見渡したら理由がわかった。
金曜日、休みだった。
しかし、今日はどうしても銭湯に行きたい気持ちである。調べたらもう1軒、LINE Payが使用できる銭湯が立川駅にあった。
「立川湯屋敷 梅の湯」という銭湯である。銭湯でありながら、サウナや露天風呂まである充実っぷりである。しかも、それで千円しないのだから安い。ただ、梅の湯の魅力はそれだけではない。
普通の銭湯ながら、なんと軽食や飲み物が置いてあるのだ。お風呂上がりに飲むビールやレモンサワーは二度寝したときぐらいの幸せ。
かき氷はシロップかけ放題である。子どもたち、はしゃぎすぎるだろう。
また、マンガが1万冊ほど置いてあるので無限にいられる。天国は立川にあった。また、行きたい。
土曜日 保険に入ったので山に登りたい
会社に行かなくていい土曜日。家にずっといてもいいが、せっかくなら外に行きたい。そうだ、前から行きたかった高尾山に行こうと思う。
でも、ケガをしたり、なんかしらのトラブルをしたら怖い。なので、家にこもろうかと思ったが、なんとLINEには保険がある。
しかも今なら無料で加入できる。無料で入られる保険なんて初めて聞いたので、興奮してすぐに申し込んだ。
しかも現代人にはありがたい、スマホの液晶割れの補償もある。世の中の人たち全員、スマホの液晶画面を割ったことがあるだろう。
自分もおととしぐらいにスマホをポケットから出そうとした瞬間に手からすべり落としてしまって、急いで拾おうとした瞬間に足がもつれた。「うわー」と思いながら転び、とっさに手をつけたらスマホの上でそのまま全身の力が液晶に加わってバキバキに割れたことがある。
あと、ポケットから飛び出したスマホが道路に落ちて、トラックにひかれたこともある。粉々になったスマホを優しく抱き上げて泣いた。
そんな悲しいことを思い出したが、せっかくなので楽しい気分で高尾山に登る。紅葉で色づいた山々の景色を観ていると心が洗われるようだ。
きっと、いい登山日和になると思っていたが、
大雨である。ただの雨ではない。大の雨だ。前日の天気予報を見て「降水確率60%か。晴れろ!!」と思っていたが降水確率100%ぐらいの雨である。
途中、「金比羅台」という開けた場所がある。天気がいい日は都会の景色や東京湾が観られるそうだ。
「東京湾は見えますか?」
ひとつも見えない。
雨が降り続く中、登り進める。多分、雨の日の登山って、あなたが思っているちょうど3倍辛い。改めて(濡れるのって嫌だな)と思わされる。
そんなこんなで山頂に到着。計2時間ぐらいかかった。山頂には飲食店が数店舗ある。雨と寒さで芯まで冷えた体をあたためるために何か食べたい。
そうだ、LINEPayの「使えるお店」の地図を見ればどこで使えるかわかる。そう思って見たら、「スマホ、壊れちゃったかな」と思うぐらい何も表示されない。さすが、山。
現在位置だけがマップには表示されている。いやここであきらめてはいけない。絶対にあきらめない気持ちを持てば夢は必ず叶うのだから。
そんな気持ちでやまびこ茶屋に行った。山菜きのこ汁、とろろそばなど体が温まりそうなメニューがあるが、テレビで紹介されたというカレーライスを食べたい。
こういうお店のカレーライスが素朴でおいしいのだ。スパイスの辛さで体も温まるだろう。ただ、お店にはLINE Payが使用できるシールがどこにも貼っていない。
よし、聞こう。
「絶対に食べたい」という気持ちでお店へ向かう。
「すみません! LINE Payって使えますか?」
戻ってきたぞ!
どうだ! 使えるだろう! お願い使えてくれ!!
ダメでした。
山頂、スマホのPayサービスを利用できる場所がひとつもない。高尾山に登るときだけは、現金を持って行こう。
最終日 洗濯をしたい
家に洗濯機がないため、週に1回、コインランドリーで洗濯をしている。今回の生活では現金が使えないのでそういえばコインランドリーに行けていない。前日にずぶ濡れになった服もあるので洗濯はしておきたい。
友人に調べてもらったところ、どうやらLINE Payを使用できるコインランドリーがあるらしい。そこに行こう。友人にもついてきてもらった。
ただ付き合ってもらうのは申し訳ないので、「LINEクーポン」(ほとんどのチェーン店のクーポンが掲載されているので便利)を使ってコーヒーをおごってあげよう。
翌日、洗濯機を求めて旅に出た。8キロぐらいの重さがある洗濯物を持ってどれくらい歩けるのかという実験でもある。
最初は余裕かと思ったが、開始5分でもう腕が痛くなる。長い時間歩いたら腕がとれるかもしれない。そのときはLINEほけんでどうにかしてもらえるのか。確認してみたが腕がとれたときの保険なんてなかった。
あまりの腕の辛さに一度、歩いて見つけた公園で休むことにした。子どもたちが元気に遊ぶ姿がまぶしい。その元気、分けてほしい。
花ってきれいだな。ずっと見ていたい。でも、明日から着る服がなくなってしまう。再び、洗濯をする旅に出よう。
運動不足を感じながら歩く。友人の「重い物を持って歩くと修行みたいでかっこいいですよ」に「いい加減に千駄ヶ谷」と答えた。今の体力を全部使ったダジャレだ。
限界である。重い物を持っていられない。諦めて近くのマンションの住人に「すみません、洗濯だけさせて下さい」と言いに行こうかと思った瞬間、コインランドリーが目の前に表れた。どうやら目的の場所に着いたようだ。
多分、コロンブスがアメリカ大陸を見つけたときと同じぐらいのうれしさである。「ありがとうございます・・・」とコインランドリーに伝えた。
洗濯から乾燥までやってくれる。しかも、携帯番号を入力すれば終わるタイミングでコインランドリーから電話がかかってくる。ずっと待っていなくて大丈夫なのだ。
ここまでの苦労をすべてを洗い流す気持ちで洗濯をしまくり、フワフワに乾燥させてやった。
全然関係ないが、洗濯乾燥機って便利だ。いつも使っている家の近くのコインランドリーに洗濯乾燥機がないので設置してほしい。友人に「洗濯乾燥機って便利だね」と伝えたら、「まず、家に洗濯機を買った方がいいです」とごもっともな意見を言われ、ぐうの音も出なかった。
これで1週間LINE生活は終わった。
まとめ
1週間使ってみて思ったのは、「やりたいことが全部できるな」だった。LINEアプリ関連をインストールするだけで、マンガも音楽もお金も持ち歩ける。しかも、割引サービスやクーポンも使えるので現金で支払うよりも安くなる。少し不便だったのは、Googleマップのような地図アプリがなかったので迷子になることが多かったことである。
あと、友だちが少ないとLINEの通知がほぼ公式サービスからしか来ず、孤独を感じるので友だちがほしいです。ありがとうございました。
TEXT:江ノ島茂道(@enoshigemi)EDIT:みんなのものがたり編集部