見出し画像

活用型情報モラル教材「GIGAワークブック」導入事例のご紹介 第1回 <神奈川県鎌倉市>

一般財団法人LINEみらい財団(以下、LINEみらい財団)では、GIGAスクール構想の中でより重要となっている「情報モラル」と「情報活用」の知識・思考力の育成や向上を図るために開発した、活用型情報モラル教材「GIGAワークブック」の、自治体・学校に向けた説明会を2022年10月18日に開催しました。

そこで、鎌倉市教育委員会教育指導課 指導主事 濱地優氏および鎌倉市立深沢小学校 教員 田中智明氏、阿部桃子氏にGIGAワークブック導入の経緯や授業実施時の教員の声などについてお話いただいた内容を紹介します。

■鎌倉市でのGIGAワークブック導入事例(鎌倉市教育委員会 濱地優氏)


1. 自治体としての導入の経緯

現場の取り組みと、LINEみらい財団の「SNSノート」がマッチング
GIGAスクール構想が前倒しになり、鎌倉市においても端末の導入や回線の整備などが2021年度から本格的に始まりました。同時に、機器の使い方はもちろん、どのように使っていくか、また情報モラル教育をどのように行なうかといったことも課題として挙がってきました。

そのような中で、鎌倉市教育委員会でGIGAスクール構想推進校として指定している学校のひとつである深沢小学校から、東京都のある区の情報モラル教材を拝借できないかという相談がありました。そこで、教育委員会が仲立ちとなり、深沢小学校と東京都のその区とでやりとりしてもらいました。
一方で、鎌倉市教育委員会としても、市として情報モラル教育を推進していかなくてはいけないという問題意識は抱えており、そんな折、LINEみらい財団の「SNSノート」という教材と、その各自治体版があるということを知りました。

この2つがマッチングして、深沢小学校でSNSノートの鎌倉版を作ってもらえないかという話になったのが発端です。
LINEみらい財団、静岡大学の塩田准教授、また深沢小学校といっしょに、まずは高学年版の情報モラル教材を試行錯誤しながら作りました。2022年度は、深沢小学校が実際に授業実践や保護者への授業公開と啓発も積極的に行なっていきました。
今後は、深沢小学校の取り組みを鎌倉市全体に広げていきたいと思っています。

2.市内学校への普及の方法と研修予定など ~質疑応答より~

先生がすぐ使えるよう、ネットワークで共有と周知を行なった

<導入にあたり困ったことは?>
教育委員会として困ったことはございません。強いて言うなら、導入段階でどのような教材を入れていったらいいのか、作成していったらいいのかというところは困っておりました。これは、LINEみらい財団との出会いで解消されたと言えます。

<鎌倉市内への普及の方法は?>
鎌倉市全体で教育ネットワークを構築していますので、先生がすぐ使えるよう、共有できるフォルダにGIGAワークブックを置き、各学校に周知しました。
また、鎌倉市ではiPad端末を使用しておりますので、全児童生徒・教職員のiPad端末に、GIGAワークブックが置いてある鎌倉市のホームページのリンクのショートカットを投げて、そこからすぐに使えるようにしました。

<2023年以降の研修予定は?>
教職員に向けての研修を(LINEみらい財団から講師を派遣してもらうのではなく)自走できるようにしていきたいと思っています。つまり、研修のための研修のようなものも学んでいかなくてはいけないと考えています。

■鎌倉市立深沢小学校でのGIGAワークブック導入事例(田中智明氏、阿部桃子氏)


1. 学校としての導入の経緯

実践で見えてきた課題を解決する教材をLINEみらい財団と一緒に開発

<GIGAスクール構想で見えてきた課題とは>
鎌倉市立深沢小学校は、児童数約800名、職員約60名の鎌倉市でいちばん大きな学校です。鎌倉市教育委員会よりGIGAスクール構想推進校の指定を受け、2022年度で2年目となります。

当初は、端末の活用や情報モラルに関する約束やルールを作り、児童のトラブルや問題行動に対してその都度指導を行なっていました。

しかし、次第に課題が出てきました。

  • (約束やルールの)項目が多すぎて、児童も職員も意識しづらい

  • 使用を制限・抑制するためのルールでは活用の範囲が狭まり、実践能力の向上につながらない

  • 学級による活用状況の違いなどから、児童の意識や職員の指導に差が出た

これらの改善を行うと同時に、まずは職員が使ってみようと思える教材でないと、いくら計画を立てても意味がないと感じ、誰でも使いやすいような教材や情報モラル教育の進め方を調べていきました。

<きっかけはLINEみらい財団の「SNSノート」>
その際にLINEみらい財団が、東京、大阪、長崎、静岡などと連携して作成していたSNSノートという教材があることを知りました。そこで、鎌倉市教育委員会にコンタクトを取っていただき、鎌倉市版を作っていこうという話になりました。

打ち合わせでは、とにかく誰でも使える教材にしたいということを伝え、これまでのSNSノートに次のような点を加えていただきました。

  • 学校や児童の実態に合わせるため、学校ごとのオリジナルページ

  • 教員が教えるのではなく、児童が自分で操作を確認できるページ

  • 限られた時数の中で持続して取り組んでいけるように、15分のモジュールで学習できる内容

  • 授業準備に対して負担感や抵抗感のある先生も多いので、それぞれの内容に対する手引き

そして、2022年7月に「GIGAワークブックかまくら」のスタンダード版(主に小学4年~6年向け)が完成しました。その際には教材開発に携わっている静岡大学の塩田准教授に出前授業をしていただきました。多くの職員にGIGAワークブックかまくらを活用した授業の手本を見せていただき、とても参考になりました。また保護者や職員向けに講演会もしていただき、GIGAスクール構想に対する意識も高まったと思います。多くの児童、保護者、職員から、今後の活用に対する意欲や期待を感じられる声が上がっていました。

一方で、まだまだ課題も多くあります。

特に端末の活用が進んでいない学級や、関心の低い家庭に対するアプローチの仕方を現在も試行錯誤しています。

<「TTFG ~つながろう・つなげよう・ふかさわ・GIGA~ 」学習時間の設定>
「TTFG(つながろう・つなげよう・ふかさわ・GIGAの略)」と名付けた、情報モラルやiPadのスキルを学習する時間を設けています。生活、総合、道徳、特活等の余剰時間を活用して、2週間に1度の朝学習(15分)や、学期に数回の授業(45分)を設定しています。各学年でその時必要な内容をGIGAワークブックかまくらから選択し、扱ってもらっています。

TTFGという名前を付けて学習時間を設定することで、予定表などで児童や保護者にも周知することができ、少しずつですが、学校としてGIGAワークブックを活用する時間や端末に触れる時間を確保することができるようになっています。

2. 教材を活用してみて ~深沢小学校教員の声~

伝えるべきことが明確になり、児童も考えながら学習を深められる


実際にGIGAワークブックを使用した授業をしてみて、教師が感じたことを紹介します。

●15分でできるテキストは、モジュールの時間に行えるため取り組みやすい
本校では、朝の15分間のモジュール時間にGIGAワークブックを使用して情報モラルについて学習しています。45分間の授業は難しくても、朝の時間ならば行いやすいです。 
● テーマごとに15分と45分に分かれているため、児童やクラスの実態に合わせ、ワークブックを活用することができる
45分と設定されている教材も、15分ごとに切って授業ができるように作られています。15分という短時間であれば授業としても取り組みやすいのではないでしょうか。
● GIGAワークブックに沿って進めれば、児童もわかりやすく学習することができる
GIGAワークブックがないときは、情報モラルは何を教えればいいのかわからず、問題が起こってから指導するというような状況が多くありました。この教材ができてからは何を伝えるべきかが明確なため、何もない時はテキストの順番どおり進め、早急に伝えたいことがあった場合はそれに関したページを使用して子どもたちに考えさせることができます。
● 活用の手引きがあるため進めやすい
GIGAスクール構想やICTについて特別な知識がなくても、手引きの内容を把握しておけば授業をスムーズに進めることができます。
● 話し合いながら学習する形式になっているため、児童が各自考えることができる
GIGAワークブックは一問一答のような形ではなく、自分の考えをまとめてからグループで協議し、クラス全体で共有するという流れになっています。子どもたちが互いに考えを共有することで、様々な考え方を知る機会にもなり、情報モラルについてより深く考えることができました。

3. 教材を活用してみて ~深沢小学校児童の声~

自分を振り返り、情報モラルのルールを守るきっかけに

使ってみた児童の声を紹介します。何度か授業を行なった後に、良かったところ難しかったところについてアンケートを取りました。

● みんなで話を共有できて良かった
話し合いや意見の共有を行うことが、児童にとっても考えを深められて良い学習になっていたことがわかります。
● 自分のiPadで確認しながらできる。書き込みやテキストを入れることもできるから良いと思う
本校では、Google Classroomか、iPadのAirDrop機能を使い、ワークブックをPDFで配信しています。PDFなので、ただ見るだけでなく「ブック」アプリのマークアップ機能を使って記入することができます。そうすることで、子どもたちも積極的に課題に取り組めるようです。
 ● 振り返りができた
子どもたちは、わかっていてもルールを破ってしまうことがあります。そんな時にGIGAワークブックで学習する時間があることで自分を振り返り、ルールを守ろうと思うようです。実際に、調べ学習をする授業中に関係のないことを調べてしまった児童がGIGAワークブックで学習したことで、学校でのタブレットの使い方は学習の目的で使うのだということを再確認でき、そのようなことはしないように気を付けるようになりました。 
● クイズ形式で考えるので覚えやすかった
「〇〇はやってはいけません」とただ伝えるだけでなく、問題を自分で考えるため、納得してルールを守ることができているように感じます。

難しかったところについては、「特になし」という児童が多く、何人か「文字の入力、記入」、「問題の内容」という回答がありました。

文字の入力については、タブレットを普段から使用して慣れさせていく必要があると思います。問題内容については、GIGAワークブックを順番に続けてやっていくことで、だんだんと身に付いていき、内容が定着していくと考えています。

このように情報モラル教育についての不安がGIGAワークブックを使って学習を行なったことで、安心感に変わりました。

■鎌倉市教育委員会様の導入事例 まとめ

GIGAワークブックかまくらは、現場の先生方の声を取り入れ、静岡大学の塩田先生ともいっしょに開発した教材です。たんに情報モラルとして気を付けるべきことや守るべきルールを学習できるだけでなく、積極的にICTや情報端末を活用していけるような内容となっています。鎌倉市深沢小学校での実際の授業において、先生・児童双方からの好評を得ることができました。

現在、情報モラル教育、また児童たちのICT活用にお困りの先生方にぜひご活用いただけますと幸いです。

鎌倉市教育委員会様、深沢小学校様ご協力ありがとうございました。

LINEみらい財団は今後も、教育現場や社会の変化にあわせ、情報モラル等に関する教育活動に取り組み、子どもたちがデジタル社会で生きる力を養うことを支援してまいります。

GIGAワークブックかまくら(鎌倉市HP内)
GIGAワークブックの詳細、お申込みはこちらから


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?