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GIGAワークブック2024年度版の進化と、授業前後の児童の意識変化【後編】

LINEみらい財団は、2024年3月8日、「2024年度版GIGAワークブック活用セミナー 〜教育現場ニーズに対応した最新教材情報と、授業前後の児童の意識変化データを公開〜」を自治体様および学校様向けにオンラインで開催しました。
このセミナーでは、活用型情報モラル教材「GIGAワークブック」の2024年度版での新規追加コンテンツと現在制作を進めているサポートツールのご案内、そしてGIGAワークブックを使った授業前後での児童の意識変化調査のデータ公開等を行ないました。
▼アーカイブ動画はこちらからご覧になれます。

セミナーのレポートを前編・後編の2回に分けて掲載いたします。
この【後編】では、LINEみらい財団が行なった「GIGAワークブックを活用した授業による児童の意識変化調査の速報」の報告と、メディアに掲載された「GIGAワークブック」活用事例等を紹介します。
▼【前編】はこちらから
https://note.com/line_mirai/n/n6cc9bc6107db


■GIGAワークブックを活用した授業による児童の意識変化調査の速報(LINEみらい財団 調査研究部 鈴木信也)

※本データは速報数値となっており、今後の詳細な分析により有効回答数や、回答データ、比率等は変動する可能性があります。

1.調査概要と結果の要点

「GIGAワークブック」を使った授業の効果が出ていることが確認できた

子どもたちのデジタル環境と教育現場が変化し、学校現場では情報モラル教育の必要性についての意識が高い一方で授業時間が限られる中、授業で行なわれた情報モラル授業の効果を定量的に示すデータが全国的に事例が少ないという現状があります。そこで、効果測定データを取得・分析し、効果を最大化するための活動につなげ、教育現場における情報モラル教育の実施に貢献することを目指すために、LINEみらい財団では「GIGAワークブック」を活用した授業による児童の意識変化の調査を行ないました。
 
この調査では、明星大学 教育学部の今野教授の監修のもと、2023年12月から2024年2月末まで、「GIGAワークブック」を使った授業前後での児童・生徒の意識変化について、GIGA端末を使ったウェブアンケートを実施いたしました。回答は、小学校4年生から6年生が970名、中学校・高校は915名となっています。
児童・生徒の主なトラブル状況データや、新しい情報モラル教育のポイントを踏まえ、「GIGAワークブック」の中から教材のピックアップと授業設計を行ないました。

調査の結論として、授業を実施した後では、各テーマの狙いとなる効果がしっかり出ていることが確認できております。
主なポイントとしては、
1. 情報活用と情報モラル、それぞれのポジティブな結果が出ている。
2. 私物端末への効果が高い。
3. 家庭への共有ニーズも確認できた。
4. 子どもたちが楽しく積極的に発言、自分事化(※)できていた。
 ※教材で示されたトラブル等について、たんなる机上の事例としてではなく自分事(じぶんごと)として扱うことができる態度。
というところが挙げられます。

2.小学4年~6年生向け「スタンダード」の結果

SNSの使い分けやトラブルについての理解が向上し、私物端末への良い影響も見られる

「スタンダード」の授業は、「インターネットを使うときに気を付けること、考えること~SNS編~」というテーマで実施いたしました。
使用した「GIGAワークブック」のワークは、
・上手なチャットの使い方を学ぼう / 情報活用(p82~p83)
・相手に伝えるときには / 情報モラル(p66~p67)
・チャットで議論するときには/ 情報モラル(p84~p85)
・変なコメントが書き込まれたら? / 情報モラル(p68~p70)
(カッコ内は「GIGAワークブック スタンダード」汎用版のページ数)
となっており、情報活用と情報モラルの2つの要素が入った構成です。
 
授業の前後で同じ質問をして、下図ではその差分を表の右端に記しています。
「チャット・SNS」と「対面」の違いや使い分けについて、「伝わり方の違い」の理解が授業後には29%上昇していました。また、「使い分ける方法の理解」も35%上昇と、変化が大きく出ております。総じて、SNSと対面コミュニケーションの活用理解の向上効果が出ていると考えられます。

次に「チャット・SNS」のトラブルに関して、「どのようなことでトラブルが起きやすいか」の理解は授業後に18%上昇、「嫌だと感じたときの対処方法」も22%の上昇が確認できました。

また、よくトラブルがあるという「グループチャット」に関して、「どのようなことでトラブルが起きやすいか」の理解が授業後に23%の上昇と、こちらも総じてSNSトラブルの対処方法の理解に効果が出ていると考えられます。

次に、児童の感想を一部ピックアップします。「授業の内容を端末活用に役立てたいと思った」を端末別に見ると、学校端末77%、私物端末83%と共に高い数値が出ています。また、「トラブル対応のヒントになった」が80%、「トラブルは自分にも起きるかもしれない」と考えている児童が81%、「気付きを保護者へ共有したい」が71%となっています。まとめると、私物端末への影響効果と自分事化への影響効果、家庭への共有ニーズといったところが効果として確認できました。

3.中学生・高校生向け「アドバンスド」の結果

端末の時間管理の意識やネットトラブルへの対処方法の理解が高まった

「アドバンスド」の授業は、「インターネットを使うときに気を付けること、考えること~セルフマネジメント編~」というテーマで実施いたしました。
使用したワークは、
・学習で上手に活用しよう / 情報活用(p91~p92)
・タイムマネジメント(時間管理)を身に付けよう / 情報モラル(p93~p94)
・使いすぎてしまうときは / 情報モラル(p95~p97)
・クライシスマネジメント(危機管理)を身に付けよう / 情報モラル(p32~p34)
(カッコ内は「GIGAワークブック アドバンスド」汎用版のページ数)
で、こちらも情報活用と情報モラルを学べる構成です。
 
まず、端末を活用した「効果的な学習方法」の理解は、授業後に16%上昇していました。また、「知る機会を増やしたい」という意識が18%、「共有機会を増やしたい」という意識も18%上昇しております。総じて、端末を活用した学習への意識が高まる結果となったと考えております。

次に、端末の利用時間に関して、「ある事を行なうのにどれくらい時間かかるのか」を考えてから取りかかるかという、「時間管理」の意識が授業後に19%上昇しております。また、端末の長時間使いすぎの「原因把握」の意識が10%の上昇、使いすぎの「改善」意識も10%上昇が見られました

長時間使いすぎへの「対処方法・解決方法」の理解も10%上昇しております。「ネットトラブルに対応できる」という認識について、こちらは「SNSで知らない人からメッセージがくる」、「お金を請求するサイトが出てきた」など、具体的なトラブル例をいくつか示して「それに対処できるか」という質問でしたが、授業後には23%の上昇が見られました。総じて、端末を活用した時間管理、使いすぎ、トラブル対処の理解の向上に結びついたと考えております。

アドバンスドの授業の感想では、「端末の効果的な学習のヒントになった」が、学校端末78%、私物端末82%、「トラブル対応・解決のヒントになった」も学校端末81%、私物端末85%と両端末共に高い数値が出ています。特に学校では使用しない私物端末での意識に効果が出ていることが確認できます。「気付きを保護者へ共有したい」も65%で、効果を認められます。まとめると、私物端末への影響効果と家庭への共有ニーズといったところへの効果が確認できました。

4.教員へのヒアリング結果

教材と指導方法は有効であることがわかり、楽しんでワークを行なう生徒の姿も確認

「授業をご覧になっていかがでしたか」ということを、授業実施校の教員にヒアリングしました。「スタンダード」の授業を行なった小学校教員では、
「SNS経験が少ない5年生でも、SNS利用前に重要な知識を得る機会がよかった」
「専門でない教員が情報モラルを伝えるのが難しい中、教材と指導方法が有効であることが確認できた」
「児童が楽しそうに授業を受けていた」
「自分事として捉えることのできるワークだった」
という意見がありました。「アドバンスド」の授業を行なった中学校教員では、
「タブレットを活用した授業形式が教員の中でも好評だった」
「ワークが生徒にとって楽しく、ゲーム感覚で盛り上がっていた」
と、こちらでも「楽しい」というキーワードが出ておりました。
そのほか、「意見交換が活発」、「答えが決まってないのが面白かった」などの意見がありました。
 
繰り返しになりますが、授業実施前後で各テーマの狙いとなる効果がしっかり出ていることが確認できております。私物端末への効果や、家庭への共有ニーズも確認できました。こちらは「GIGAワークブック」コンテンツの、家庭共有の有効性も示唆されていると考えています。
私の報告は以上となります。今後の「GIGAワークブック」の活用の参考になれば幸いです。 

※本調査について、詳細分析した調査報告書は後日公開予定です。
※本データは速報数値となっており、今後の詳細な分析により有効回答数や、回答データ、比率等は変動する可能性があります。


■ メディア等でのGIGAワークブック活用事例掲載のご紹介
(LINEみらい財団 事業推進部 西尾勇気)

1.省庁ウェブサイトでの掲載

文部科学省、消費者庁、総務省のウェブページにて授業の事例などを紹介

私どもLINEみらい財団でも、自治体様を通して学校現場での活用などをヒアリングさせていただき、ノウハウや事例を広く皆様にご共有できるような活動を進めており、すでに「GIGAワークブック」を導入している自治体様から、多くの声をいただいております。その声を、他のメディア様などでも取り上げていただいているものがありましたので、ご紹介いたします。
 
・文科省様が運営されております「情報モラル教育ポータルサイト」に「GIGAワークブック」の実際の授業での活用事例を2つ載せていただいております。

文部科学省 情報モラル教育ポータルサイト 実践授業例
 写真を勝手にとってよいのかな
 写真を撮る時に気を付けること

・消費者庁様が運営されております「消費者教育ポータルサイト」でも、「GIGAワークブック」を紹介していただいております。こちらは具体的な授業事例ではありませんが、教材の開発背景や今後の展望などについてのインタビューを掲載していただいております。

消費者庁 消費者教育ポータルサイト 取り組み事例
 情報モラルと情報活用をセットで学ぶ「GIGAワークブック」の開発について

・総務省様が運営されております「ICT活用リテラシー向上プロジェクト」で、「GIGAワークブック」をご紹介していただいております。

総務省 ICT活用リテラシー向上プロジェクト
 教材・講座(複数紹介されている中のひとつとして)

2.オウンドメディア等での情報掲載

LINEヤフー、Yahoo!きっず、ソフトバンクニュースで活動内容等の記事を掲載

・LINEヤフー社のオウンドメディアで、「LINEヤフーストーリー」というところに、「GIGAワークブック」の教材を使った授業を取材した記事が掲載されております。

LINEヤフーストーリー
 子どものネットリテラシー、どう育てる? LINEみらい財団と考える「楽しいコミュニケーション」

・LINEヤフー社(Yahoo!きっず)と、ソフトバンク社、そしてLINEみらい財団が連携して「デジタル活用能力育成プロジェクト」、通称「デジいく」という活動をしております。このプロジェクトの中でも「GIGAワークブック」を推進しております。

Yahoo!きっず
 「GIGAワークブック」特設サイト

この「デジいく」に関連して、ソフトバンクニュースにて、学校での授業実施の例を取材されたものを配信しております。

ソフトバンクニュース
 トラブルの対処法は? 正しい情報の見極め方は? 山梨県版「GIGAワークブック」で小学生が情報モラルを学習

 情報モラル教育を「デジいく」で支援。LINEみらい財団・ヤフー・ソフトバンクの共同プロジェクトが始動

・LINEみらい財団としても、今回のセミナーや過去に行なった勉強会、実施事例などをnoteの記事として、またYouTubeでアーカイブ動画を公開しております。

note LINEみらい財団公式アカウント
 https://note.com/line_mirai/
YoyTube LINEみらい財団公式アカウント
 https://www.youtube.com/@line4436

3.教員研修のご案内

すぐに実践できる、「GIGAワークブック」を使った模擬授業を含んだ教員研修

最後に、ご案内です。
学校の先生が、「GIGAワークブック」を使った授業をすぐに行なえるよう、60分から90分で模擬授業を含んだ教員研修を無償で実施しております。すでに導入済みの自治体様はもちろん、導入前の自治体様でも結構ですので、ぜひご利用ください。

GIGAワークブック教員研修のお申込みフォーム

また、研修動画と活用の手引きも用意しております。研修に参加できなかった先生や、受講していただいた先生が自分の学校に戻られてから現場の先生に向けて、研修と近しいものができるものになっています。

活用型情報モラル教材「GIGAワークブック」教員向け研修動画
研修動画活用の手引き

参考までに、教員研修に参加された先生へのアンケート結果から少しご紹介します。
「実際に体験してみて、子どもたちが自分たちで考える力を育むのに適してると感じた」
「15分で完了する教材は、日々の忙しい日常の中でも手軽に取り組めることが魅力」
「朝のモジュール時間にもぴったり」
などのご意見がありました。模擬授業を体験することによって実際にその活用のイメージを持たれており、現場での教材の活用につがるものと感じております。
 
GIGAワークブックは、この4月から2年目を迎え、多くの自治体様や学校様にご活用いただけることになりました。導入をご検討されてる自治体様も、まずは話を聞いてみたいということでも結構ですので、お気軽にお問い合わせください。
引き続き「これからのデジタル社会で生きる力を養うために」というキーワードを持って、時代に合わせた教材を現場の状況を把握しながらより良いものに変えていきたいと思っておりますので、引き続きご活用いただけたら幸いです。

●「GIGAワークブック」について詳細等は、こちらの特設サイトをご参照ください。
活用型情報モラル教材GIGAワークブックについて

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